第145号/2001.10 

■委員会活動状況報告

■韓国・中国のLPG地下備蓄基地調査報告

■会員の皆様へのお知らせ

■新聞記事からの紹介


■「天然ガス固体化地下貯蔵システムに関する調査研究」委員会活動状況報告■



 本委員会(委員長:森康彦 慶応義塾大学理工学部機械学科教授)は、平成12年、13年の2ヵ年計画でスタートしたもので、昨年に引続き、天然ガス固体化地下貯蔵システムに関する調査研究の取りまとめを樺|中工務店に委託し、継続して実施しています。

1.調査研究の背景と目的

 従来、天然ガスの貯蔵方式としては、LNG又はガスとして貯蔵、並びに枯渇ガス田への還元等の方法しかなかったが、天然ガスを人工的に包接氷にして貯蔵する固体化貯蔵方式が、今後の新しい方式として着目されてきている。固体化貯蔵方式は、LNGと比較して温度条件が緩やか(LNGの-162℃に対して-30℃程度)で、かつ1m3あたり150〜170倍のガスを貯蔵できる可能性があり、従来方式の代替手段として、十分成立する可能性がある。
 本調査研究は、従来の研究ではまだ検討が進められていないエネルギー安定供給のための貯蔵施設という点に着目し、地下立地の特性を生かした製造及び貯蔵プロセスの検討、並びに貯蔵システムの概念設計とケーススタディを実施して、その成立性を技術的、経済的観点から調査検討するものである。

2.調査研究の内容

2.1平成12年度実施内容
(1) 天然ガスの需要動向の調査
(2) 天然ガス固体化地下貯蔵に関連した技術の調査
(3) 立地条件の調査
(4) 天然ガス固体化地下貯蔵システムの基本的検討及び技術課題の抽出

2.2平成13年度の調査研究概要
(1) 技術課題の整理と絞込み
(2) システムの基本仕様(製造プラント、貯蔵空間、再ガス化プラント等)の調査,検討
(3) 事業性及び技術的実現性からみたシステムの成立条件、到達目標の検討
(4) システム構築に伴う各種派生事項(周辺環境、経済効果等)の検討
(5) パイロットプラントの提案
(6) 全体のまとめ




■「地下空間開発計画及び立地選定評価システムの基礎的検討」委員会活動状況報告■

 2001年1月号(第136号)で紹介しました本委員会(委員長:小川輝繁 横浜国大大学院工学研究院教授)の平成13年度の引続きの活動状況の概要を紹介します。調査研究取りまとめの委託先は清水建設鰍ナす。

1.調査研究の背景と目的及び内容 
地下空間の開発においては、開発の目的を満たす性能、品質の確保の他にライフサイクルコスト性、環境特性への適合性、エネルギー使用の合理化及び低公害性等多岐の要素が求められている。2年計画でスタートした当システム策定は、最終年度を迎え、平成12年度の作業で抽出した各地下空間施設(地下街、地下鉄道、地下道路、
地下河川、石油備蓄及び鉱山)の評価分野と評価項目に対して、計画時、開発期間、操業期間、休廃止時等のライフサイクルにおける重要度を考慮した関連付けの検討を行う。更にリスク評価、権利的評価、安全評価、適用技術評価等の平成12年度では取り上げなかった評価分野についても同様の試みを行う。又、これら評価を支援するシステムの概念と必要なデータベースの種類についての検討を行う。



■韓国・中国のLPG地下備蓄基地調査報告■


1.はじめに

 8月12日(日)〜18日(土)において,韓国・中国のLPG地下備蓄基地に関する調査団(団長:登坂東大助教授以下5名)に事務局として参加し,両国のLPG地下備蓄基地(計3箇所)を訪問・調査致しました。
本調査は,石油公団より当協会へ委託された「石油ガス国家備蓄基地の操業時における技術的課題に関する検討業務」の一環として実施されたものであり,調査の主な目的は,既に操業あるいは建設工事最盛期にあるLPG備蓄基地(特に地下岩盤貯蔵基地)の操業時における技術的課題についての知見を得ることです。

2.訪問先施設概要

(1)仁川基地(操業中)
訪問日:8月13日(月)
名 称:仁川LPG基地
所在地:大韓民国仁川市(仁川市南部の沖合人工島)
所有者:LG-Caltex社
役 割:輸出入,国内中継基地(主な輸入先は中東。輸出
    は少量であるが中国,日本)
貯蔵容量:プロパン17万t,ブタン7万t(地下岩盤
       貯槽のみ)
受払設備:55,000DWTバース1基(延長約1km),ロー
     リー出荷設備14基
工 期:1997年1月〜2000年2月

(2)平澤基地(操業中)
訪問日:8月14日(火)
名 称:平澤LPG基地
所在地:大韓民国京畿道平澤市(ソウルの南南西約80km)
所有者:SKガス社
役 割:輸出入,国内中継基地
貯蔵容量:プロパン13,600t(地下岩盤タンク),ブ
     タン37,500t(地上タンク)
受払設備:85,000DWTバース1基,ローリー出荷設備
     10基
工 期:1996年7月〜2000年3月

(3)寧波基地(建設中)
訪問日:8月16日(木)
名 称:寧波華東BP液化石油気有限公司
所在地:中国浙江省寧波市大樹島(寧波市の東郊外(車で約
     1時間)、大樹島西海岸(大樹開発区))
所有者:寧波華東BP液化石油気有限公司
役 割:輸入、国内中継基地
貯蔵容量:プロパン125,000t,ブタン125,000t
      (いずれも地下岩盤タンク)
受払設備:50,000DWTバース,5,000 DWTバース各1基
工 期:1998年11月〜2002年6月

3.所感

わが国に先行してLPG備蓄基地の操業あるいは建設を行っている韓国・中国の3基地の操業状況,設計・操業の考え方等についての情報を得ることができました,なかでも特に印象的だったのは,海外地点の設計・操業における考え方が非常に合理的であるということです。いずれも民間の基地であり,余計なコストを掛けずに建設・操業を行っているという印象を強く受けました。今後,わが国においてLPG備蓄プロジェクトを推進するにあたり,地点固有条件の差はあるものの,参考にすべき点が多いと思います。
最後に,このような貴重な経験をさせていただき,関係各位に心から感謝致します。

(備蓄プロジェクト室  峯 敏雄 記)




■会員の皆様へのお知らせ■

○国内見学会のご案内

 先月号でお知らせしました国内見学会の詳細が決まりました。各会社の窓口あて連絡はいたしておりますが、締切日の10月6日を過ぎても、定員40名に達していない場合は参加できますので、参加ご希望の方は、お急ぎご連絡ください。

期日:平成13年11月7日(水)〜11月9日(金) 2泊3日

見学先:青森市内地下駐車場、東北新幹線八甲田トンネル、龍泉洞、久慈地下石油備蓄基地・地下水族館、
日本原燃濃縮・埋設事業所、再処理事業所、三内丸山遺跡

参加費:95,000円(航空運賃、バス代、宿泊費、食事代を含む)
連絡・問合せ先:地下センター高見、中村(TEL:03-3502-3671/FAX:03-3502-3265)


○第237回サロン・ド・エナ開催のご案内
 
日 時 : 平成13年10月17日(水)  17:30〜20:00
 場 所 : 当協会 6階 CDE会議室
 会 費 : 3,000円(非会員 5,000円)(当日受付にて申し受けます。)
 講 演テーマ:「インドのIT革命と日本企業への影響」
 講師  :西山 征夫氏(ジェネシス株式会社 社長)
《講演趣旨》 
インドのマハジャンIT担当大臣が、9月3日に日本で開催された「日印情報技術(IT)サミット」に出席のため来日され、日本のハードウエア産業とインドのソフトウエア産業が協力して第三国への輸出を狙う戦略を提唱した。インドは、この10年間でソフトウエア産業が急速に台頭し、マッキンゼーは、2008年にはインドITサービスの輸出は500億ドルになると予測している。そこで、インドのIT業界に豊富な知識と経験をお持ちの西山氏に、インドのソフトウエア開発能力が高い要因やソフトウエア開発能力の各国別比較、ソフトエンジニアの供給量等の講演をお願いした。又、最近日本のエンジニアリング企業が設計、資材調達等の主力業務を海外に移転しているので、インドのエンジニアリング企業の設計能力にも言及する。

 申込要領:FAXで事務局へお申し込み下さい。申込多数の場合は先着順で締め切らせていただきます。
        地下開発利用研究センター 事務局 中村 (TEL:03-3502-3671/FAX:03-3502-3265)


前回の報告:竃村総合研究所ソウル支局長 永宮 直史氏の「韓国エンジニアリング企業の実情を探る」の講演であったが、時流に乗ったテーマのためか、超満員の聴衆で熱気のこもった講演会であった。「海外プラント事業はそこそこの利益がでる。海外プラント事業の市場規模は大きい。韓国政府、企業とも、海外プラント事業は有望市場であるとの共通認識を持っている。」とのお話に勇気づけられた人が多かった。




■新聞記事からの紹介■

○国土交通省大深度地下利用技術開発14テーマで実施方針確認

 
国土交通省は、「大深度地下利用に関する技術開発ビジョン検討委員会」(委員長:黒川洸 東工大名誉教授)の第5回会合で、本年度の技術開発テーマ14件について担当団体と実施方針を確認した。検討委では、12月の次回会合でテーマごとの検討成果を報告するとともに、年度末にまとめる技術開発ビジョンの議論に入る。
 当エンジニアリング振興協会は下記の5テーマの担当団体になっています。

換気技術 大深度地下空気浄化技術による地上環境負荷の低減
防災システム 利用形態、施設形状を考慮した有人施設の総合防災システム
移動・物流システム 物の移動を中心とした輸送システム、利用形態を考慮した大深度地下利用輸送システム
地下環境アセスメント 大深度地下、地上の環境影響予測評価
大規模空間掘削構築技術 利用形態に応じた大規模掘削構築技術


○国土交通省「合同庁舎3号館屋上庭園」を公開

 国土交通省は、屋上緑化に関する技術の紹介、普及啓発を図るため、平成12年度に国土交通省の屋上に整備した屋上庭園を公開することにした。
−GECニュース編集者も初日に見学に出かけたが、 国土交通省の係の人が親切に説明してくれた。緑化していない屋上表面の温度が60℃に対して、緑化部分では、28℃との話は興味深かった。一度見学されることをお勧めします。

  公開日:H13.9.14〜12.21までの毎週金曜日
     (金曜日が休日の場合は前日の木曜日)
  公開時間:午後2時〜4時
  申込方法:見学を希望する日の前日までに電話で申し込む。
  申込先:都市・地域整備局公園緑地課緑地環境推進室
            TEL:03-5253-8111-(内線32963)



 

舌句雑感:テロによるニューヨークへの爆破攻撃には呆然とされた方がほとんどと思われる。民間機を爆弾に利用するという考え方はまさに小説を超えているわけだが、過激派の存在は、貧富の差のない平穏な社会を求めているイスラム原理主義の中でもごく一部と言われる。まじめなイスラム教の信者、特に米国における600万人のイスラム信者にとっても大変な災難ではないかと想像する。彼らは実に信仰心が深い。筆者も、マレーシアの作業所時代に、彼らの信心深さを強く認識させられた。イスラムの人間は2ヶ月にわたるラマダン(断食)では、日の出から日没まで飲まず食わずを強いられる。40度近い環境で、日本人なら絶対辛抱できないが、彼らはかたくなにルールを守る。隠れて飲めばとそそのかしても、アラーの神が見ているといって絶対に飲まなかった。そのとき、イスラム教は近代文明にはそぐわないと思ったが、ふと、どちらの考え方が良いのかと思う今日この頃である。                                                     (GECニュース編集者)