第168号/2003.9 

「高効率熱電変換」海外技術調査報告

第257回サロン・ド・エナ開催報告

第23回エンジニアリング功労者表彰

エンジニアリング2003開催案内

会員の皆様へのお知らせ


■『高効率熱電変換システムの開発事業』海外技術調査報告■
       〜熱電技術研究開発の拠点
                           EU(ドイツ、オーストリア、英国)及びロシアの現地調査〜




  熱電変換技術の開発は日本・豪亜、米州、欧州が鎬を削っています。『高効率熱電変換システムの開発事業』では、昨年の米国調査に引き続き、平成15年6月29日〜7月9日にかけて関連機関を訪問し、欧州における熱電変換技術の開発動向並びに、その普及に向けた活動を調査しました。
 今回の調査は、高効率熱電変換システム実用化推進委員会(柏木孝夫委員長)のミッションであり、梶川武信プロジェクトリーダーを調査団長として委員会委員、事業参加企業及び事務局(GEC)等から総勢12名のチームを編成し、関係機関との意見交換を通して情報を収集しました。特に、熱電性能評価技術に対する取り組みについて重点的に調査しました。

[ドイツ]
1)DLR(ドイツ航空宇宙研)

 6月30日、ケルン市近郊に在る「ドイツ大型研究所」の一つであるDLRを訪問し、熱電変換材料、モジュール、性能評価について幅広い意見交換を行いました。また、同席したangaris社の小規模熱電モジュールと、TEC COM社の熱電関連製品に関する事業化についても意見交換を行いました。
 DLRとは、熱電性能評価技術の国際的な基準作りについて、その重要性と研究開発の方向性について重点的に議論を深めました。
7月1日、DLRでは航空宇宙に関する開発動向と宇宙用熱電センサーの利用計画について、またJETROデュッセルドルフではドイツにおける環境技術動向のヒアリングを行いました。

2)FHG(フラウンホーファ研究機構)
 7月2日、フライブルグ市に在る「応用技術を中心とする研究機関」であるFHGを訪問し、熱電変換材料並びにシステム化に必要なDC/DCコンバータの研究開発についての意見交換を行いました。特にDC/DCコンバータについては強い関心を持つ事業参加企業もあり、プロジェクトの成果に繋がることが期待されます。

[オーストリア]
1)TUW(ウィーン工科大学)

 7月4日、調査団は二班に分かれ、ウィーン市に在るTUWを訪問しました。TUWと日本との間では人工ダイヤモンド、低NOx燃焼技術等で技術交流があります。
訪問機関は超伝導材料の研究を主軸にしているグループで、熱電では材料物性研究を主に行っています。Co-Sb系の開発を行っている事業参加企業には興味ある情報を得られました。

[ロシア]
1)Ioffe研(ヨッフェ研究所)

 7月4日、二班に分かれた調査団の他の一班は、建都300年祭で賑わうサンクトペテルブルグ市に在るIoffe研を訪問しました。
訪問機関は熱電変換技術研究のルーツであり、低温系・高温系の材料並びにモジュール研究開発で世界トップレベルにあります。研究スタッフ27名(内、Ph.D.20名)で、サイエンスのフェイズの研究を推進しています。自らの成果をエンジニアリングに落としこみ、事業に結びつけるパートナーを求めているようです。
 訪問調査に当たっては、Bi-Te系材料から始まり、最新の薄膜熱電材料まで、幅広い材料開発と評価技術についての意見交換を行いました。本プロジェクトの次世代を目指した研究においては興味ある材料を保有しています。
 7月5日、サンクトペテルブルグ市に在るJapan Center・小井戸所長を訪問し、ロシアの環境分野での取り組みについてヒアリング調査を行いました。

[英国]
1)Cardiff大学(カーディフ大学)

 7月7日、二班に分かれた調査団がウェールズの首都カーディフ市に合流し、Cardiff大学を訪問しました。
NEDOのエコ・エネプロジェクトをスプリングボードとして、現在では欧州における熱電のCOEの一つです。高温用熱電変換材料、特に温度特性を高温側にシフトする技術の研究でも成果を挙げており、本プロジェクト参画のモジュール開発事業者を中心に意見交換を行いました。
 欧州におけるTE Network(熱電研究ネットワーク)で材料研究はTUW、システム研究はCardiff大学、評価計測はDLRであり、Cardiff大学も重要な役割を担っています。『高効率熱電変換システムの開発事業』で研究開発を行っている評価技術を世界標準に展開する場合も、TE Networkは考慮すべき機関群です。

[まとめ]
 今回の海外技術調査では、欧州各国並びにロシアにおける熱電材料・モジュール、熱電システム、熱電性能評価技術の動向を把握すべく、熱電変換技術について研究、実用化を進めている大学、研究所、並びに企業を訪問しました。
 日本は民生、米国は航空宇宙といった分野で国レベルの熱電研究投資が行われているのに対し、欧州はこれから投資を進める段階です。欧州では、今回訪問したTUW、Cardiff大学、DLR等が核になって熱電研究ネットワークを構築し、それぞれ特徴ある研究を推進しています。
今回の調査団からは、訪問先に対して『高効率熱電変換システムの開発事業』の活動全般、熱電性能評価技術について提案し、意見交流を深めることが出来ました。
 今後、欧州の動きを注視し、これまでの多くの国際規格が辿ったプロセスと同様にならない様留意しつつ、熱電の発展に向けて各調査訪問先と、引き続き交流を強化していく予定です。
(技術開発第二部 尾崎光則 記)



             DLR材料研究センターにて(中央左:Muller 博士)



 

          Cardiff大学 (中央:Rowe 教授)

                    



■第257回サロン・ド・エナ開催報告■


 7月17日(木)17:30分から恒例の第257回サロン・ド・エナが開催されました。今回は、湘南工科大学副学長・教授で(財)エンジニアリング振興協会顧問 高効率熱電変換システム開発プロジェクトプロジェクトリーダーの梶川 武信先生にお願いし、「排熱が直接電気に、電気が直接冷熱に〜進展する熱電変換事業〜」というテーマでご講演いただきました。会場は満員となり、多数の方々が熱心に聴講されました。又、同時開催された参画企業による熱電に関する種々のデモンストレーションも大好評でした。
 ご講演要旨は以下の通りです。
@冷蔵庫、腕時計等の熱電変換の身近な応用事例の紹介。
A材料革新により低効率伝説が打破され熱電が脚光をあびている。
B熱電変換モジュール、熱電変換の原理(ゼーベック効果)の説明。
C熱電変換の特徴及び発電、冷却への応用事例紹介。
Dシステム事例から辿る熱電変換の進展(産業から民生へ;宇宙、僻地から身の回りへ)の説明。
Eトップページの欧州海外技術調査報告も入れた米、欧州、国内のR&D動向の紹介。
F熱電変換の経済性及び信頼性の見通し、熱電変換の潜在力と用途の多様性について、今後の課題と将来展望の説明。
G結びとして、 
■シーズの充実とニーズの緊迫化
■実用化への見通しの明確化
■潜在力の大きさ
■将来エネルギーシステムでの基幹の説明。
(トップページの海外技術調査報告とあわせてお読みください)(講演会資料をご希望の方は、地下センター事務局までご連絡ください)


      

               ご講演風景                             デモ風景




■第23回エンジニアリング功労者表彰■


  表彰式は7月10日に東海大学交友会館で執り行われ、この中で今回も地下空間に係わりのある種々のテーマが表彰されました。
 協会設立25周年を記念した個人表彰では、地下センターに関わりの深い方々では、梶川先生、柏木先生、駒田さん、吉村さんが表彰されました。

<グループ表彰> 国際協力

BP寧波LPG岩盤貯蔵ターミナル建設プロジェクトチーム           [千代田化工建設馨 代表者 :大木 英介メンバー:27名
Hawiyahプロジェクトチーム       [日揮梶A日揮プロジェクトサービス馨 代表者 :八重樫 正彦メンバー:71名
ホンジュラス国/ニカラグア国ハリケーン・ミッチー被災橋梁復旧建設プロジェクトチーム   [滑ヤ組] 代表者 :服部 誠之メンバー:13名

<グループ表彰> エンジニアリング振興

上向きシールド工法開発チーム  [大成建設梶A五洋建設梶A石川島播磨重工業梶A石川島建材工業馨 代表者 :太田光彦メンバー:8名
地温自動予測制御システム「ソルコン」チーム   [佐藤工業馨 代表者 :織茂 俊泰メンバー:9名
バンコク地下鉄鋼製地中連続壁プロジェクトチーム[東急建設梶A新日本製鐵梶A褐F谷組、株bコーポレーション] 代表者 :酒井 邦登メンバー:8名

<グループ表彰> 環境貢献

シールド工事における省面積立杭システム開発チーム[戸田建設馨 代表者 :岩井 義雄メンバー:6名
焼酎副産物リサイクル設備プロジェクトチーム[石川島播磨重工業馨 代表者 :辻 英明メンバー:8名
リ・バースコンクリート開発プロジェクトチーム[渇恆コ組] 代表者 :廣中 哲也メンバー:18名

<グループ表彰> 特別テーマ 

岡本硝子竃{社工場エネルギーエンジニアリンググループ[岡本硝子梶A鹿島建設梶A三菱重工業梶A三菱重工東日本販売馨 代表者 :広滝 信朗メンバー:9名
ケミカルハザードの定量評価方法を導入した医薬品工場エンジニアリングチーム [日揮馨 代表者 :竹田 守彦メンバー:27名

<個人表彰> 国際協力

大森 安芳 三菱重工業梶@火力プラント建設部 主幹建設統括
萩原 直大 椛蝸ム組 仁川LNG工事事務所 所長 
宮澤 義己 轄ヲr組 タンザニア事務所長

<個人表彰> 協会活動(協会設立25周年)

岡田 博 千代田化工建設梶@理事
岡田 陽 日本オイルエンジニアリング梶@開発技術部部長
大河内 哲郎 渇`原製作所 情報・通信本部 IT事業センター長
柏木 孝夫 東京農工大学大学院 教授
梶川 武信 湘南工科大学 副学長・教授
神本 武征 東海大学工学部教授(元東京工業大学教授・工学部長)
河住 典男 三菱電機梶@産業事業部担当部長
駒田 広也 (財)電力中央研究所 我孫子研究所研究参事
坂本 隆 新日本製鐵梶@鉄構海洋事業部 海外エンジニアリング部 海洋技術グループマネジャー
中藤 信 石川島播磨重工業梶@常任顧問
古谷 邦彦 九州国際大学 教授(元日揮梶j
宮脇 邦彦 東洋エンジニアリング梶@経営計画本部情報渉外室長
吉村 和彦 滑ヤ組 技術・環境本部 環境事業開発部長




■エンジニアリングシンポジウム2003開催案内■
    統一テーマ:動こう!未来へ―新たな社会システム構築への挑戦―



*日 時 :平成15年11月6日(木)10:00〜17:00 、7日(金)9:30〜19:00
*場 所 :大手町サンケイプラザ
*申込方法:「参加申込書」に必要事項をご記入の上、郵送又はFAXにてお早めにお申し込み下さい。
     又は、ENAAホームページ(http://www.enaa.or.jp)から直接お申し込み下さい。
*申込期限:平成15年10月17日(金)
*参加費 :シンポジウム&交流会:15,750円 (消費税込み)


6日 4F ホール

「変化は進歩―キャノンの経営戦略とその実践」(招待講演)  
御手洗 富士夫(キャノン且ミ長)
10:00−12:00
「宇宙からの視点〜ユニバソロジの世界観」(特別講演)  
毛利 衛(宇宙飛行士/日本科学未来館館長)
13:00−14:30
「エンジニアリング産業に活を入れるー動こう!未来へー」(パネルディスカッション)
コーディネータ:小宮山 宏(東京大学副学長)パネリスト:岡本 章(鹿島建設鰹務取締役)、関 誠夫(千代田化工建設且ミ長)        永田 雄志(三井物産鰹務執行役員)、柘植 綾夫(三菱重工業鰹務取締役) 
15:00−17:00

7日 3F A会場 「次代をリードする企業活動とイノベーションの仕組みづくり」

「イノベーションプロセスのモデルと成功支援」
松島 克守(東京大学総合研究機構俯瞰工学研究部門教授)
09:30−11:00
「先端技術開発とビジネス展開」
都築 浩一(鞄立製作所研究開発本部ストレージ・テクノロジー研究センタ長)
11:00−12:30
「トヨタの環境経営への取り組み― ゼロエミッションへの挑戦 ―」
笹之内 雅幸(トヨタ自動車滑ツ境部主査)
13:30−15:00
「構造改革特区について」
檜木 俊秀(内閣官房構造改革特区推進室参事官)
15:30−17:00

7日 3F B会場 「住みよい社会づくりへの課題と展望」

「新エネルギーの推進に向けて」   
荒木 由季子(経済産業省資源エネルギー庁新エネルギー対策課長)
09:30−11:00
「世界の水問題への挑戦」
尾田 榮章(第3回世界水フォーラム事務局長)  細田 衛士 (慶応義塾大学経済学部教授)
11:00−12:30
「バイオマス・ニッポン総合戦略について」       
藤本  潔(農林水産省大臣官房環境政策課 資源循環室長)
13:30−15:00
「エンジニアリング・スピリットを受け継いで−将来の都市形成のために−」   
篠原  修 (東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻教授)
15:30−17:00

7日 3F C会場 「新時代の国づくりと技術展望」

「国づくり100年デザイン」  
橋本 武 (国土交通省国土計画局計画官) 国土交通省都市・地域整備局大都市圏整備課大深度地下利用企画官 国土交通省都市・地域整備局大都市圏整備課大深度地下利用企画官
09:30−11:00
「産学連携による技術移転の仕組みづくり」  
山本 貴史(叶謦[科学技術インキュベーションセンター社長)
11:00−12:30
「進む産学官連携と我が国産業の競争力」  
根津 利三郎 (兜x士通総研常務理事)
13:30−15:00
「進化するインターネット」  
田中 章雄 (潟}クロメディア取締役CTO)
15:30−17:00

7日 4F ホール
  交流会 17:00〜19:00
*申込・問合先;シンポジウム事務局 伊藤/金井/有賀/阿部
TEL:03-3502-4441、FAX:03-3502-5500、E-mail:pdd434@enaa.or.jp



■エンジニアリングシンポジウム2003開催案内■

□第258回サロン・ド・エナ開催のご案内(8月休みのため2回目の案内)

日 時 :平成15年9月17日(水)17:30〜(於:当協会6階CDE会議室)
講 師 :救仁郷 豊 氏(東京ガス(株)原料部LNG室 室長)
テーマ :「エネルギー供給における天然ガスの役割と将来展望」〜安定供給に向けたサハリン沖LNGプロジェクトへの期待〜
講演趣旨:先月号をご覧ください。(講演終了後懇親立食パーティ)    
会 費:3000円(非会員5000円)(当日受付にて申し受けます)
申込要領:FAXで事務局へお申し込み下さい。申込多数の場合は先着順で締め切らせていただきます。
        地下開発利用研究センター 事務局 中村 (TEL:03-3502-3671/FAX:03-3502-3265)


□国内見学会のご案内


 お待ちかねの当センター恒例行事である国内見学会の詳細が決まりました。今年は関西方面の施設見学を行ないます。
各企業の窓口担当者には9月初旬にご案内状をお送りいたしております。

期日:平成15年11月12日(水)〜11月14日(金) 2泊3日   定員:40名
見学先:関空2期空港島埋立工事、国立国会図書館関西館、RITE本部、大阪港夢洲トンネル工事、淡路島野島断層記念公園、大塚国際美術館、石油ガス国家備蓄倉敷基地工事(羽田空港集合、JR東京駅解散)

参加費:93,000円(航空&JR運賃、バス代、宿泊費、食事代を含む)
連絡・問合せ先:地下センター白鳥、中村(TEL:03-3502-3671/FAX:03-3502-3265)



舌句雑感:"被害者の親の責任は?"先日の長崎の幼児誘拐殺人事件で、加害者の親の責任を問う声が多かったが、被害者の親の責任について述べたメディアには私はお目にかかれなかった。普通、幼児を親の目の届かない場所にいかせるだろうか。それによって今回の事件は起こったわけで、親の責任というなら、気の毒ではあるが、パチンコに夢中になって子供を車に置き去りにして死亡させた親とあまり変わらないのではと思うのだが。皆さん方はどう思われますか。                        (GECニュース編集者)