理事長年頭挨拶(2016年1月)

 皆様、明けましておめでとうございます。
2016年の年頭にあたりまして、謹んでご挨拶を申し上げます。

まず、昨年を少し振り返り、明るい話題を探してみますと、ラグビーワールドカップでの日本代表の歴史的な勝利、あるいはお二人の日本人がノーベル物理学賞と医学・生理学賞をそれぞれ受賞するなど、日本人が国際社会で堂々と活躍し成果を上げたことが印象に残ります。
一方、政治・経済・治安情勢については、中東でのISILの問題やそれに起因した難民の問題、また世界各地で頻発するテロなど不安定さが続きました。欧米、ロシア、中国の覇権争いともいえる各種駆け引き、中国の景気減速と世界経済への波及、石油価格の更なる低下による資源国経済の悪化など混沌とした状況が依然として続いております。

さて、2016年はどのような年になるのでしょうか?
IMFやその他の機関の予測によれば、アセアン諸国、インド、アフリカなどで大きな経済成長が予測されております。また、中国もNEW NORMALという時代に入り成長率は減速しますが、6%台の成長が見込まれる大きな市場であり続けるでしょう。このような新興国の経済成長を取り込んでいくことが日本あるいは日本企業がこれから向かうべき道筋ではないかと考えます。
そのためには、昨年末に大筋合意されたTPPを成長の機会ととらえ積極的に活用するほか、昨年発足したアセアン経済共同体との連携、またさらなる広域連携を目指すRCEPやFTAAPのような経済連携協定の中で日本が中心的役割を果たして先導していく必要があるのではないでしょうか。

昨年、政府の打ち出した「質の高いインフラ輸出」を後押しする数々の支援策は、我々エンジニアリング産業に携わる者にとって非常に心強いものであり、官民の連携による質の高いインフラ輸出を通じて新興国の発展に寄与しながら日本も成長するようなWIN-WINの関係を目指すべきだと思います。特に今年の後半には、初のアフリカ開催となるナイロビでのTICAD6が予定されております。これを契機として、空港、港湾、鉄道などの社会インフラの整備や、農業、食品加工などの基礎産業、また電力、医療などの関連分野でアフリカ諸国でのビジネスを拡大する大きなチャンスとなりそうです。

原油価格については、米国の原油輸出解禁やイランの原油市場への本格的回帰によって、安値安定の傾向はしばらく続くと考えるのが自然です。そうなると産油・産ガス国の財政不安や新規投資意欲の減退といったマイナスの影響がエンジニアリング業界の一部に及びます。従って、先ほど述べたような成長の見込める国々でのインフラ事業を取り込むような戦略がますます重要になってきます。

また、昨年、機会がある度に触れてきましたが、COP21で、CO2排出大国である中国とアメリカを含む196の地域の合意のもとでパリ協定が採択されました。地球市民として、もはや後戻りできないところまで環境が破壊されている点への認識が一致したことは評価に値します。環境対策に関しては日本には技術やシステムの大きな蓄積があります。ぜひとも環境問題への取り組みを通じたビジネスで世界に貢献したいと思います。
まとめますと、エンジニアリング業界にとって今年のキーワードは「環境」と「アフリカ」ということになるのではないでしょうか。

昨年7月に高橋前理事長の後を受けて、私が理事長に就任した際「エンジニアリングの認知度の向上」を活動目標の一つに掲げました。認知度向上部会を立ち上げ、そこで活発な議論を進めていただいているとのことですので、近い将来、具体的な形として実を結ぶことを期待しております。一方で、従来から行われてきた協会の活動の際にも「社会に認知されるための工夫をしてみたらどうか」といった発想の下、少しずつ改善するような相乗効果も出てきております。
皆様におかれましても、エンジニアリング産業の社会的プレゼンスを向上させ、人材のすそ野を広げるという意識を頭の片隅においていただき、可能な範囲で日々の活動の中に取り込んでいただければ幸いです。

また、昨年のエンジニアリングシンポジウムは、参加者が史上初めて1000名を超え、大盛況のうちに終了いたしました。 受託事業に関しても、東北復興の要となる中間貯蔵施設における減容化設備調査事業を、環境省関係の中間貯蔵・環境安全事業株式会社様から受託いたしました。

当協会は、昨年に引き続き、エンジニアリング産業の社会的プレゼンス向上につながる情報発信、人材育成、調査研究等の諸活動を進め、少しずつではありますが新しいことにもチャレンジして行く所存でおります。
皆様方におかれましては、協会活動に対してますますのご支援・ご指導を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

2016年1月
一般財団法人エンジニアリング協会理事長

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