第112号/1999.1
■年頭所感
■微振動対策を必要とする施設の地下空間利用調査研究分科会発足
■地域プロジェクト育成専門部会紹介
■平成10年度日帰り見学会のお知らせ
■廃棄物地下保管分科会活動状況報告
■第209 回サロン・ド・エナ開催のお知らせ
■年頭所感■
通商産業省 環境立地局 産業施設課長 谷 重男氏
平成11年の新春を迎えるに当たり、謹んでご挨拶を申し上げますとともに、一言所感を述べさせていただきます。
近年の公共事業を巡る動きを見てみますと、国・地方の財政状況の悪化を背景に、一昨年は公共工事コスト縮減が叫ばれるとともに、財革法が制定され、公共事業費の上限が設定されるなど、国の政策が行政コスト縮減の方向に動いておりました。一転して、昨年は長引く景気停滞を背景に、年末に、緊急経済対策の策定、第3次補正予算の成立、財革法停止法の制定に見られるように公共事業費の投入による積極財政政策が実施されるなど、国の政策が大きく揺れ動いている感があります。このような、公共事業を巡る動きの中で、経済活力の回復、産業競争力の強化といった緊急の課題の解決にあたっては、行政の効率性を追求し、必要な事業に必要な資金を投入することにより、柔軟かつ効率的な施策を推進することが肝要であると考えております。
以上を踏まえ、特に、良質な社会資本の効率的な整備を行うことは、経済活力の活性化、また、豊かさとゆとりを実感できる社会の実現にとって、きわめて重要であると考えております。取り立てて大都市地域においては、土地利用が煩雑化し、社会資本整備の推進は容易ではありません。このため、利用されていない大深度地下空間を生活に不可欠な社会資本整備のために効率的に利用できれば、大都市での生活がよりよいものとなること
が期待されます。しかしながら、大深度地下利用に当たっては土地所有権、補償の必要性等の有無について解決しなければならない重要な問題が多く残されています。政府内部においても、土地利用に係わる社会情勢の変化に鑑み、内閣総理大臣の諮問機関である「臨時大深度地下利用調査会」において、大深度地下利用の基本理念、公共的利用の円滑化のための施策等について調査審議を行い、昨年5月27日に答申が出されました。
また、大深度地下を社会資本整備の利用に関する諸問題において、技術・安全・環境面の課題等に、速やかに適正な制度が構築されるよう内閣内政審議室主催の下、大深度地下利用関係省庁連絡会議が同年6月 17 日に設置され、検討を重ねているところであります。当省も当該連絡会議の一員として、適正な制度の構築に向けて積極的に関与していく所存です。これからの種々の具体的な検討に際しては、地下空間利用に中心的な役割を果たしてこられました地下開発利用研究センターがこれまでに蓄積してきた研究成果(大深度地下空間開発技術:高精度地下構造評価、地下空間構築、地下環境・防災等の技術確立)が大いに役立つものと期待しているところであります。
地下空間の利用促進は、空間スペースが限られた我が国、とりわけ大都市において新たな経済・社会活動の場を拡げるうえで、また豊かさと活力のある経済社会の構築のために貢献するうえで大変有望な分野であり、21世紀に向けてのフロンティアと位置づけられるものと言えます。今後とも地下開発利用研究センターの事業にできる限りの支援を行っていく所存であります。
地下開発利用研究センターにおかれましては、今後とも会員の皆様の幅広い英知を集結できる特性を活かして、積極的な研究活動等に取り組んでいただき、今後の地下利用のより一層の発展に寄与されることを祈念いたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。
■微振動対策を必要とする施設の地下空間利用調査研究分科会発足■
本年度の社会開発プロジェクト等の計画策定および推進事業の一つとして、標記分科会が11月に発足しましたので、その概要を以下にご紹介いたします。
1.背景・目的
日進月歩の科学・技術分野において、機械的精度が要求されるようになると、必ずといって良いほど、その装置の対環境特性が問題となる。すなわち、環境温度の微小変化に起因する装置の特性変化、形状変化、歪みの発生等といった問題に加え、長期安定動作が要求される装置にあっては、更に装置外からの微小振動や地盤の微動に起因する機器アライメントの時空間的変動が問題となってくる。しかしながら、このような問題が深刻であるにも拘わらず、各分野で個別に対策が講じられているのが現状であり、恒温環境室を造り、受動的制振対策を施し、能動的防振架台を造るといった対処療法的対策が取られ、そこに費やされる時間および費用は膨大なものとなっている。そこで、本調査研究では、微振動対策を必要とする研究・開発・生産分野の振動問題解決策として、対環境特性に優れる地下空間の利用可能性について調査することを目的とする。
2.調査研究の内容
研究対象は、超微細精密加工技術、大型機器の超精密アライメント機器開発の応用分野および物性物理、加速器科学等の基礎科学分野であり、温度、振動等の対環境特性対策について調査する。また、対環境特性に優れる岩手県釜石鉱山の坑内をモデルフィールドとして環境特性に関する基礎データを収集整理する。これらの調査研究により対環境対策としての地下施設に関する基本構想、基本計画を策定する。具体的には、以下のとおりである。
(1)超微細精密加工技術の精度と対環境特性の調査
(2)大型機器の超精密アライメント機器の開発と対環境特性の調査
(3)基礎科学分野の対環境特性の調査
(4)地上構造物における対環境特性の調査
(5)釜石鉱山坑内の環境特性の調査
(6)対環境特性対策としての地下施設の基本構想
(7)地下研究施設の基本計画策定
3.実施体制(敬称略)
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委員長
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小島 圭二
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地圏空間研究所 代表 東京大学名誉教授
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委 員
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竹田 繁
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高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設 教授
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〃
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坪川 恒也
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文部省 国立天文台水沢観測センター 助教授
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〃
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大苗 敦
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通商産業省 工業技術院計量研究所 量子部量子計測研究室 主任研究官
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〃
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中島 英史
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通商産業省 資源エネルギー庁 鉱業課 課長補佐
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〃
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佐々木孝一
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通商産業省 東北通商産業局 産業部地域振興課 課長
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〃
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勝部 修
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岩手県 企画振興部情報科学課 課長補佐
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〃
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小野崎 敏
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釜石鉱山 代表取締役社長
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〃
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吉岡 保彦
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樺|中工務店 原子力・エネルギーエンジニアリング本部 本部長
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〃
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村井 信義
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樺|中工務店 技術研究所 主席研究員
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〃
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長 久
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日鉄鉱業 資源開発部長
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〃
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宮川 彰彦
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(財)エンジニアリング振興協会 地下開発利用研究センター 研究理事
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オブザーバー
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小澤 典明
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商産業省 機械情報産業局 産業機械課 課長補佐
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〃
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小林 秋穂
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通商産業省 環境立地局 産業施設課 課長補佐
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事務局
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山崎 武久
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樺|中工務店 原子力・エネルギーエンジニアリング本部 技術担当部長
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〃
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米田吉宏
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鉄鉱業 資源開発部 技術開発課長
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〃
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山路俊文
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(財)エンジニアリング振興協会 地下開発利用研究センター 主任研究員
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■地域プロジェクト育成専門部会(地下利用推進第三部会)紹介■
平成10年度からの地下利用推進部会の一つである地域プロジェクト育成専門部会(第三部会)について、その概要と部会メンバーをご紹介いたします。
当部会は、来る21世紀に向けて、現状の産業構造の殻を打ち破る新規産業の創出を図るため、既存の概念を捨て、地下空間の防音性、防振性、耐震性、隔離性、恒温性、電波遮蔽性などを活用する新しい産業の可能性、ならびに産業の融合化や複合化等の検討を行うとともに、昨年度までのプロジェクト研究部会の成果を活用して、さらに地域に密着した新プロジェクトの発掘、提案等を行うことを目的としています。
これまでに開催された部会において、部会名称を正式に決定するとともに部会活動方針の検討を行い、初年度はWGにとらわれずに新しい地下空間利用のあり方、実現可能性、提案方法などについて自由討議を主体とした活動を、次年度は初年度の成果あるいは方針を踏まえて、地下空間の特性を活かした新しい産業の可能性ならびに地域に密着したプロジェクト提案等の調査研究を行うこととなりました。さらに、今後の進め方として、アンケート調査に基づく意見集約の結果、キーワードを「多目的地下空間」、「防災」、「都市郊外」の三つとして、地域プロジェクト部門と新産業育成部門をそのキーワードによるテーマで一体化し、両部門を包括した形とする方向で活動を進めることとなりました。
地域プロジェクト育成専門部会メンバー(敬称略)
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部会長
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山本 松生
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佐藤工業 土木本部 技術部門 地下空間グループ 部長
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副部会長
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山本 光起
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樺|中工務店 ニューフロンティアエンジニアリング本部 技術課長
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委 員
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田中 晃
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応用地質 エネルギー事業部長
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〃
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森 嘉仁
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椛蝟{組 技術本部 技術研究所 技術一課 課長
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〃
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稲田 栄作
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梶谷エンジニア 営業本部 企画営業部長
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〃
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角田 素男
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褐F谷組 エンジニアリング本部 Re-エンジグループ 課長
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〃
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山崎多賀一
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鉄建建設 エンジニアリング本部 技術企画部 知的財産情報グループリーダー
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〃
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福田 雅文
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鞄月ナ 火力プラント技術部 先進システム開発チーム 担当課長
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〃
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小林 薫
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飛島建設 技術研究所 情報化施工研究室 担当課長
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〃
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北川 隆
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西松建設 土木設計部 副部長
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〃
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岩下 文彦
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日本鋼管工事 土木機械部 部長
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〃
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生木 泰秀
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日本国土開発 土木本部 土木部 設計課長
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〃
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五十嵐義則
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能美防災 エンジニアリング営業本部 参事
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〃
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宮島 清
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ホーチキ 営業本部 渉外室 部長
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〃
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藤井 伸一郎
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三井金属鉱業 資源開発部 部長補佐
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事務局
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山路 俊文
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(財)エンジニアリング振興協会 地下開発利用研究センター 主任研究員
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■平成10年度日帰り見学会のお知らせ■
当センター恒例の日帰り見学会を企画いたしました。今回は、下記の地下関連施設を見学させていただく予定です。詳細につきましては、近々、各連絡担当者までお知らせいたしますので、この機会に是非ご参加くださいますようご案内申しあげます(先着順25名程度)。
| 見学先 : |
@東京ガス叶島工場(20万klLNG地下式貯槽2号および3号施工中) |
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A麻布十番公共駐車場建設現場(地下鉄駅隣接の機械式システム地下駐施工中) |
■廃棄物地下保管・再資源化分科会活動状況報告■
本分科会は、「社会開発システム策定事業」の一つとして、本年度より2ケ年の計画でスタートいたしました。近年、国内の廃棄物を取り巻く環境が非常に厳しいため、本分科会では廃棄物の地下空間における保管システムおよび再資源化システムを構築し、その有効性を実証することを目的としています。
1年目である本年度の第1回分科会は、通産省環境立地局 産業施設課の小林課長補佐殿にもご出席いただき、9月に開催されました。当日は、委員長である福岡大学花嶋教授を中心に、活発な意見交換がなされました。その結果、本年度は、地下に廃棄物を保管し将来再資源化を図る場合の課題を明らかにし、地下保管システムの概念を構築するという観点より、次の項目について調査研究を行うこととなりました。
(1)廃棄物の現況調査
(2)廃棄物地下保管システムの調査研究
(3)法規制の調査研究
(4)廃棄物の再資源化に関する調査研究
これを受け、それぞれの項目について作業部会員によるワーキング・グループが編成され、9月から毎月1回、作業部会が開催されています。
第2回分科会は、日本亜鉛鉱業鞄aのご好意により12 月1日〜2日、福井県大野郡にある中竜鉱山において開催されました。この中竜鉱山では、休山した昭和 61年以来、福井市・大野市で発生した一般廃棄物の焼却灰の坑内処分(充填)が実施されています。分科会の研修として見学させていただき、廃棄物処理の一例として知見を深めることができました。紙面を借りて、関係先に御礼申しあげます。
■第209回サロン・ド・エナ開催のお知らせ■
下記の要領にて、第209回サロン・ド・エナを開催いたします。今回は、地下センターの企画により、多摩大学教授の望月 照彦氏をお迎えして「21世紀都市の活性化戦略」と題し、都市における地上空間と地下空間の使い分けなど、その課題と展望についてお話いただきます。現在、聴講の申込みを受付けておりますので、是非多数のご参加をお願い申しあげます。
| 日 時 : |
平成11年1月20日(水)17:30〜 |
| 場 所 : |
当協会 6階CDE会議室 |
| 講 師 : |
多摩大学 経営情報学部 教授 望月 照彦氏 (川崎競輪場整備方針検討委員会 委員長) |
| テ-マ : |
「21世紀都市の活性化戦略」
−地上空間と地下空間の使い分け・川崎競輪場地下化構想− |
要 旨 :
21世紀を間近に控えて、活力ある都市の動向は多くの人々の最大の関心事である。スペース倍増計画が叫ばれている今日、都市空間利用において、地下環境をどう創造するかは人類未来の大いなるテーマであろう。その視点にたって活力ある21世紀都市の在り方を研究してみたい。
先ごろ、施設の老朽化や売上げの伸び悩みなどから新たな競輪場の立地などを検討してきた川崎競輪場整備方針検討委員会より、川崎競馬場の地下に建設することなどを盛り込んだ答申が、川崎市長に手渡されました。競馬場と競輪場の複合化で世界に例をみなし、新しいアミューズメント空間が創設されるとともに、災害時には地域の防災拠点にもなると効果が期待されています。そこで、川崎競輪場の地下化構想を話題として取り上げながら、都市空間利用において地下環境をどのように創造していくか、都市論、コミュニティ論といった観点より21世紀都市の活性化戦略についてご講演いただきます。
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