第160号/2003.1 

年頭所感

委員会活動報告

地下情報化部会活動報告

海外調査報告

会員の皆様へのお知らせ


■年 頭 所 感■
  経済産業省地域経済産業G産業施設課長 中村 幸一郎 氏

  平成15年の新春を迎え、謹んでご挨拶を申し上げますとともに、一言所感を述べさせていただきます。
 皆様ご承知のとおり、我が国経済は不良債権処理の長期化による資金供給の目詰まり感から、新たな技術開発や設備投資等が停滞し、株価低迷や地価下落等と相まって、景気の悪循環に陥っており、これを如何にして断ち切るかということが最大かつ喫緊の課題となっております。
 こうした状況を踏まえ、我が国としては、厳しい財政制約の中、国民が豊かさを実感でき、活力と創造性に満ちた経済社会を構築するため、民間活力を最大限に引き出しつつ、デフレの克服、競争力の強化、環境・エネルギー問題への対応等に取り組んでいくことが必要不可欠であります。
 経済産業省地域経済産業グループといたしましては、活力のある地域社会の構築を図るとともに、世界に通用する企業、産業を創出するため産業クラスター計画を積極的に推進しております。これは、地域経済産業局や自治体などが船頭役となり、中堅・中小企業と大学や研究機関が集積を築き、情報交換と相互連携をもとに新たな産業振興の可能性を見出すネットワークを目指すものです。現在19のクラスターが形成され、約4000社の企業、190の大学がこれに加わっています。
 一方、今後の新たな利用が期待される「大深度地下」については、大都市圏の地下空間利用を可能とする「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」が平成13年4月に施行され、現在では、「大深度地下」について、原則、事前補償を行うことなく、使用権が設定できる仕組みが整備されました。また、関東・中部・近畿圏においても、大深度地下使用協議会が既に設立され、工業用水道・電力・ガス事業等の事業者のニーズを把握しながら、大深度地下の適正かつ合理的な利用ができる体制が確立されております。
 また、環境との調和の観点から、土壌を汚染した者もしくは、その土地を所有している者が浄化義務を負うことを規定した「土壌汚染対策法」が昨年5月に成立し、土壌汚染の状況把握や土壌汚染による人の健康被害の防止に関する調査等を行う体制の整備が進められてきております。
 このような状況の中にあって、地下開発、地下利用に関係する幅広い産業界関係者の皆様で構成されている地下開発利用研究センターにおいては、これまでに蓄積してきた研究成果(大深度地下空間開発技術、エネルギー合理化の研究開発、地下空間利用システム、エネルギー備蓄システム等)を最大限に活用し、豊かさと活力ある経済社会の構築を促進するため大いにその役割を果たすことが期待されております。
地下開発利用研究センターにおかれましては、今後とも会員の皆様の幅広い英知を結集し、積極的な研究活動、技術開発に取り組んでいただき、今後の地下利用のより一層の発展に寄与されることを祈念いたしまして年頭のご挨拶とさせていただきます。



■委員会活動報告■

□「中部国際空港機能アクセスの地下利用に関する基礎調査」委員会報告

 平成14年度第2回委員会が11月29日(金)(財)名古屋都市センター会議室にて
開催されました。本調査研究は日本自転車振興会の助成によるものです。
 わが国の航空需要は、旅客、貨物共に順調な伸びを示してきています。また、特に経済発展が目覚しいアジア、中東においては欧米諸国の伸びを上回っています。このような状況で「第七次空整(平成8年閣議決定)」空港整備事業に位置付けられた中部国際空港は2005年開港に向け準備が進んでいます。
 
 昨年度は主に下記の課題の調査研究を進めました。
■成田・羽田、関空、中部の3空港地域が一体となった日本の国際空港の役割
■中部国際空港と関連施設間の定時的連絡網の構築
■ 臨空エリアの都市、産業の活性化

 この結果、共通認識として「航空貨物」及び「流通」関連課題がクローズアップされました。
航空貨物の需要の確保は、単に荷物を運ぶインフラの整備ということではなく、中部国際空港における貨物戦略を意味し、荷主やフォワーダー、エアラインのそれぞれの見地に立った流通システムはどうあるべきかを見出すことが必要です。
一方、アクセスについては貨物需要の拡大が旅客便の確保から始まると考え、旅客需要の拡大を図って利便性の高いアクセスを検討する必要があります。

 平成14年度は上述の命題に関連した地下空間が受け持つことのできる範囲を抽出し、中部国際空港の有効な流通システムとアクセスの試案を検証することを目標に、下記項目の調査研究を進めています。 
T.中部国際空港の流通に関する基礎調査と動向予測
  @中部空港を利用する航空貨物の需要調査
 A中部圏の経済および流通の動向調査
 B流通施設と基盤整備状況の調査
 C中部圏における航空輸送需要動向予測
U.中部国際空港における流通と地下空間の効率的な利用の研究
 @流通ネットワークの試案
 Aアクセスネットワークの試案 

 (松尾 記)




■地下情報化部会活動報告■
 
地下情報化部会(吉村和彦部会長)では、地下利用事例の調査として、11月28日〜29日の二日間にわたり、東京電力鰍フ神流川発電所を取材しました。
 神流川発電所は、東京電力鰍フ9か所目の揚水発電所として現在建設中です。工事進捗率は、取材時点で発電所全体として75%であり、初号発電電動機(47万kW)の運転開始は平成17年7月を予定しています。
本建設計画は、長野県の南相木村を流れる信濃川水系南相木川の最上流部に上部調整池、群馬県の上野村を流れる利根川水系神流川の最上流部に下部調整池を建設し、この間の落差653mを利用し、最大出力282万kWの純揚水式発電所を建設するというものです。最大出力282万kWと言うと、群馬県の最大電力量がピーク時で約340万kWとのことですから、非常に規模が大きいのが分かると思います。
 取材調査は、28日に神流川水力建設所南相木工事事務所にて、計画の概要説明を受けた後、上部調整池〜水圧管路工場〜水圧管路上段を、29日に地下発電所〜水圧管路下段〜下部調整池の順に行いました。
 上部調整池は、中央土質遮水型フィルダムで総貯水量1,840万m3(有効貯水量1,300万m3)下流側ダム斜面の表面には現場で採取された石灰岩による化粧が施され、周辺環境との調和が図られています。水圧管路は、長さ約1,400m、勾配48度のトンネルで、その掘削には国内初の直径6.6mの全断面TBM(トンネルボーリングマシーン)を採用し、工期短縮につなげています。また、高水圧を受ける水圧管路下段には、これも国内初の超高張力鋼(HT―100)を採用し、コスト低減を図っています。
 地下発電所は、地表から約500mの位置に建設され、大容量の発電電動機を設置するため、幅33.0m、高さ52.1m、長さ215.9m、掘削量約21万m3の大空洞となっています。地下空洞は、秩父帯の砂岩、礫岩、混在岩の中に建設されていますが、建設中の湧水はほとんどなく、施工管理面で非常に助かったとの東京電力担当者の説明がありました。また、土かぶり約500mによる高地圧に対しては、空洞の安定を図るため、地下空洞周辺に設置した計測器(約1,400点)からの測定データを高速処理し、分析結果を次の設計・施工にフィードバックする情報化設計施工システムを導入し、安全で最適な掘削管理を行っています。
 取材調査の最後となった下部調整池は、総貯水量1,910万m3(有効貯水量1,300万m3)の重力式コンクリートダムです。堤体の施工は、セメントおよびフライアッシュの使用量が1m3に対して100kgと国内では最少となるRCD工法(ローラー・コンパクティッド・ダムコンクリート)により行われています。
 今回の取材では、工事の状況に加え、環境保全に対する取組みについても非常に参考となりました。
景観への配慮から、水路や発電所などの設備を地下式にするとともに、森林の伐採を必要最小限にとどめています。また、工事中の河川水への影響を抑えるために、工事区域の上流から流れてきた河川水は迂回路を通し、きれいなまま下流に流すなど、自然環境と調和した発電所の建設を目指し、種々の工夫を行っています。
 最後に、今回の取材調査に際して、ご協力いただきました東京電力叶_流川水力建設所の方々を始め、関係の方々にお礼申し上げます。  (橋本 記)




■「高効率熱電変換システムの開発」海外調査報告■
 
本年度から開始した高効率熱電変換システムの開発事業の一環として、熱電変換技術の開発動向を調査するために、平成14年12月1日〜8日にかけて米国の関係機関を訪問しました。
 今回の調査は、高効率熱電変換システム実用化推進委員会(柏木孝夫委員長)のミッションであり、本事業のプロジェクトリーダーである梶川武信調査団長以下、委員会委員、事業参加企業及び事務局(GEC)から総勢10名のチームで、関係機関と意見交換を行い、情報を収集しました。

☆西海岸地区
 12月2日にサンディエゴ近郊のHi-Z社(Hi-Z Technology, Inc.)を訪問しました。Hi-Z社は、熱電モジュールを製造・市販している代表的な企業のひとつです。当日は、同社の社長を初めとする幹部社員から同社の技術開発動向の説明を受け、研究施設を見学しました。
 翌3日はロサンゼルス近郊のJPL(Jet Propulsion Laboratory)を訪問しました。ここはNASA関連の国立研究所であり、総勢約6000人の大研究所です。以前は米国における宇宙開発で中心的な役割を担っていましたが、現在は宇宙船の開発を担当しています。宇宙船の駆動用電源として特に太陽から離れた惑星探索衛星等では、原子炉等からの発熱を用いて熱電発電を行っており、熱電技術では古くから優れた研究がなされています。ここでは最近の熱電材料開発、システム開発についての意見交換、関連設備の見学を行いました。

☆ミシガン地区
 12月5日にミシガン地区におけるTE社(TE Technology, Inc.)及びミシガン大学(The University of Michigan)に分担して訪問しました。
TE社は、ミシガン湖畔のトラバース市にあり、古くから熱電冷却システムを開発、市販しています。今回の訪問では有意義な意見交換を行うことができました。
ミシガン大学は、デトロイト近郊のアン・アーバーにある学生数3万人を擁する総合私立大学です。ここでは物理学科のCtirad Uher教授を訪ね、熱電材料、熱電物性の研究動向を聴取し、意見交換を行いました。

☆ボストン地区
 12月6日にボストン地区でMIT(Massachusetts Institute of Technology)
を訪問しました。ここでは午前に、ナノスケールでの研究を進めておられるGang Chen準教授、午後は微小熱伝変換素子の研究で著名なDresselhaus教授を訪問し、熱電材料の研究動向について聴取、意見交換を行いました。また、12月5日には、米国材料学会の熱電セッションに一部の団員が参加し、熱電関連の研究報告を聴取しました。

☆ 雑感
 今回は、1週間で6箇所の機関を訪問するというタイトスケジュールでしたが、米国の先端技術開発に直接触れることができ、研究開発及び実用化の方向とその状況を具体的に知ることができました。また、研究開発競争及び先端技術に関する機密保持の徹底ぶりに改めて感を深くしたところです。今回の調査の成果は今後の研究開発に有効に生かして行くべく、気持ちを新たにしています。
 (渡辺 記)




■会員の皆様へのお知らせ■

○第251回サロン・ド・エナ開催のご案内
日 時 :平成15年1月22日(水)17:30〜(於:当協会6階CDE会議室)
講 師 :鮫島 正洋 氏(松尾綜合法律事務所 弁護士・弁理士)
テーマ :「知的財産権に関する経営戦略と職務発明制度の新たな展開」 
           ―欧米企業に打ち勝つために―

講演要旨:特許などの知的財産権を経営にどのように反映させていくか、という点が各企業の共通の課題となっている。ここでは、日本企業における問題点を抽出した上で、知的財産権に関して企業経営の中で重要な位置を占める特許戦略論やマネジメント論を展開する。
さらに、現在話題となっている職務発明訴訟について、知的財産権の経営における体系上の位置づけを明らかにしつつ、その問題点と今後の職務発明制度のあり方について提言を行う。 
         (講演終了後懇親立食パーティ)

会 費:3000円(非会員5000円)(当日受付にて申し受けます)
申込要領:FAXで事務局へお申し込み下さい。申込多数の場合は先着順で締め切らせていただきます。
       地下開発利用研究センター 事務局 中村 (TEL:03-3502-3671/FAX:03-3502-3265) 

○「危険物事故防止対策論文」の締め切りが迫ってます!

 昨年11月号でお知らせしました危険物保安技術協会による「危険物事故防止対策論文」の募集締切が平成15年1月31日と迫ってきました。なお詳細につきましては、(http//www.khk-syoubou.or.jp/)の「第2回危険物事故防止対策論文募集」をご覧ください。




舌句雑感:"ソウルで感じたこと"12月の初めにソウルに行ってきました。韓国を訪れるのは初めてのことで、そこで見たこと、感じたことを列記します。■ソウルはソウルに満ち溢れた町だ。慶福宮などの宮殿は中国的で、荒々しいが儒教的なにおいを強く感じた。例えれば、韓国のは縄文式、日本のは弥生式といえる。■ソウルの地下鉄のエスカレーターは大阪と同じ右側が立ち停まる方式。どういうわけか理由を誰かご存知ですか。■地下鉄の駅ごとに番号がついているのは非常に便利で分りやすい。■トイレで手を洗わない人が多い。冬で寒いためか?先に手を洗う方が理にかなっているという人もいるが。■地下街にホームレスの人がたむろしている。札幌では、ほとんど見ないが、ソウルの地下街は意外に暖かいからか。ロッテデパートの前の広場に昼間からたむろしているのにはびっくりした。■シとツ、ソとンの区別がついていない日本語の看板が多い。日本でも時々見かけるが。"石焼ビビンバ"が"石焼ビビソバ"になっている。韓国そば?                     (GECニュース編集者)