第198号/2006.3

■ 土壌環境汚染計画モニタリング機械システムに関するフィージビリティスタディ第3回委員会報告

■地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用システム実現化に関する調査研究 現地調査報告

■上野地下歩行者専用道路及び上野広小路駐車場工事現地調査報告

「二酸化炭素地中貯留」国際ワークショップ 

会員の皆様へのお知らせ

 ・ 第284回 サロン・ド・エナ
 
 ・平成17年度 日帰り見学会 見学先紹介




■ 土壌環境汚染計測モニタリング機械システム開発に関するフィージビリティスタディ■

□ 第3回委員会 報告□            


平成17年度、第3回「土壌環境汚染計測モニタリング機械システムに関するフィージビリティスタディ」委員会(委員長:香川喜一郎、福井大学教育地域科学部教授)が、2月16日(木)にエン振協会議室で開催され、1年半にわたったスタディの研究成果に対して、活発な議論が行われました。

1.研究概要
 土壌汚染は、産業界における重大な社会問題のため多発する問題に対し、従来の試料の化学分析とは異なり、結果判明までの時間を短縮可能な迅速・簡易分析技術が望まれています。その一つに、現地で汚染の概況を迅速に判定できるシステムの実用化が挙げられます。本研究は、土壌汚染のうち、特に重金属汚染に着目しオンサイト・リアルタイム測定技術の開発に向けて、レーザープラズマ分光分析法の適用可能性を明らかにすることを目的として実施したものです。 

2.研究成果
 昨年度の模擬汚染土壌試料による基礎研究をもとに、今年度は重金属の検出感度の向上、土壌の種類・含水による影響を軽減するための手法の構築を目指して、模擬汚染土壌ばかりでなく、実汚染土壌試料も入手して室内実験を行った。その結果、以下の成果が得られました。
@  重金属汚染事例の80%以上を占める重金属種(鉛、クロム、水銀、ヒ素)について、汚染指定基準値以下の含有量を検出できる基礎技術が実現した。
A  砂質土、粘性土など土壌の種類、また含水の状況に左右されることなく、現地で迅速な分析が可能な手法を確立した。

3.今後の展開
 国内外ともに土壌汚染計測のためのレーザー分光技術は実用化されていません。その中で、環境基準値をクリアする分析技術(10〜100mg/kgの検出感度;ただし元素により異なる)を開発した意義は大きいものといえます。今後、得られた知見を産業界・社会に還元すべく、本汚染分析システムの実用化を目指していくことが出来れば幸いです。
本調査研究は、財団法人 機械システム振興協会からの受託により実施したものであり、ここに深く謝意を表します。


 

 
レーザープラズマ分光分析法の概念図
委員会開催風景

 




■地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用システム実現化に関する調査研究」■


□現地調査報告□

地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用システム実現化に関する調査研究」の作業部会(部会長 山下博文 (株)大林組)は、平成18年2月16日(木)、17日(金)の二日間、青森県の下記施設の現地調査を行いました。

1.新エネルギー等地域集中実証研究 
このプロジェクトは、八戸市・八戸東部終末処理場から発生するバイオガス(汚泥消化ガス)を燃料とするガスエンジンにより、電力を「市庁舎本館」「市内小中学校(4校)」「企業団旧庁舎」に供給するもので『八戸水の流れを電気で返すプロジェクト』とネーミングし、NEDOの補助事業で実証研究(平成19年まで)を行っているものです。この実証研究は、もうひとつ木質ボイラーによる熱とガスエンジンの排熱を東部終末処理場に供給するシステムも併設されています。

2.原子燃料サイクル施設 
翌日17日(金)は、青森県上北郡六ケ所村の原子燃料サイクル施設を調査しました。PRセンターでガイダンスを受けた後、原子燃料サイクル施設の施設内を見学させていただきました。現在は、平成19年の操業開始に向け若手エンジニアを実地訓練中であり、グループ単位で真剣に実施訓練を受けている様子が窺えました。

新エネルギー等地域集中実証研究施設

 


 



■上野地下歩行者専用道路及び上野広小路駐車場工事■


□現地調査報告□

 ASCE(アメリカ土木学会)日本支部の主催する見学会で標記の工事を見学する機会を得ました。上野地下歩行者専用道路および上野広小路駐車場は、平成12年12月に着工し、平成19年2月に竣工の予定です。この地下歩行者専用道は、既存の上野地下通路と都営大江戸線のコンコースを結ぶもので、これにより、JR・京成線・銀座線および日比谷線上野駅、JR御徒町駅、日比谷線仲御徒町駅、大江戸線上野御徒町駅、銀座線上野広小路駅の8駅が接続する歩行者ネットワークが形成されるものです。

 また、300台の上野広小路駐車場は、路上駐車の減少と上野広小路の道路交通の円滑化、来街者の利便性向上、地域の活性化を目的として併設されます。工事状況は、上部交通路を遮断することなく覆工開削工法が使われ、50%程度の進捗状況にあるとの説明がありました。上野広小路通りの地下は、地下鉄銀 座線はじめ上水道、下水道幹線、東京電力・電線管路、NTT通信管路と重要地下構造物が縦横に走っている要所に当たり、その施設一つ一つの機能を止め ることなく防護しながら慎重に掘削工事が進行しています。

  珍しいのは、地下鉄銀座線の上部床版と側壁が露出して地下鉄トンネルが外から見ることが出来ることです。銀座線トンネルは、箱型で敷設されて以来80年、今日まで劣化も少なく健全に維持管理されているのには、感心しました。本工事では、外周(上部床版、側壁)を鉄筋コンクリートで補強しながら工事を行っています。1日当たり10万台以上の交通車両と周辺来訪者のあふれる道路下で、綿密な工事計画のもと慎重に施工に取組む工事関係者の方々は、非常に頼もしく感じました。
完成イメージ断面図





 


■「二酸化炭素地中貯留」国際ワークショップ■

〜世界の動向と長岡プロジェクト〜

 平成18年2月20日(月)〜2月21日(火)の二日間にわたって「二酸化炭素地中貯留」国際ワークショップが、虎ノ門パストラル「葵の間」にて盛大に開催されました。これは、(財)地球環境産業技術研究機構(以下RITE)が主催し(財)エンジニアリング振興協会(以下ENAA)の共催で実施されたものです。
 
  1日目は、RITE研究所長 茅 陽一氏の開会挨拶に始まり、経済産業省産業技術環境局環境交渉官 山形浩史氏より来賓の挨拶がありました。
その後、招聘者講演としてPaul Freund氏(前IEA-GHGディレクター)による「International Developments in Geological Storage of CO2」、続いて赤井 誠氏((独)産業総合技術研究所エネルギー技術研究部門グループ長)の「経済産業省の超長期エネルギー技術ビジョンとCCS技術の位置付け」と題した講演を皮切りにして300人以上に及ぶ熱心な聴衆を集めて開始されました。

 午後には、Edward Rubin氏(カーネギーメロン大学教授)、Arthur Lee氏(シェブロン社シニアアドバイザ)、Howard J.Herzog氏(マサチューセッツ工科大学主席研究員)の講演を交え、「長岡プロジェクトに関わる研究成果」をRITE大隅多加志氏、友田利正氏、秋元圭吾氏より発表がありました。この中で平成17年度全国賦存量調査WGで検討された構造性帯水層の理論的最大貯留可能量が報告され注目を集めました。

 2日目となった翌日も、盛大なうちにワークショップが展開されました。先ず、午前中に招聘者講演としてDon White氏(NRCリサーチサイエンティスト)、Susan Hovorka氏(テキサス大学主任研究員)、Nick Riley氏(英国地質調査所マネージャー)の講演があり、午前に引続き「長岡プロジェクトの研究成果」が、棚瀬大爾(ENAA/SEC研究主幹)、薛 自求氏(RITE)、他4名の研究員からプロジェクトの研究成果が詳細に報告されました。
 
  続いて松岡 俊文氏(京都大学 大学院工学研究科 教授)を座長として海外の招聘者を交えたパネルディスカッションに移り、ENAAがRITE分室として平成12年度から長岡で進めてきた実証実験について出席者から高い評価が得られました。聴衆は耳目を集中し熱心な議論を聞き入るうちに時間が過ぎ去り、RITE主席研究員 村井重夫氏の今後の進め方に関する講演に続いて、最後に二酸化炭素地中貯留技術開発研究推進委員会 委員長の田中 彰一氏(東京大学名誉教授)の地球温暖化防止へのメッセージ(代読・RITE大隅多加志氏)が伝えられ盛大な拍手の中、閉会となりました。


 
開会挨拶(RITE研究所長 茅 陽一氏)
 
盛会となった会場風景


 


■会員の皆様へのお知らせ■

□ 第285回サロン・ド・エナ開催のご案内

日  時:平成18年3月15日(水)17:30〜20:00(於:当協会6階C,D,E会議室)
講  師:石井 彰 殿  (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
石油・天然ガス調査グループ グループリーダー/主席エコノミスト

テーマ :「大きく変貌するアジア太平洋の天然ガス事情」
 講演要旨: 私たちの生活や経済活動は、エネルギーなしでは語れません。先年、経済産業省がまとめた2030年までの長期的なエネルギー需給見通しでは、化石燃料が依然中心的な役割を果たし、とりわけ環境面で利点をもつ天然ガスの需要が大幅に増加することが、謳われています。
昨今のアジア太平洋地域における天然ガスの動向を見ると、
@ これまでマイナーLNG市場であった大西洋圏のLNG需要の急拡大による大西洋圏LNGビジネスモデル
A価格の影響とアジア太平洋圏・大西洋圏とを両睨みする巨大な中東スイングLNG生産者の登場
B中国・インドと言う石炭ベース経済の巨大人口国のLNG市場動向
Cロシア・カザフ等からのパイプライン計画
などの大きな変貌が予想されることから、伝統的な日本の企業が形作ってきた日本モデルLNG市場が、今後大きく変更を迫られる状況になってきています。
本講演では、アジア太平洋圏を中心に、今後の世界における天然ガスの需給関係予想図について、直近のホットな話題も交えて話をしていただきます。 
(講演終了後、懇親立食パーティがあります。)

会 費 :3,000円(非会員5,000円)(当日受付にて申し受けます。)
申込要領:申込多数の場合は、先着順で締め切らせていただきます。
      
地下センターのホームページ(http://www.enaa.or.jp/GEC/)から直接申込みができます。


□平成17年度 日帰り見学会 見学先紹介

※日 時:平成18年3月9日(木)  
※行き先:
@東京電力・東西連係ガス導管新設工事 富津側立坑〜
本工事は、東京電力鰍ェ事業主となって東京湾を横断する2つ目のシールドトンネルを貫通
させたものです。この工事の特徴は、@超長距離掘進A高速施工B機械式地中接合工法が挙げられます。日本の土木技術の粋が結実した画期的な事例です。

A首都高速中央環状線SJ22工区(2-1)富ヶ谷出入口トンネル

本工事は、交通量の多い環状6号線(山手通り)富ヶ谷に設置される出入口トンネルを造るもので、現道4車線を確保して施工しています。2本のトンネルをつなぐためのパイプルーフ工法が画期的でかつ最先端の技術を使っています。拡幅部分の下部を曲線パイプルーフで繋ぐ世界初の珍しい工法で施工しています。また、拡幅部上部は、凍結工法を使用して地中防止、止水に万全を期しており、交通を妨げず、地下で黙々と進行する工事の迫力を直視します。


 


句雑感;ドラえもん・・・世界中の子供たちが誰でも知っているコミックヒーローは、日本のポップカルチャーのシンボルの一つです。彼の稼ぐ外貨は、想像を絶します。偉い!ところで彼のポケットから出てくる夢のグッズは、実現に近づいています。紙のテレビ・パソコン、腕時計型テレビ電話、GIS利用三次元地図etcが、もうすぐ手に取り、使えるようになります。ITが文化を後押しして、ユビキタス社会の到来が間近ですが、その一方で大深度地下もいよいよ本格化の兆しが見えてきました。今、話題の日本橋景観復旧の構想にも入るかも?・・・・・・ドラえもんの地底探検が現実になる日も近いなんて、ちょっと嬉しくなるような話じゃありませんか!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(GECニュース編集者)