第135号/2000.12 

■山口専務理事・地下センター所長 退任

■平成12年度国内見学会報告

■エンジニアリングシンポジウム2000 開催報告

■会員の皆様へのお知らせ

■新聞記事からの紹介

■編集後記


■山口専務理事・地下センター所長 退任■


平成12年11月30日をもって、山口健氏がエンジニアリング振興協会専務理事・地下開発利用研究センター所長 兼 石油開発環境安全センター所長を退任することとなりました。山口専務理事には、当協会発足時より長年にわたって、協会の運営並びに当センターの事業に多大のご指導をいただきましたことを厚くお礼申しあげます。
山口専務理事が設立に努力され、育ててこられた当センターの一層の発展に尽くしてまいりたいと存じますので、引き続き会員各位及び関係諸機関の皆様のご支援ご協力を賜りたくお願い申しあげます。

○山口専務理事・地下センター所長退任挨拶

エンジニアリング振興協会設立の年、昭和53年10月から昭和55年6月まで事務局長として勤めさせていただきましたのが当協会における皆様とのお付合いの始めになりました。以来、再び当協会に赴任いたしました昭和59年4月から今日まで長期にわたり、会員の皆様をはじめ関係機関の方々から多大なご理解とご協力を戴いて業界の発展に努力させていただいたことを非常に有難く思っております。

 この間、平成元年9月に地下空間の開発利用に必要なエンジニアリングの研究開発を行うため、多くの企業のご賛同と通商産業省の支援の下に地下開発利用研究センターを設立することができ、さらに平成3年11月には石油開発環境安全センターの発足が実現いたしました。これらの付置機関がそれぞれ順調に発展を続けてまいりましたことは、何にも増して関係の皆様の暖かいご理解とご支援のお陰であります。

 当センターの発足時、即ち平成元年度から始まりました大型プロジェクト「大深度地下空間開発技術の研究開発」は世界で始めて軟岩に大規模空洞をつくる技術の実現となり、国内外から注目を受けました。エネルギー分野では、国が推進する国家石油備蓄基地のF/Sを石油公団から受託し、地上備蓄基地6、地中備蓄基地1および地下備蓄基地3の計10か所を実施して、うち8か所が実現を見たことは大変印象深い想い出でございます。さらに地下センター設立後に実施して参りました石油ガス国家備蓄基地5か所のF/Sも皆様のお陰で所期の成果を挙げることができ、これから本格的な工事が始まろうとしています。その他、地下清掃工場システムや減圧トレーニングセンター構想など新しいことを色々やらせていただき、当センターが発展を遂げて参りました、皆様ご承知のとおりであります。

 本年は「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」も成立したところであり、社会資本における地下利用の必要性から、当センターの使命はさらに重要性を増すものと確信しています。このようなニーズを踏まえて、皆様の一層のご発展を祈念いたしております。

 なお12月1日からは、当センターとゆかりの深い日本地下石油備蓄株式会社へ勤務することとなりました。引続きよろしくご指導の程、お願い申上げます。



■平成12年度国内見学会報告■


当センター恒例の行事である国内見学会が、11月8日(水)〜10日(金)の日程で、山口専務理事を団長として総勢40名の参加によって行われました。

 今回は、長崎空港を皮切りに、九州西部の5県を走破して、鹿児島空港まで縦断するというコースを選定し、5カ所の地下関連施設を視察してまいりました。バスの走行距離が600kmを超えるたいへん厳しい行程になりましたが、さまざまな地下空間利用施設を実際自分の目で確認することにより、地下空間の開発利用に対し、なお一層の知見を深めることが出来ました。

 また、エンジニアリングの基本となる異業種間の協力という点に関しては、この3日間の視察を通じ、参加者同志の親睦を深めることができ、大変有意義な見学会となりました。


第1日目
○長崎県 ハウステンボス共同溝(地上環境快適化)

 オランダの街並みを再現したハウステンボスは、美しい景観と広々とした開放感で人気のあるテーマパークですが、その地下には共同溝と呼ぶトンネルが張り巡らされています。
共同溝の総延長は3.2kmにもおよび、内空断面は高さ2.5m、幅が3〜6mと巨大なものです。その中を上下水道、地域冷暖房用のパイプや電線、ケーブルテレビ用の配線、通信用の光ファイバーケーブルなどが幾通りも走っていました。今回はエネルギープラントや淡水化プラントなども併せて見学しました。


第2日目
○佐賀県 九州電力天山発電所(揚水式地下発電所)

 佐賀県のほぼ中央の厳木町(「きゅうらぎ」と読みます)にある天山地下発電所は、夜間の余剰電力で下下流にある厳木ダムから上流の天山ダムに水を汲み上げておき、電力需要が高まる昼間に放水して発電機を回す揚水式の発電所です。発電機本体は、地下約500mの花崗閃緑岩体に建設された、幅24m、高さ48m、奥行き89mの地下空洞に設置され、出力は60万kWとなっています。
今回は特別に水車ピットの中まで入らせて頂き、たいへん貴重な体験ができたことに感謝しています。


○熊本県 辛島公園地下駐車場(大規模駐車施設)

 熊本城に近接する辛島公園の地下空間を利用した、地下2階4層からなる市営の大規模地下駐車場です。公園脇から熊本城へと延びる道路の地下部分224mも含めて駐車場となっており、自動車625台、バイク400台、自転車500台の大きな収容能力があります。入庫口、出庫口はともに2ヶ所設置され、1ヶ所は道路の中央車線から直接進入できる構造となっています。
 駐車室は自走式と機械式があり、33ナンバーまで対応可能な後者は、現地で実際に操作して頂き、その仕組みを詳しく観察することができました。


第3日目
○鹿児島県 串木野ちかび展示館(石油地下備蓄)

 日本初の水封式石油地下備蓄基地は、安定した岩盤の中に幅18m、高さ22m、長さ555mの巨大な空洞を10基並べて建設した、一般に岩盤タンクと呼ばれる施設で、すでにオイルインが行われています。
 建設時に使用された作業トンネルの入口部を利用した展示館で、水封式地下備蓄基地のしくみや特徴、安全性などについて、わかりやすい説明を受けることができました。


○鹿児島県 ゴールドパーク串木野(鉱山跡地利用)

 串木野金山は、薩摩藩19代藩主島津久光の頃に鉱脈が発見され、江戸時代から明治の末まで島津藩によって採掘が行われたのち、明治39年に三井鉱山に移り、大正から昭和の中頃までは日本一の産金量を誇っていました。
 地底列車マインシャトル号に乗って地底ステーションまで向かい、火薬取扱所、坑道、黒い縞模様の入った金鉱脈などを見学し、金のインゴットに触れたりしました。
 
 最後に、今回の見学に際しまして、ご協力をいただきました関係者の方々に改めてお礼、感謝を申し上げます。                                             (技術開発第一部 花谷 育雄 記)



■エンジニアリングシンポジウム2000 開催報告■

 
こ当協会の恒例事業としてエンジニアリングシンポジウム2000が、11月15日(水)、16日(木)の両日にわたりサンケイプラザにおいて盛大に開催されました。

 2000年−ミレニアムという大きな時間的節目の年にあって、今回20回目を迎える2000年シンポジウムは、変化への対応を探る共通の場として、「ニュー・ミレニアムを切り拓く−エンジニアリングの挑戦!」をメインテーマに、製造業という原点に立ち返りながらも、時代の変化に適切に対応して行くにはどうすればよいかを共に考えてみたいという企画で、初日は、経営の変革、物作り復権に通ずる日本的強さの回復、エンジニアリング産業への問題提起とアドバイス等をテーマに業界著名の方々による講演やパネルディスカッションが行われました。
 2日目は、21世紀に向けたエンジニアリング産業の「挑戦」、「克服」、「貢献」をテーマに3つのセッションに分かれ、より具体的・実務的な関心に応える様々なプログラムが行わ行われました。また、今回は新たな試みとして、2日目プログラム終了後に講演者、シンポジウム参加者相互の交流と懇親の場が用意され、実りの多いシンポジウムとなりました。

 初日プログラムは、重久理事長の挨拶を皮切りに、今回の実行委員長を務められた小山巌 新日本製鐵兜寰ミ長の挨拶、続いて「経営が企業を変える−"エンジニアリングの挑戦!"に寄せて」をテーマに新生銀行渇長兼社長の八城政基氏による招待講演が行われました。午後からは、「21世紀のエンジニアリング産業のあり方」についてのパネルディスカッションが、コーディネータの野中郁次郎氏(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)を中心に、4名のパネリストの唐津一氏(東海大学教授/鞄d通顧問)、玉田樹氏(竃村総合研究所創発センター長)、寺島実郎氏(且O井物産戦略研究所所長)、中藤信氏(石川島播磨重工業鰹任顧問)により、活発な討論が行われました。 コーヒーブレイクを挟んで特別講演として「"製造業が国を救う"からのメッセージ」と題して経済ジャーナリストのエーモン・フィングルトン氏による講演が行われました。

 2日目プログラムは、Aセッション「21世紀に向けてのエンジニアリング産業のチャレンジ」(挑戦)、Bセッション「当面の苦境を乗り切るためのエンジニアリング産業の努力」(克服)、Cセッション「エンジニアリング産業の貢献、21世紀に我々は何を求めいるか」が3つの会場に分かれて行われ、それぞれ大盛況の講演が行われました。

 特にA−1プログラムでは、「21世紀における大深度地下開発への挑戦」
をテーマに3時間に渡るプログラムが用意され、本年5月に成立した「大深度地下の公共的利用に関する特別措置法」を受けて、今後の大深度地下利用の開発可能性として本東信氏(国土庁大都市圏整備局計画課大深度地下利用企画室長)、花村哲也氏(岡山大学環境理工学部環境デザイン工学科教授)に当該法律の内容や考え方、国内外の大都市における現状の地下利用と具体的な構想事例をご紹介いただきました。

 また、小泉淳氏(早稲田大学理工学部土木工学科教授)にはわが国の大都市が立地している大深度地下の特性(高水圧の硬質地盤)による技術課題をコスト面や安全面などからの合理的な技術について解説いただき、早朝からの開催にもかかわらず120名を超える多くの参加者を得、その関心の高さを感じるものでした。




■会員の皆様へのお知らせ■


○第228回サロン・ド・エナ開催のご案内

日 時 :平成12年 12月 20日(水)17:30〜(於:当協会6階CDE会議室)

講 師 :駒田 広也 氏 ((財)電力中央研究所 我孫子研究所 研究参事)

テーマ :「高レベル放射性廃棄物地層処分の現状と今後の展望」


講演要旨: 
 原子力発電所に係わる重要課題の一つである高レベル放射性廃棄物処分に関する法律が成立し、今秋には処分の実施主体が設立される見通しである。
 2015年までに原子力発電所で発生する使用済み燃料を再処理したガラス固化体4万本を処分する総費用は約3兆円と算定され、21世紀のビッグプロジェクトである。
 この高レベル廃棄物地層処分に関する現状ならびに国内外の動きを紹介するともに、今後の処分地選定、処分地調査、施設設計、安全評価、施設建設、廃棄体埋設、処分場閉鎖等の一連の処分事業の計画を報告する。
 さらに、技術的課題を提示し、今後を展望する。
申込要領:FAXで事務局へお申し込み下さい。申込多数の場合は先着順で締め切らせていただきます。
         地下開発利用研究センター 事務局 中村 (TEL:03-3502-3671/FAX:03-3502-3265)



■新聞記事からの紹介■


○来年度に技術開発ビジョン−都市新生視野に検討・大深度利用し ゆとり空間−
  (2000.11. 6日付 日刊建設産業新聞より)

 国土庁は来年度、地下に地上になくてもいい施設を配置し、地上にゆとりある空間として緑やせせらぎを取り戻すとともに都市景観の向上に寄与するため、21世紀の都市における地下利用の可能性を検討し、大深度地下を含む地下空間を活用した21世紀型都市のあり方をとりまとめる。このため、それら都市の新生に必要となる大深度地下利用に関する技術開発ビジョンを来年度末にも策定する予定だ。

 21世紀の都市における地下利用の可能性の検討内容は、都市の静脈(エネルギー等の供給系、廃棄物等の処理系)や都市間交通(高速道路、幹線鉄道)の地下化、エネルギー施設や処理施設への地下空間特性(遮断、耐震性)の活用、新たな地下利用形態−を想定。これらに関する検討を基に地下を活用した21世紀型都市のあり方の取りまとめを行う。

 大深度地下利用に関する技術開発ビジョンは、実際に大深度地下を利用して、より効率的に事業を実施するに
は、今後、様々な技術開発が望まれる。
 そこで、各事業横断的に今後必要とされ、技術開発の方向性を示し、土木技術に限らず幅広い分野からの汎用性の高い技術開発を推進するために取りまとめるもの。

 必要となる各技術の実現性の検討としては ▽バイオ技術=地下でも生育する緑の創出、恒温・恒湿を活かした
分解性酵素の開発 ▽防災技術=大災害時のシェルター、防災拠点としての機能 ▽安全工学=火災対策、浸水対策、避難誘導方法 ▽環境制御技術=地下水制御技術、地下の化学反応抑制技術 ▽人間工学=心理的な圧迫感の除去、迷路性の克服 ▽土木技術=トンネルの長距離・高速掘進、トンネルの拡幅、分岐技術、掘削の自動化・省力化▽機械工学=垂直リニアモータエレベータの開発 ▽空間設計技術=空間の拡がりの見せ方 ▽交通工学=地下交通システムの開発 ▽輸送技術=リニアモータを利用した物流システム、空気圧送システム−などが考えられている。






編集後記; 
GECニュースは1989年9月創刊以来、皆様のおかげで135号となりました。発足から液化石油ガス地下備蓄技術調査ならびに地下開発利用マスタープランへの取組み(1989年10月)、「大深度地下空間開発技術」プロジェクト(1989年12月)などで活動が軌道に乗り、創立5周年の節目には備蓄室の設置、「大深度地下空間開発技術」の実証化、わが国初の「地下空間利用ガイドブック」の完成、リニアモーター垂直輸送システム実証試験など(1994年)とセンター活動が発展し、受託事業も増加しました。また創立10周年には皆様のご協力を戴いてセンター10周年記念事業実施やホームページ開設、先導研究着手など(1989年)と順調に発展を遂げてまいりました。
 山口専務理事が手塩にかけて育てた地下センターに今後ともご支援、ご協力をお願いいたします。