
第147号/2001.12
■高炉スラグ有効利用による最終処分場遮水システム
適用報告
■平成13年度国内見学会報告
■地下利用事例取材報告―佐渡金山
■地下利用推進部会活動報告
■会員の皆様へのお知らせ
■高炉スラグ有効利用による最終処分場遮水システム適用報告■
当センターでは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「平成10年度即効型提案公募事業」として、NEDOからの委託により平成11年3月〜平成12年3月に、工業技術院資源環境技術総合研究所(当時)、ハザマ、新日本製鐵(株)の四者で「高炉スラグ有効利用による最終処分場遮水システム」を開発実証しましたが、このシステムが実際の物件に適用されることになりました。
最終処分場遮水層の新構造基準では、3タイプの二重化遮水構造が示されています。その中でも粘土層(土質遮水層)と遮水シートを組み合わせた構造は、地盤の変形に追従でき、異種材料の組み合わせによる損傷しにくい遮水構造として安全性が高く注目されています。
本システムもこのタイプで、大きな特長の1つが現地発生土を利用できることで、それに高炉スラグ微粉末とベントナイトを混合した特殊粘性土層が中核となり、遮水シートと組合せて複合遮水構造を形成します。この特殊粘性土は、各添加材の特性により、新構造基準の遮水性能に加え、廃棄物の上載荷重に耐える十分な強度をもった安定した土質遮水層になります。それによって、遮水シートが万一損傷したり寿命がきた場合でも浸出水を漏らさない、より安全で高品質な最終処分場の構築が可能になります。さらに、長期的に遮水性能を確認するためのテレビカメラによる監視技術と、損傷箇所の修復技術もあわせて実証しました。
今回適用されたのは、朝日町一般廃棄物最終処分場造成工事(北海道上川郡)で、埋立面積5,000m2、埋立容量は12,000m3。立地場所がダム湖上流の砂礫地盤上に位置することから、特に長期的な安定性が求められ、本システムの二重化構造が最適であるとの判断により、「高炉スラグ有効利用による最終処分場遮水システム「COLAS」(Composite
Layer Sealing )」の採用が決定されました。2002年11月竣工を目指し、2001年8月工事に着手しました。施工はハザマが担当します。
また、この最終処分場では遮水シートからの漏水の有無や位置を確認するために、NEDOからの委託研究で開発したテレビカメラ方式の監視技術によるケーブルドラム式CCDカメラによる検知システムが導入されます。従来方式の通電による破損確認の方法では常時モニタリングが困難でしたが、これに対して、シートに異常がないことをいつでも監視でき、さらに、漏水の有無をテレビモニターで目視可能なので、専門家でなくても監視できることも大きな特長になっています。
廃棄物最終処分場が全国的に不足している状況下、本技術が立地問題解決の一助となれば幸いです。

■平成13年度国内見学会■
11月7日〜9日にかけての3日間、当センター恒例行事である国内見学会が大関常務理事を団長として総勢34名の参加をもって行われました。今年は東北の青森・岩手両県内の地下関連施設を視察先に選定し、青森空港を起点に延べ走行距離700kmを越えるハードな行程で紅葉が残る晩秋の東北路を駆け巡りました。
また、3日間の視察を通して、異業種からの参加者同志の親睦も深まり、有意義な見学会となりました。
第1日目
○長島地下駐車場(青森市)
東北初の国道直下の地下空間利用として県庁前に建設されたもので、駐車場・地下連絡通路・ギャラリーを設けています。駐車場は長さ160m、幅33m、面積4,600uと小規模ながら交通渋滞緩和に貢献し、冬季は特に高い利用率を示し、豪雪地における事業の参考となります。
○東北新幹線 八甲田トンネル(青森県上北郡天間林村)
盛岡から青森を結ぶ東北新幹線延伸事業の中で八甲田山の北東山麓に位置するトンネル(延長26.45km、完成時は世界最長の陸上鉄道トンネル)です。視察現場は斜路を700m余り下って本坑に達し、延長5kmをNATM工法で施工します。担当者から概略説明を受けた後、切羽まで案内していただきました。坑内換気の制約から長距離ベルコンによる掘削土搬出を準備中でした。また、火山特有の有害物質(硫化鉄)を含有する掘削土のため、有害物質の濃度によって管理型の土捨場に処分する環境保全策を採っています。掘削土一時貯蔵施設など豪雪地における工事の苦労を知る機会となりました。
第2日目
○龍泉洞(岩手県下閉伊郡岩泉町)
久慈への道中、日本三大鍾乳洞の一つである龍泉洞(国の天然記念物)に立ち寄りました。湧出する豊富な清水がつくる水深100mにも達する地底湖は圧巻でした。
○久慈地下石油備蓄基地(岩手県久慈市)
菊間(愛媛県)、串木野(鹿児島県)に続いて建設された地下式石油備蓄施設で、正式には日本地下石油備蓄葛v慈事業所と言います。備蓄容量167万キロリットル(国内消費3日分相当)、各々の備蓄タンク規模は、幅18m、高さ22m、長さ540m、合計10本のタンクで構成されています。総合管理事務所で説明を受け、基地の頭脳である中央計器室の様子を視察しました。モニター画面に水封された原油の状況が写し出されていました。この後、山腹のタンクに続くサービストンネルを700mほど歩いてタンク直上の原油受払ポンプ室を案内していただきました。足元のはるか下方で実際に見ることができない静寂な空間にある原油を想像しました。三陸海岸特有の津波に対する危機管理として、過去の潮位より高位に主要施設を設けています。併せて、作業用トンネルを利用した地下水族科学館(もぐらんぴあ)と石油文化ホールも見学しました。大規模な施設群にも関らず、地下利用は景観を損なわないことが実感できました。
第3日目
○日本原燃・原子燃料サイクル施設(青森県六ヶ所村)
広大な敷地に、ウラン濃縮、低レベル放射性廃棄物埋設、 高レベル放射性廃棄物一時貯蔵、再処理の四事業が展開されています。PR館で理解を深めた後、まず低レベル放射性廃棄物埋設施設を視察しました。コンクリート製の巨大な箱に廃棄物を封印したドラム缶を積み重ねてモルタル充填し、箱をベントナイト混合土で被覆してから埋め戻し客土をします。視察時はちょうど浜岡原発からの廃棄物を検査所に受入れ中でした。再処理工場は建設の最盛期で、構内は関係車輌で大変な賑わいでした。
○三内丸山遺跡(青森市)
空港への帰途、県総合運動公園拡張工事に伴う発掘調査において巨大土木建築技術が発見された縄文時代の遺跡にも寄りました。貴重な文化財の出土が大規模事業を途中で変更させた一例でもあります。
最後に、見学会参加者からは「次年度以降も是非継続してほしい」旨、励ましの言葉をいただきました。今回の見学会に各方面から暖かいご協力いただき、関係者の方々に改めて感謝しますと共にお礼申し上げます。
(技術開発第一部 高見元久 記)


■地下利用事例取材報告―佐渡金山■
地下情報化部会(吉村和彦部会長)では、地下利用事例集の取材のため、10月18〜19日に、佐渡・金山の調査を行いました。東京(新幹線)〜新潟、新潟港(ジェットホイル)〜佐渡両津港で、東京から所要3時間で佐渡に到着します。
佐渡金山は、今年が、金山開山400年に当たります。平成元年(1989年)を最後に閉山され、現在、採掘は行われていませんが、観光地として生まれ変わっています。
金山の始まりは、慶長6年(1601年)に"道遊の露頭"が発見されたのが日本版ゴールドラッシュの始まりといわれ、「佐渡に行くには、わら草履を履いて行け(後に底裏にくっ付いた金を採る)」との伝説が生まれたのもこの頃です。佐渡の金山は、砂金よりも、いわゆる山金として天文11年(1542年)に鶴子銀山が発見され、その後、先述の道遊の露頭を端緒とした相川金山(佐渡鉱山)が発見されます。
道遊の露頭は、遠くから見た山の中腹が、きらきら光っているのを見て発見されたといわれています。その金脈を中心に掘り進んで行くうちに、山を切り裂いてしまったという話は、金の魅力とその掘り進んで行った執念には思わず肌寒いものを感じます。写真は、その切り裂かれた山の跡姿です。
その後、生産量の増大とともに、人口10万人の巨大鉱山都市(現在は9千人)となります。流人が強制徴用されたのもこの頃です。明治に入って火薬による洋式採掘が導入され、さらに、明治29年(1896年)に明治政府から三菱合資会社に払い下げられ、昭和15年(1940年)月産鉱石処理量5万tの東洋一を記録いたしますが金品位低下(3g/t)のため閉山、平成元年に休山しています。一般観光客は入れませんが、旧立坑入り口建屋の屋根瓦などには菊の紋章が所々に見られ、当時の栄華が偲ばれます。
現在、ゴールデン佐渡鰍ェ、旧坑道跡をそのまま活用して、年間40万人の史跡観光とあわせて、坑道内の低温を利用して古酒の保存などが行われるようになっています。
また、開山400年を記念して、文化庁補助事業として、平成20年の完成を目指して建設中の佐渡奉行所の見学も今年から始まっています。建築費坪当たり270万円を要した建物の再現はその規模の大きさとともに、改めて当時の幕府の力の入れようが覗われます。
小学生に、佐渡と聞けば"朱鷺(トキ)"ということになりますが、トキの保護育成現場も見学させてくれます。こちらの方は、年々見学者が増加して、年間28万人になっているとのことでしたが、一方で、トキを遠くから眺める物足りなさも囁かれているとのことでした。トキの側から言えば、もう沢山といったところでしょうか。
今回の取材を通じて、テーマパークなど、観光施設の設立に当たっては、自然環境と歴史的遺産が如何に重要であるかを問い直す機会を改めて提供してくれました。
最後に、今回の取材・調査に際して、ご協力いただきましたゴールデン佐渡鰍始め関係の方々に改めてお礼申し上げます。
■地下利用推進部会活動報告■
○第238回サロン・ド・エナ開催のご案内
地下特性活用専門部会(地下利用推進第3部会)では、活動方針である「地下の特性の活用」いう観点から10月22〜23日に神岡鉱山、スーパーカミオカンデ、黒部川第四発電所の現地調査を行いました。
富山との県境にある岐阜県神岡町にある神岡鉱山は、古く奈良時代から金・銀産出の記録にあるところです。
戦国時代の天正年間から鉱山開発が行われ、江戸時代は天領となっておりました。明治初期から近代的鉱山開発が行われ、鉛・亜鉛の産出・精錬が行われて来ました。
平成13年6月末で亜鉛鉱石の掘削は終了しており、栃洞坑で石灰石の掘削のみ行っています。
スーパーカミオカンデは神岡鉱山の茂住坑にあり、飛騨片麻岩で出来ている旧鉱山廃坑を利用し、宇宙線の影響を少なくするために地下1000mの深さに、約6万空m3の大空間を建設したものである。ここでは、5万t(直径39.3m×高さ41.4m)の超純水を貯め、光電子倍増管によりニュートリノの観測が行われている。この他にも、「遮蔽・防音・防振・高強度岩盤」という地下の特性を生かし、「火薬実験」・「圧縮空気発電」・「減圧室」等の実験場として活用されている黒部川第四発電所は黒部電源開発の最大のもので、国立公園(美観)、冬季の降雪・雪崩(自然災害)等を考慮し、発電所・変電所・開閉所を全て、地下約150mの深さに建設したものである。これらの建設・運営のために造られたトロッコ軌道・エレべーター・インクライン・「高熱隧道」や「破砕帯」のトンネル、そして約2億m3の貯水量のアーチ式の黒部ダムを見学しました。
神岡鉱山・黒四発電所の現地調査では、技術力・機械力ともに不充分な時代に、目的を完墜された先人の偉大さに頭の下がることでした。
最後に、今回の現地調査に際して、ご協力を戴きました関係の方々に改めてお礼申し上げます。

■会員の皆様へのお知らせ■
○第239回サロン・ド・エナ開催のご案内
日 時 :平成13年12月19日(水)17:30〜(於:当協会6階CDE会議室)
講 師 :東野 正 氏(NEC e ガバメントソリューション推進本部 本部長)
テーマ :「e-JAPAN(電子政府)構想の紹介とNECの取組みについて」
−電子行政サービスが生活及びエンジニアリング業界にもたらすインパクトー
講演要旨:e-JAPAN戦略の目標年である2005年に向けて、(1)電子政府・電子自治体の動向の紹介及び政府の主要政策のアクションプラン、政府の動向、(2)NECの電子政府・電子自治体ソリューションについてご講演頂く。(講演終了後懇親立食パーティ)
○第240回サロン・ド・エナ開催のご案内
日 時 :平成14年1月16日(水)17:30〜(於:当協会6階CDE会議室)
講 師 :猪股 実 氏(国土交通省 都市・地域整備局 大深度地下利用企画室長)
テーマ :「大深度地下使用制度と事業化の展望
―事業調整・認可等の制度の仕組みとそのメリットと効果ー
申込要領:mailで1.会社名 2.氏名 3.所属・役職 4.連絡先を事務局あてお申し込み下さい。
申込多数の場合は先着順で締め切らせていただきます。
申し込み受付のできない場合のみご連絡いたします。
mailto:gec-adm@enaa.or.jp
お詫びと訂正:先月号センター運営会議報告中の新役員紹介で、鹿島建設鰍フ富岡征一郎氏の名前の漢字が違っておりました。冨岡征一郎氏に訂正させていただきます。ご迷惑をおかけしましたことを謹んでお詫び申し上げます。 |
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