1．研究開発の概要

　本研究開発は、火力発電分野でも二酸化炭素の削減が強く求められていることを受けて、二酸化炭素を分離・回収・貯留するCCSを含めたゼロエミッション型の石炭ガス化発電技術の実施可能性を検討するために発電から二酸化炭素貯留までのトータルシステムに関するフィージビリティ･スタディ（FS）を実施するものであり、全体として以下の5つの事業項目から成っています。

(1) 石炭ガス化発電と二酸化炭素分離･回収システムの概念設計
(2) 二酸化炭素輸送システムの概念設計
(3) 二酸化炭素貯留システムの概念設計と貯留ポテンシャル評価
(4) 全体システム評価（発電から二酸化炭素貯留に至るトータルシステムの評価）
(5) 特定サイトでの石炭ガス化発電から二酸化炭素貯留に至るトータルシステムの概念設計

平成20年度に当センターは財団本部の海洋開発室と共同で、上記のうち (2) 二酸化炭素輸送システムの概念設計を受託しました。二酸化炭素輸送システムには、液化二酸化炭素の船舶輸送、二酸化炭素ハイドレート輸送およびパイプライン輸送があるが、パイプライン輸送を当センターが担当し、その他事業を海洋開発室を中心とする企業グループが担当しています。

2．平成20年度の研究内容

　当センターでは、国内で前例のない長距離二酸化炭素パイプラインへの適用法規の調査結果をレビューしたうえで、分離･回収システムおよび貯留システムの検討グループから与えられた検討条件に基づき、陸上および海底パイプライン概念設計を行っています。
　対象とするパイプラインは、火力発電所（A地点）に設置される二酸化炭素の分離･回収設備から供給される二酸化炭素を海底下の貯留層（B地点）まで輸送するものです。輸送中に二酸化炭素の相変化が起きることを避けるために、以下の2ケースの圧力範囲での輸送を検討しました。
　ケース1では、輸送中の最低温度でも二酸化炭素が液化しないようにパイプラインの入口圧力を3.6MPaとしました。ケース2では、海底坑口で10.5MPaを維持することを条件とし、この条件に基づきパイプラインのサイズ･仕様を検討しました。
　以上の検討に基づき概算コストを算定しました。

ケース1　低圧（気体）輸送のシステム構成

ケース2　高圧（液体）輸送のシステム構成