第196号/2006.1
■二酸化炭素地中貯留技術研究開発・全国賦存量調査WG 中間報告
■地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用システム実現化の調査研究 第2回委員会報告および講演会開催報告
![]() |
経済産業省地域経済産業審議官 奥田 真弥 |
平成18年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。新しい年の門出にあたり、地域経済産業政策に対する所感を述べさせていただきます。我が国経済は堅調な国内民需に支えられ、緩やかに回復しております。しかし、回復の度合いには地域間でばらつきがあり、また、原油価格高騰の影響も地域によっては大きく、引き続ききめ細やかな対応が必要です。加えて、今後の人口減少・少子高齢化の急進展に備えて、地域経済の構造改革を早急に行うことが必要となってきております。このため、地域経済産業グループとしては、全国8つの地域経済産業局、沖縄総合事務局経済産業部と一体となって、以下のような取組を中心に、活力ある自立した地域経済の構築に向けた地域の努力を支援してまいります。
第一に、地域において新たなイノベーションと新事業やベンチャー企業が続々と生み出されるような産業集積の形成を目指し、「産業クラスター計画」を推進してまいります。「産業クラスター計画」は、地域の産学官の間で人的ネットワークを形成し、各地域に競争力のある産業集積(産業クラスター)の創出を目指すものです。平成13年の立ち上げ以来、満5年が経過しつつあり、これまでに全国19プロジェクトにおいて、約6,100社の中堅・中小企業と、約250もの大学の参加の下、今年度末で4万もの新事業の創出が見込まれる等、成果が着実に現れてきております。今後、次の5年間を「産業クラスター計画」の第2期ととらえ、プロジェクト毎の目標とこれを達成するための戦略などを明確化した「個別計画」及び、それに基づく「全体計画」を策定し、更に取り組みを強化してまいります。また、いわゆるPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを大事にし、進捗状況を厳しく評価して、計画の見直しを行い、事業化にいたる成功例を増大させ、目に見える成果をあげることを目標としていきます。「産業クラスター計画」により、地域発の世界に通用する企業や事業が多数生み出され、我が国の国際競争力強化に大いに貢献することを期待しています。
第二に、今後、少子高齢化・人口減少が進展する中で、地域の自立化につながる地域産業の活性化を効果的に支援していきます。昨年12月に公表されました地域経済研究会(座長:大西隆 東京大学教授)報告では、今後、人口減少・少子高齢化が進展する中で、2030年の地域経済の将来像について、全国で300弱の都市雇用圏毎に、人口、域内総生産等を展望しています。報告によれば、今後、多くの都市雇用圏において人口、域内総生産が減少し、この結果として、@歳入が減少する、A生活・産業関連の各種インフラ(住宅、学校、公民館、工業用水など)の利用頻度が減少して遊休化し、一方、維持管理、補修コストは継続的に増加する、Bこのため、地方財政が圧迫される、C空き店舗、工場跡地、耕作放棄農地や遊休化した公共インフラが、中心部から郊外にかけた広いエリアにまばらに点在するような使いにくい都市構造へと変貌する、といった現象が生じるおそれが指摘されています。この傾向は、いわゆる地方中小都市を中心とする都市雇用圏において、強く出てきます。このため、報告では、複数市町村が連携し、総合的・計画的な地域経営を推進すること、また、国としても地域と協働していくことの必要性を強調しており、各地域の今後の取組とそれと協働する国の政策次第では、その将来像を大きく変化させることが可能であると指摘しています。こうした問題意識の下、本年1月から、「少子高齢化時代の地域活性化検討委員会」を開催し、具体的に取り組むべき課題とその処方箋について検討し、本年春を目途に、検討結果をとりまとめ、早急に具体的施策として実行に移していきます。
第三に、以上のようなことを実現していくためにも、地域経済産業グループの職員一人一人が地域経済のプロとして、地域経済の施策について何でも知っている、何でも相談に乗ることができるという「ワンストップショップ機能」を果たしていくことが重要です。全国各地で産業振興を行っている自治体、民間企業、支援機関、大学等の方々に対して、ワンストップ的サービスを提供し、地域の良きパートナーとして地域の皆様とともに地域経済を盛り上げていきます。最後になりましたが、地下開発利用研究センターにおかれましては、会員の皆様の幅広い英知を結集し積極的な研究活動、技術開発に取り組んでいただき、一層の発展に寄与されることを祈念いたしまして、新年の御挨拶とさせていただきます。
■第282回サロン・ド・エナ 開催報告■
□ JR地下水を都内河川の環境改善に活用した成功例□
恒例の第282回サロン・ド・エナは、12月21日(水)17時30分から東京都環境局
飯田 輝男氏、東日本旅客鉄道株式会社 清水 満氏、お二人をお招きして開催しました。 近年、東京都内では地下水位の上昇に伴って、地下水揚水抑制時に造られたインフラへの影響が顕著に出ており、そのメンテナンスに大きな支障をきたしています。こういった状況をJR東日本のメンテナンスコスト削減と東京都環境局が進める水環境改善が見事にコラボレーションした事例を紹介していただきました。その事例は、武蔵野線国分寺トンネルの湧水利用による野川、総武線馬喰町駅付近からの湧水を立会川へ放流、上野地下駅から不忍池へ放流などをあげられ、効果として、水質浄化、そして生態系の復活など自然へ回帰する大きな環境改善効果をも たらしています。 今後の地下水上昇による様々な影響や改善策、環境問題を前向きに捉えて水質改善に取り組む東京都環境局の姿勢と今後の展望など非常に有意義で面白いお話をしていただきました。質疑応答も活発に行われ盛況のうちに散会となりました。 |
|
盛況となったサロン・ド・エナ風景
|
■二酸化炭素地中貯留技術研究開発・全国賦存量調査WG 中間報告■
6月に設置した二酸化炭素地中貯留推進室は、各WGとも順調に検討が進んでおります。地下センターが担当している全国賦存量調査WGは、主に二つのミッションを担っており、平成5年度に調査した全国賦存量の見直しと大規模排出源近傍の地中貯留可能量を検討しています。
11月2日(水)12時から、第2回研究推進委員会(RITE主催 委員長:田中 彰夫、東京大学 教授)が、航空会館で開催され、全国賦存量調査WGは、平成5年の賦存量を見直し、カテゴリーの呼称変更と賦存量算定の見直しを提案し、活発な質疑応答と貴重なご意見をいただきました。ご意見を整理し現在修正中です。また、大規模排出源については、東京湾・伊勢湾・大阪湾・北部九州の4地域を選抜して地中貯留対象となる地層の既存データを整理して貯留可能量を検討しています。3月に開催予定の研究推進委員会に向けて毎週検討会を開催し、熱心で活発な討議をしています。
![]() |
平成17年度第3回「高効率熱電変換システム実用化推進委員会」(委員長
柏木孝夫氏、東京農工大学大学院教授)が12月19日(月)に鰹ャ松製作所(以下コマツ)研究本部(平塚)において開催されました。 来賓としてご出席いただいた経済産業省製造産業局非鉄金属課ナノテクノロジー・材料戦略室 多井 豊産業技術企画調査員からは、「10月31日(月)開催の熱電発電フォーラムは、熱電変換技術の普及のために有意義であったと評価している。熱電変換技術は、人類共通の問題解決に貢献するものであり、策定中の第3期科学技術基本計画における「成果の国民への還元」という方針にも合致しており、今後重要性が増すと考えられる。」とのご挨拶をいただきました。 また、柏木孝夫委員長からは、「改正地球温暖化対策推進法が成立し、企業は温暖化ガス排出量の報告を義務付けられることになる。熱電変換技術はエネルギー回収によりCO2排出削減に貢献するものであり、今後の開発にはずみがつくと思われる。一段と開発に力を入れていただきたい。」とのご挨拶をいただきました。 今回の委員会では、通常の議事に先立ち、コマツにおける熱電変換モジュール及びシステムの開発状況について同社 佐野主任研究者よりご説明いただき、実証装置等の見学を行いました。ついで、当プロジェクト参加各社における熱電変換モジュール・システムの開発状況、事業性・用途調査分科会、性能評価技術分科会の各分科会活動状況、さらに、「熱電発電フォーラム」のアンケート調査結果について報告が行われ、各委員より貴重なご意見をいただきました。 |
実証実験装置の見学
|
■地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用システム実現化の調査研究■
□第2回 委員会報告および講演会開催報告□
平成17年度第2回「地域産業活性化を目指した水素エネルギー供給利用システム実現化の調査研究」委員会(委員長:松下 潤、芝浦工業大学教授)が、11月21日(月)エン振協・会議室で開催されました。平成17年度調査研究中間報告、今後のスケジュールなどが審議されました。作業部会(部会長
松下 博文、(株)大林組)からの調査研究中間報告では、全国13ヶ所のプロジェクトを調査したが、実施段階に至っているのは青森県・八戸市のみであることが報告され、又、参加委員からは、地域産業の副生水素について、水素製造コスト、水素供給サイドの現状説明があり貴重な助言をいただきました。次回委員会を@年度末のまとめ、A来年度の計画、を中心に来春2月に開催することとなって散会しました。当委員会主催の講演会を下記のテーマで開催しましたのでご報告します。
□地域における水素エネルギープロジェクトの取り組み□
地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用システム実現化の調査研究委員会は、新エネルギー(水素)を総合的な観点で利用するため、水素のローカルネットワークシステムを製造・貯蔵・利用の面から検討して、水素社会の課題を把握し、水素利用のモデル提案へ向けた調査研究を行っています。
今回活動の一環として、12月2日に「地域における水素エネルギープロジェクトの取り組み」と題して、金田武司氏((株)ユニバーサルエネルギー研究所 代表取締役)をお招きし、金田氏が推進してきた「八戸市 水の流れを電気で返すプロジェクト」を中心に講演して頂きました。このプロジェクトで地域住民に直接関わりをもって推進してこられた金田氏は、水素エネルギーの供給利用、エネルギーセキュリティー、プロジェクトの立ち上げなどについて、貴重な体験談を含んでお話をされ、大変意義のある講演会となりました
■会員の皆様へのお知らせ■
□ 第283回サロン・ド・エナ開催のご案内
日 時:平成18年1月18日(水)17:30〜20:00(於:当協会6階C,D,E会議室)
講 師:長澤 仁志 殿 日本郵船株式会社 LNGグループ グループ長
米澤 寛 殿 同上 LNGグループ兼エネルギー船管理グループ グループ長代理
テーマ :「LNG安定供給を支える海上輸送」
−世界最大級のLNG商船隊を運行する日本船社の現状と将来展望−
講演要旨: 環境問題への世界的な関心の高まり、さらには従来パイプラインで供給していた天然ガスの
不足を解決するため、クリーンエネルギーLNGの需要が急激に伸長している。全世界では、1億2325万t(2003年実績)のLNGが生産され、わが国には、その約半分の5823万tが輸入されている。2020年には、3.7倍の4億5650万tへと今後生産が急増することが予想されている。世界のLNG輸送を担い、エネルギー安定供給を実現するわが国の海運業界が急増するLNGの輸送需要にどのように対応しようとしているのか。また、LNGの海上輸送の安全運行・環境対策へどう取り組んでいるのか。そのご苦労と海運業界から見たLNG取引についてお話を伺う。
(講演終了後、懇親立食パーティがあります。)
会 費 :3,000円(非会員5,000円)(当日受付にて申し受けます。)
申込要領:申込多数の場合は、先着順で締め切らせていただきます。
地下センターのホームページ(http://www.enaa.or.jp/GEC/)から直接申込みができます。
□ 第11回地下空間シンポジウムのご案内
「時代の求める地下空間とは」
健全で豊かなゆとりのある地下空間を現実のものとするために、土木工学のみならず、都市計画、建築、法律、医学、心理学、福祉、さらには芸術、経済学の分野までをも包含・総合化した"地下空間学"の確立を目指し、下記要項で開催いたします。
● 主 催:土木学会(担当:地下空間研究委員会)
● 後援 予定:国土交通省、エンジニアリング振興協会地下開発利用研究センター、都市地下空間活用研究会、日本建築学会、日本都市計画学会、地盤工学会、日本応用地質学会、資源・素材学会
● 日 時:2006年1月11日(水)9:15〜17:15(予定)
● 場 所:早稲田大学国際会議場(〒169-0051 新宿区西早稲田1-20-14 TEL:03-5286-1755)
● 参 加 費:8,000円
● 定 員:250名(先着順)
● 申込 締切:2006年1月4日(水)【必着】
http://www.jsce.or.jp/journal/kaikoku/m200511/04.htm
舌句雑感:明けましておめでとうございます。いよいよ2006年の幕開けです。今年はどんな年になるでしょうか?年の瀬は、耐震不足問題で大揺れでしたが、小泉政権もあと残り9ヶ月となって、また、日本列島が揺れるのは、必至です。郵政民営化を成し遂げた小泉政権ですが、消費税、アジア外交を先送りしたままで後継者へ引き継ぐことになります。ところで団塊世代が大量に退職を迎える2007年問題は、待ったなしです。GDPを16兆円押し下げて景気後退となるのか?はたまた、景気回復を増大させるか?団塊世代の持つ匠の技術、培ったノウハウは?どう次世代へ引き継ぐのか?少子化へ向かう日本の近未来は?楽観的な見通しは皆無ですゾ。さぁ、気を引き締めて2006年を乗り越えましょう!ワン!2、3!ダッー!・・・・・・・・・・・・・・・・・・(GECニュース編集者) |