第171号/2003.12
■エンジニアリングシンポジウム2003開催報告 地下開発利用研究センターの平成15年度第四回「高効率熱電変換システム実用化推進委員会」(略称;熱電推進委員会)が11月4日(火)に当協会7階会議室において開催されました。
1.高効率熱電変換システムの開発事業
「高効率熱電変換システムの開発」は、「革新的温暖化対策技術プログラム」の中のプロジェクトとして位置付けられ、平成14年度は国の補助事業として、平成15年度以降はNEDO技術開発機構助成事業として5年計画で開発を進めています。
本事業はエネルギー有効利用の観点から、民生および産業の分野から発生する未利用の熱エネルギーを熱電変換システムによって電気エネルギーとして利用する技術の開発を目的し、熱電変換モジュールの開発並びに、熱電変換システムの開発を行っています。
2.熱電推進委員会の役割・メンバー
本委員会では事業の推進にあたり、当センター並びにセンター会員企業6社(石川島播磨重工業株式会社、宇部興産株式会社、株式会社エコ・トゥエンティーワン、株式会社小松製作所、株式会社東芝、ヤマハ株式会社)の研究開発について審議、助言を頂くものです。
今回は柏木委員長(東京農工大学大学院生物システム応用科学研究科・教授)、藤田副委員長(東京海洋大学海洋工学部・教授)を始め、関連分野の専門家委員、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構ナノテクノロジー・材料技術開発部から寺本主任研究員以下2名、経済産業省製造産業局非鉄金属課の青山課長を始めとして、同課並びに同省産業技術環境局研究開発課から5名の来賓が出席されました。
3.議事内容
NEDO技術開発機構寺本主任研究員・当協会大関常務理事の開会挨拶、柏木委員長並びに青山課長の挨拶の後、梶川プロジェクト・リーダー(湘南工科大学副学長・教授、当協会顧問)より本年度下期計画について説明があり、引き続き審議が行われました。
委員長始め各委員より、多岐にわたる貴重なご意見・ご助言を頂き、プロジェクトの下期重点活動計画について承認されました。
会 議 風 景
11月12日〜14日にかけての3日間、地下センター恒例行事である国内見学会を、大関常務理事を団長とし総勢30名の参加を得て行いました。
今年は関西、岡山方面の地下関連施設を主な視察先に選定し、羽田から関空に飛び、関空2期空港島工事を皮切りに、国立国会図書館関西館、RITE本部、大阪港夢洲トンネル工事、舞洲清掃工場、淡路島震災記念野島断層、大塚国際美術館、石油ガス国家備蓄倉敷基地工事及び最後に倉敷美観地区を見学しました。
又、3日間の視察を通じて、さまざまの業種からの参加者同士の親睦も深まり、大変有意義な見学会となりました。
第1日目
□関空2期空港島埋立工事
羽田から関空に到着後、直ちに2期工事の見学ホールに行き、担当の女性から、2007年開港を目指す4000mの滑走路を含む空港島の埋立方法、1期との関連等の説明を受けました。写真で示すように、カーペットの床に空港の完成予想図が描かれており、非常に理解しやすくなっていました。又、天気が良く、ガラス張りの室内から大阪湾を一望できました。
埋立には2.5億m3の土砂が必要ということで、見学時には412fの陸化が進み、75%の進捗でした。又、最終の沈下予測は18mにも達するとのことでした。
その後、バスで現地に移動し大林組栗田所長以下4人から説明を受け、見学櫓にも登りましたが、風が大変強かったのが印象的でした。
□国立国会図書館関西館
国立国会図書館関西館は、昨年10月に東京本館をサポートする目的で京阪名学術都市にオープンした地下4階、地上4階の、地上にはガラス張りの建物だけという地下利用・環境に配慮したモダンな建物で、特に電子図書館サービスに力をいれています。
当日は、総務課の柴谷さんから、まず会議室で説明及びビデオを見せてもらい、その後2班に分かれて地下の自動書庫、資料搬送施設及び閲覧室等の見学を行いました。
巨大な書庫の連続、ゆったりとして落ち着いた雰囲気の閲覧室、隅々まで掃除が行き届いた館内等に圧倒されるほどの感激をうけました。
□RITE本部
RITE本部は国会図書館のすぐそばにあり、当協会の石油センターと共同で、二酸化炭素の地下貯留の研究を行っています。
当日は、会議室で日高常務理事の挨拶、RITE概要紹介のあと、管理チームの大岡さんから光発電設備他の施設紹介があり、その後本館、別館の研究室等の施設について案内を受けました。
特に、水野主席研究員からの模型も使った二酸化炭素貯留関連研究の説明は面白く拝聴しました。
第2日目
□大阪港夢洲トンネル工事
夢洲トンネル事業は、総工費3000億で咲洲と夢洲の両地区を結ぶ鉄道と道路併設の海底トンネル(沈埋トンネル工法)と陸上トンネル(開削工法)を整備するもので、今回は咲洲側で大林組他の7JVで施工中の咲洲側アプローチ部躯体等築造工事の現場見学を行いました。
まず会議室で森上所長他から工事概要の説明を受けました。5段切梁に成500のH鋼を大量に使ったため大阪から500Hが姿を消してしまったそうです。
掘削に伴う計測管理も、計測点の多さ、測定項目の多さ等にびっくりしました。お金はかかるが、隣り合う工区での先行掘削による危険防止には役立っているとのことでした。
その後、他社の工区も含めた現場を案内していただきましたが、実際に見る5段切梁、1500Фの鋼管土留壁柱列等のスケールの大きさには圧倒されました。
そのあと、舞洲に渡り車窓から子供が喜びそうなカラフルな奇抜なデザインで有名な舞洲清掃工場(大阪市環境事業局舞洲工場)を見学しましたが、大阪的やなという印象を持たれた方が多かったようです。
□淡路島震災記念野島断層
改めて阪神・淡路大震災 の被害の大きさを目のあた りにしました。
メモリアル ハウスの被害、特に台所の 惨状には恐怖を感じざるを えませんでした。
□大塚国際美術館
大塚国際美術館は国立公園の景観保護の観点から、鳴門市の大毛島の山腹を利用して作られた地下3階、地上2階の世界初の陶板名画美術館で、原寸大の1074点の名画で有名です。実際、道路から見ると入口しか見えませんでした。
当日は、まず総務部の長村課長の案内で中央監視盤室、機械室の氷蓄熱槽及び屋上の氷蓄熱空調設備機器(下写真)を見せていただきました。年間900万の電気代の節約になっているそうです。又、いろいろな省エネの工夫も実施されており、関心いたしました。
その後、山田顧問の案内で、館内の名画中の名画を見せていただきました。薀蓄に富んだわかりやすい解説で、非常に理解が深まりました。
特に今回は開館5周年記念ということで、「最後の晩餐」の修復前と後の作品が並べられており、貴重な経験を得ることができました。入場料3000円は少し高いと思われるかもしれませんが、機会をみて行かれることをお勧めします。
第3日目
□石油ガス国家備蓄倉敷基地工事
倉敷備蓄基地は、40万トンのプロパンガスを地下約180mの岩盤を掘削した貯槽に常温高圧貯蔵するもので、平成21年操業開始を目指していますが、今回の見学時は、アプローチトンネルを約150m掘っているという状況でした。
まず会議室で、倉敷事業所須知所長、施工JVの瀬田所長等から工事概要の説明を受けました。
トンネル掘削時のずりを道路を使って搬出でない、近隣対策でしばらくは発破作業ができないとかの苦労がよく理解できました。その後、実際のトンネルの現場の先端まで行きましたが(下写真)、底辺10m、高さ7.5mのかまぼこ型の巨大さに圧倒されました。事務所に帰る途中で、ずり積出桟橋を見学しました。絶好の天気で水島コンビナートの雄大な風景を眺めることができました。
□倉敷美観地区
倉敷アイビースクエアで昼食後、倉敷美観地区をそぞろ散策し、見学会も無事終了しました。
アンケートを見ましても、楽しかった、来年も必ず続けてほしいとの声が圧倒的でした。
最後に、今回の見学会に対して、各方面からの多大なご協力をいただきました。その関係者の方に改めて感謝するとともに厚く御礼申し上げます。
(技術開発第1部 白鳥 記)
当協会の恒例事業であるエンジニアリングシンポジウム2003が,11月6日(木),7日(金)の2日間にわたり大手町サンケイプラザにおいて盛大に開催されました。
今年のエンジニアリングシンポジウム2003は、当協会設立25周年記念の意味合いも込めて、「動こう!未来へー新たな社会システム構築への挑戦―」を 統一テーマとして、初日には招待講演、特別講演、パネルディスカッション、2日目には、「次代をリードする企業活動とイノベーションの仕組みづくり」、「住みよい社会づくりへの課題と展望」,「新時代の国づくりと技術展望」をテーマに3つのセッションに分かれ、より具体的、実務的な関心に応える講演が行なわれました。全講演終了後に恒例の講演者、シンポジウム参加者相互の交流と親睦の場である交流会が開かれ、いたるところで交流と親睦が交わされ、実りの多いシンポジウムとなりました。
初日は、広瀬俊彦理事長の挨拶を皮切りに、今回の実行委員長を務められた原嶋孝一富士電機且キ行役員常務の挨拶の後、御手洗富士夫キャノン且ミ長による「変化は進歩―キャノンの経営戦略とその実践」のテーマの招待講演が約600人の聴衆を前に行なわれました。1995年に社長になってからの目覚しい改革の成果を示し、本当のグローバルエクセレントカンパニーを目指し、自ら変身して挑戦を繰り返し、前進し続けると力強く語られました。午後一番は、宇宙飛行士で日本科学未来館館長の毛利衛氏による「宇宙からの視点〜ユニバソロジの世界観」の特別講演が行なわれました。宇宙から見た青い地球の映像が印象的でした。
引続き「エンジニアリング産業に活を入れるー動こう!未来へー」をテーマとしてのパネルディスカッションが、小宮山宏東京大学副学長をコーディネータとして、4名のパネリスト(岡本章鹿島建設鰹務取締役、関誠夫千代田化工建設且ミ長、永田雄志三井物産鰹務執行役員、柘植綾夫三菱重工業鰹務取締役により、「エンジニアリング産業がんばれ!」との活発な討論が行なわれました。
2日目は、A会場「次代をリードする企業活動とイノベーションの仕組みづくり」、B会場「住みよい社会づくりへの課題と展望、C会場「新時代の国づくりと技術展望」のテーマのもと、各会場に多くの聴衆が詰めかけ、大盛況の講演が繰り広げられました。
10月29日(水)、独立行政法人 国立環境研究所化学物質環境リスク研究センター長の中杉修身先生をお招きして、「土壌汚染対策法について」ご講演頂きました。
中杉先生は2003年2月15日に施行された「土壌汚染対策法」制定に深く関われた方で、ご専門の立場から、法制定にいたる背景や法律の特長、リスク評価から制定された基準値設定のバックグラウンド、海外の法律との関係等々に関し、幅広く、またわかりやすく講演いただきました。
地下及び地下水環境専門部会では委員会活動の一環として土壌地下水汚染問題および地下水流動保全問題を対象に、現状認識、対策技術、今後の課題等について調査をしており、特に土壌地下水汚染に関するワーキンググループでは、汚染に関する実態調査として「土壌汚染対策法」の内容調査をはじめ、法律が企業や不動産に与える影響、地方と地方自治体の条令等との関係について調査中で、この度の講演は大変参考になりました。
当日は、地下水環境部会メンバーを主に会員企業から約50名の参加があり、各企業の土壌汚染問題取り組みについての関心の高さが窺えました。
(前田 秀穂記)
講 演 会 風 景
□第261回サロン・ド・エナ開催のご案内
日 時 :平成15年12月17日(水)17:30〜(於:当協会6階CDE会議室)
講 師 :西田 享平氏(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構参事・ナノテクノロジー・材料技術開発部長)
テーマ :「日本の産業を牽引するナノテクノロジー」〜ナノテクノロジーの現状と将来展望について〜
講演趣旨:ナノテクノロジーは、21世紀をリードするキーテクノロジーといわれ、材料、エレクトロニクス、情報通信、環境・エネルギー、バイオ、創薬・医療などの幅広い分野でブレークスルーをもたらすとの強い期待が寄せられています。また、企業においても、今後の事業展開を図るうえで、ナノテクノロジーを抜きに考えると大きなビジネスチャンスを見逃す惧れありとの認識が次第に高まりつつあります。
今回の講演では、企業における事業展開という視点で、ナノテクノロジーの最新の技術の紹介、産業化の考え方、および現在の研究開発が目指す未来像はどのようなものかについてお話を伺います。
(講演終了後懇親立食パーティ)
会 費:3000円(非会員5000円)(当日受付にて申し受けます)
申込要領:FAXで事務局へお申し込み下さい。申込多数の場合は先着順で締め切らせていただきます。
地下開発利用研究センター 事務局 中村 (TEL:03-3502-3671/FAX:03-3502-3265)
* 地下センターのホームページ(http://www.enaa.or.jp/GEC/)の「お知らせ」の「催物案内」から直接
申込みもできます。
□「危険物事故防止対策論文」募集案内
昨年に引続き、危険物保安技術協会が、消防庁と協力し、危険物施設における火災・漏洩等の事故が増加していることを憂慮して、危険物事故防止対策論文を募集中です。消防庁長官賞(賞状及び副賞20万円)他の賞も用意されています。力作をふるってご応募ください。募集締切は平成16年2月16日です。
なお詳細につきましては、危険物保安技術協会のホームページの「第3回危険物事故防止対策論文募集」をご覧ください。
(http://www.khk-syoubou.or.jp/)
舌句雑感:"ああー!東京と大阪は・・・"東京の電車の中では、携帯はマナーモードで、シルバーシートの近くでは電源を切るというのが一般的だが、大阪の阪急電車では、だいぶ前から先頭と最後尾の車両のみ完全に電源を切る、その他の車両では自由という風に変更している。元々、心臓にペースメーカーを入れている人に悪影響を及ぼすからという理由で携帯の使用に制限を加えたわけで、マナーモードでは相変わらず電波が出ているわけで悪影響は残っている。東京の考え方は規制の理由を、「やかましさの防止」にすり替えている。■大阪の考え方は、どうせ全車両に徹底できないのなら、目の届きやすい車両に絞って、そこだけは徹底しようという考え方だと思う。■又、シルバーシートも徹底されなかったので、大阪では、それなら全席をシルバーシートにすればよいのではということでそのように変更している。筆者も、茶髪のピアスをした男の子が、他の人に率先して老人に席を譲ったのを目撃している。横浜の地下鉄も12月から全席シルバーシート化に踏みきった。パスネットの1区運賃先取りの悪しきスタイルもいまだ改善されていない。■大阪人である筆者は、どう考えても大阪流の考え方のほうが合理的だと思うのだが、東京人としては、どう思われますか。□2001年8月号から編集に携わってきましたが、来年の1月号から新しい人にバトンタッチすることになりました。これまでのご厚情に厚くお礼申しあげます。また、新しい視点からの舌句雑感にご期待ください。
(GECニュース編集者) |