極低温ポリウレタンフォーム断熱材の熱伝導率の測定
石川島播磨技研、NEDO* 山口方士、曽重仁*、B大森隆夫、中島雅祐
緒 言
クリーンエネルギとして水素の利用が期待されている今日、液体水素を水素の
大量輸送・貯蔵媒体として利用するための高効率かつ経済的な極低温断熱材が必要にな
っている。
本研究では液体水素用断熱材候補のひとつとしてポリウレタンフォーム(PUF)の熱伝
導率を常温から液体水素温度20Kまで測定したので報告する。 PUFの熱伝導率について
は従来Sparks*1らによって得られていたが、そのほとんどはLNG温度以上の範囲であり
、20K〜95Kの範囲のものはほとんど無かった。
熱伝導率測定装置*2
測定法にはJIS A1412に準拠した定常円筒法を採用した。図1に
測定部と気密チャンバを示す。測定部全体は真空タンクの中にありGM冷凍機で常温から
20Kまで冷却することができる。PUFサンプルは密度32kg/m3であり、長さ400mm、内径30
mm、外径70mmの円筒形である。その外面をGM冷凍機に接続した銅製円筒で冷却し、内面
はニクロム箔ヒータで加熱し両面温度差約10度に設定して熱伝導率keffを測定する。温
度測定にはLake Shore Cryotronics社のCelnoxセンサ(測温抵抗体)を採用し、円筒内
外面に各4点設置した。 また円筒軸方向への熱流束に対する補正を数値解析により実
施した。
測定結果 図2に熱伝導率測定結果を示す。
1) ▽印は測定開始時に気密チャンバを常温大気で封じ切った場合である。keffはPUF中
の発泡ガスの凝縮効果により山部を持つことが知られている。今回のデータは
Sparksのデータ(●印)と発泡ガスの違い(R141b v.s. R11)から常温近傍で一致しない
ものの、この傾向を良く示している。
2) △印は気密チャンバのフランジを通気孔(φ12mm×16ヶ)を有するものに変え、3週
間真空引きした後、測定したものである。真空タンクの真空度は10-4Torrであった。
keffは大気封じ切り条件のものよりはるかに低く、温度50〜220Kで約35%、220K以上
ではPUFの気泡中に少量の発泡ガスが残っている影響から40〜60%である。
*1 L. Sparks: P.B.Rep. PB85-10094 (1984)
*2 M.Yamaguchi et al , Cryogenic Engineering Conference, Columbus, OH, July 18, 1995
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