理事長年頭挨拶(2017年1月)

 皆様、あけましておめでとうございます。皆様方におかれましては、良き年をお迎えのこととお喜び申し上げます。2017年の年頭に当たり、謹んでご挨拶申し上げます。

昨年、このような御挨拶をする折りに必ず申し上げたキーワードが2つあり、それは、「激動」と「混迷」という言葉です。私なりに昨年を振り返り、「激動」と言える出来事を3つ取り上げてみました。

まず、イギリスの国民投票によりEU離脱が決定した事。 2つ目は、アメリカ大統領選でのドナルド トランプ氏の勝利。 そして3つ目は、年末にOPECと主要非加盟国間での原油の減産合意が決定したこと、を挙げておきます。 これらは、今後の世界の動きを「混迷」させる大きな影響力を持つもの と考えております。

その他にも国内外でいろいろな出来事がありました。 例をあげれば、日銀のマイナス金利導入、台湾企業による日本企業の大型買収、熊本で震度7の大地震発生、バングラデシュでのテロ事件、博多駅前の陥没事故、11年ぶりとなるロシア プーチン大統領の訪日 等です。

明るい話題として、夏のリオデジャネイロ オリンピック・パラリンピックでの日本選手の大活躍は記憶に新しいところです。 もう一つは、大隅良典氏(東京工業大学 栄誉教授)が、ノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、3年連続での日本人の受賞、かつ医学・生理学賞の単独受賞という点が特筆されます。

我々エンジニアリング産業にとって、本年はどのような年になるのでしょうか 。

原油価格の上昇は我が国経済にとり、メリットとデメリットの両面があることは言うまでもありませんが、減産合意決定以降、油価は上昇基調に転じており50ドル台で推移しております。  今後も油価の動きには注視して行く必要があります。

また、アメリカの政策の動向にも目が離せない年になりそうです。各種シンクタンクや有識者の分析を参考にすれば、減税やインフラ投資促進、規制緩和などの政策は短期的にはマクロ経済にはプラスとみられ、一方、NAFTA再交渉やTPP離脱などの保護貿易主義、移民コントロール強化などはマクロ経済に悪影響を及ぼすといわれています。

更に、アメリカの政策に対するロシア、中国、中東諸国の対応ぶりにも要注意であり、安全保障の問題やエネルギー分野では、いろいろな変化が起こりそうです。

世界経済全般に関してIMFは、イギリスのEU離脱の影響を評価して、2017年の世界全体のGDP成長率予測を昨年半ばに0.2%引き下げ、3.4%としました。しかしながら、2016年比では0.3%の伸びとの想定であり、英国とEU間の離脱交渉の影響は有り得ますが 、世界全体の成長基調は続くものと考えられます。

これまで述べましたような世界の動きを考えつつ、当業界の多くの企業が関与するインフラ輸出、あるいは海外展開について考えてみたいと思います。勿論 世界経済は反グローバル主義の台頭により低迷するというシナリオもあります。しかし私は、期待も込めて、主要なビジネスマーケットであるアジア、中東、アフリカ、ロシア・CIS諸国の中で、特に産油国においては、油価の上昇を追い風とした新たなエネルギー関連投資の機運が高まり、ビジネスチャンスが増加すると思います。

また、資源を持たない国々においても、成長に伴う社会インフラの整備は必須であり、ODA等を活用した官民一体での案件の創出の機会が増加していくものと考えます。

「混迷の時代にこそビジネスチャンスがある」と、ポジティブに考えていきたいと思います。

昨年の協会活動に関してお話し致しますと、 石油開発環境安全センターが設立25周年を迎えました。本センターは設置の目的である「石油の探鉱・開発・生産」と「安全確保・環境保護」を両立させるための技術開発やシステム開発を推進してきました。 近年では地球温暖化対策、地球環境保護に対応する技術の開発にも注力した活動をしております。

人材育成に関しても、将来のエンジニアリング業界の中核を担う若手を育成することを目的に、「次世代人材育成プログラム」を昨年新たに開始しました。

学生向けの活動としては、就職活動前の若い学生を対象としたキャリア支援セミナーを、従来の地方開催に加えて、本年は東京でも開催し、100名以上の学生にエンジニアリング産業の魅力を紹介いたしました。 また、「認知度向上部会」で製作した3本のエンジニアリング産業紹介のイメージ動画をSNS等で配信し、エンジニアリングのすそ野を学生や社会に広げる活動にも少しずつ取り組んでまいりました。

受託事業に関しては、昨年初めて文部科学省から共同研究の委託をいただいたことが特筆されますが、引き続き経済産業省、国土交通省、環境省より、新規あるいは継続の受託事業をいただいて、国の政策策定の基礎資料となる各種事業において、成果を出すべく活動してまいりました。

このように皆様と一緒に行ってきた 活動を 評価いただいたものと思いますが、昨年は21社の新たな企業に当協会に加入いただきました。 会員数は6年連続の増加、2011年比で70%増の228社となり、成長を続けていることは喜ばしいニュースです。

今後とも、会員サービス向上、受託事業を通じた政策実現への協力、人材育成、認知度向上を柱として活発に活動して行く所存でございますので、皆様方におかれましては、ますますのご支援・ご指導を賜りますようよろしくお願いいたします。

2017年1月
一般財団法人エンジニアリング協会理事長

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