安全・安心・減災等の確立に資するエンジニアリングの調査研究補助事業
老朽化トンネル補強技術の研究

1. 研究期間

平成25年4月〜平成26年3月

2. 委員長

辻 幸和 氏 公立大学法人 前橋工科大学学長

3. 参加機関

前橋工科大学、東京大学、(株)建設技術研究所、大成建設(株)

4. 補助事業の概要

(1)事業の目的
 都市部の地下に建設されている地下鉄、共同溝トンネルといったトンネルでは、都市再開発等による外荷重変化や偏荷重の発生に伴う覆工コンクリートの変状といった事例が発生しており、都市の再生技術として老朽化したトンネルの耐力を増加させる補強技術の必要性が高まっている。また、東日本大震災を教訓として耐震補強のさらなる高性能化も必要とされている。
 研究対象とする補強方法は、補強が必要な既設円形トンネルの内側に補強リングを組立て、補強リングと既設トンネルの間にセメントミルク充填用のゴムチューブを貼付け、補強リングを反力装置としてセメントミルク充填による圧力を加えて、既設トンネルを内側から外側へ押す力を与えることを原理とする。
 本研究では、この補強技術の成立性を確認することを主眼に、材料選定室内実験によってセメントミルク硬化後の圧力残存状況を確認するとともに、既設トンネル、補強リングや充填材加圧力などをモデル化した構造解析によって既設トンネルに悪影響を与えない加圧力ならびに補強完了後の追加外荷重作用時の補強リングの荷重分担状況を検討するものである。

補強方法概念図

補強方法概念図

補強工事の施工イメージ

補強工事の施工イメージ

(2)実施内容

1)材料選定検討

 セメントミルクの材料である高流動充填固化材、膨張性材料ならびに間詰め材に要求される性能を設定して材料の絞り込みを行ない、配合試験を実施した。

2)充填材加圧注入実験

 シールドセグメント、ゴムチューブ、補強リングを模した実験装置に、材料選定検討で選定したセメントミルクを加圧注入し、実験装置に発生する反力・変位・ひずみを計測し、膨張性材料および高流動充填固化材の性能を確認した。

3)三次元FEM解析

 地表からの深さ約20mで直径5.4mのシールドトンネルの三次元FEM解析を実施し、補強効果があること、および補強後に上載荷重が増加した場合の検討を実施し、本工法の効果を確認した。

充填材加圧注入実験状況

充填材加圧注入実験状況

三次元FEM解析モデルの一例

三次元FEM解析モデルの一例

三次元FEM解析結果の例

三次元FEM解析結果の例

5. 予想される事業実施効果

 本調査研究の補強方法の対象とするトンネルの大きさは直径2m程度の下水道トンネルから、直径10m程度の道路トンネルまで幅広く対応可能であり、補強リングの最適設計や補強に使用する機械設備などのコンパクト化と施工の迅速化によって、経済的に老朽化したトンネルを再生することができることから、市場規模の拡大に併せてインフラ施設再生事業として発展性が期待できる。


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