第206号/2006.11

■エンジニアリングシンポジウム2006 報告

■平成18年度 国内見学会 報告

■会員の皆様へのお知らせ




■エンジニアリングシンポジウム2006 報告■
 
 今回で26回目を迎えたエンジニアリングシンポジウム2006が、10月19日(木)、20日(金)の2日間にわたり大手町サンケイプラザにおいて、約3500名の参加者を得て、盛大に開催されました。本年のエンジニアリングシンポジウム2006は、「未来に貢献するエンジニアリング」−構想力・実現力・人間力−を統一テーマに掲げ、初日には招待講演、特別講演、パネルディスカッション、2日目には、「未来を創る構想力」、「夢を形にする実現力」、「豊かな心を育む人間力」をテーマに3つのセッションに分かれ、タイムリーな内容で各講師から熱心な講演が行われました。     

 初日は、関 誠夫 理事長の挨拶を皮切りに、招待講演として町田 勝彦 シャープ椛纒\取締役社長による「シャープのオンリーワン経営」と題したテーマで講演していただきました。続いて、午後から月尾 嘉男 東京大学名誉教授の「転換する社会構造と変貌する産業理念」と題した特別講演がありました。

 引続き「未来を拓く構想力」をテーマとして、パネルディスカッションに入りました。毎日新聞社科学環境部記者の元村 有希子氏がコーディネーターとなって軽妙な司会のもと、パネリストとして坂村 健氏(東京大学教授)と岡部 憲明(建築家/神戸芸術工科大学教授)により活発でユーモア溢れる討論が展開され、会場の参加者も熱心に傾聴していました。

 2日目は、A(未来を創る構想力)、B(夢を形にする実現力)、C(豊かな心を育む人間力)と三つのセッションに別れ、各会場に多くの参加者が詰めかけ、再び大盛況となりました。今回は、大学との交流を広げ、人的育成の一助を目的として千葉工業大学や日本大学など大学生を招待し多数の参加があったことも特筆すべき出来事でした。また、海外からの参加も見られ国際的な一面を見せ始めています。各会場の講演テーマは、時流に沿ったもので、参加者の関心も高く、講師の熱心な講演に活発な質疑もあり、有意義で印象的なセッションとなりました。
 
  講演終了後には、実行委員長 村松 映一氏((株)竹中工務店 取締役副社長)の挨拶に引続き、来賓の経済産業省製造産業局次長 内山 俊一様のご祝辞をいただき、講演者を交えてシンポジウム参加者相互の交流と親睦の場として交流会が開かれました。和やかな雰囲気の中いくつもの交流の輪ができて、本年のシンポジウムも実りある大盛会のうちに終了しました。

招待講演 シャープ株式会社 町田勝彦氏
パネルディスカッション (左から 元村氏・坂村氏・岡部氏)

 




■平成18年度 国内見学会 報告■

 9月27日(水)から29日(金)の3日間に亘り、今回は、北海道方面を視察研修する平成18年度国内見学会を催行しました。会員相互の交流を深めることも出来、大変有意義な見学会となりました。
 帯広に降り立ち、最初の見学地、池田町に始まり、糠平湖、夕張、札幌、京極、最後の泊村と全走行距離約700kmを走破しました。延べ36名の参加者は、広大な北海道で元気一杯に予定箇所を巡り、無事帰京しました。
以下に各見学先の概要をご報告します。

1日目>


□十勝ワイン研究所
ワインの醸造施設として最適な地下醸成施設を
見学しました。ワインの風味は、安定した温度、湿度が必要であることが解り、ぶどうからワインまでの工程もつぶさに視察してきました。

□旧国鉄士幌線・橋梁群とトンネル
昭和53年まで操業していた旧国鉄・士幌線は、その面影を残す橋梁群がいくつも保存されています。豊富な森林資源を持つ大雪山山系で林業が栄えた嘗ての栄光も雨散霧消していますが、その産業で生まれた鉄道の悲哀を感じさせるとともに見事なアーチが風景を損ねることも無く忽然と姿を現す有様は、まさに幻想的です。必死に守ろうとする地元住民の願いが、胸に迫るものでした。残されている音更トンネルは、古式な「綾積」という石積を残し、永久凍土を貫いたトンネルとして貴重な土木技術の遺産でもありました。
参加者の皆さん (後方は第6音更川橋梁)


2日目

 


□夕張市・石炭博物館

夕張市が、保存している石炭博物館を見学しま
した。この施設の目玉は、地下にある坑道を当時の状態で見られることです。閉山に至るまでの石炭採掘の苦行や、嘗ての栄華を寂しくも誇らしげに全容を見せる博物館です。夕張市は、ご存知のように「破綻」という言葉で騒がれましたが、見学後、参加者の殆んどが、この石炭博物館を後世に残すべき施設であると訴えておられました。貴重な資料が、豊富に残る博物館でした。

□二酸化炭素炭層固定実験サイト
環境総合テクノス鰍ェ、夕張の保安林内で進めるこのプロジェクトは、地球温暖化防止の最新の技術の一つで、CO2を炭層に圧入して固定するとともに、炭層中でCO2と置換したメタンガスをクリーンエネルギーとして回収する技術を開発し、事業化を検討するものです。現地ではCO2を圧入する原理とシステムを丁寧に説明していただきました。地下約900mの炭層に2本の孔井を掘削し、CO2の圧入試験とメタンガスの産出試験を行い、CO2圧入によるメタンガスの増産効果が確認されています。

□札幌市・創成川通アンダーパス連続化事業
    ・札幌駅前通地下歩行空間整備事業

北都が抱える交通渋滞緩和と歩行者系ネットワ
ーク強化の一環として計画された両事業のあらましを建設局 土木部 創成・駅前整備担当課から詳しくご説明していただきました。創成川通は、札幌市内を南北に縦貫する重要な幹線道路です。
車の交通をスムーズにするとともに環境を改善させるこの事業は、韓国の清蹊川事業を連想させるもので、市民に愛される創成橋も保存する計画があります。札幌駅前通もJR、地下鉄と地下街などが一体化した歩行者系ネットワークが整備され、両事業の完成の暁には、新たな札幌市の顔が見えるでしょう。観光都市・札幌が生まれ変わるさまは、とてもダイナミックに感じました。

□札幌エネルギー供給公社・都心北融雪槽
札幌エネルギー供給公社は、札幌駅北口エリア
において地域冷暖房事業を行っています。地下のプラント施設も見学させていただきました。冬期間の冷たい外気や融雪槽に貯められた雪といった自然エネルギーを冷熱製造に利用し、省エネに取組んでいます。思うようにいかない代替エネルギーですが、ここにも北都が抱える雪害の悩みが垣間見えます。
次に札幌市・雪対策室の都心北融雪槽を見学しました。雪対策室から詳細なご説明の後、融雪槽に入ると、札幌駅北口の地下にひっそりと水を蓄えて冬を待っているかのようでした。都心交通の確保に役立つこの融雪槽は、市民にとって重要な施設として活躍しているのです。

創成橋橋付近 建設状況
 


3日目>


□北海道電力
・京極発電所建設工事

北海道電力鰍ェ進めるこの事業は、平成14年度から平成27年度の完成を目指して進められているプロジェクトです。北海道初の純揚水式発電所として衆目を集めており、見学にあたっては、計画的なプレゼン等の対応をしていただきました。全体概要説明の後、上部調整池建設状況、機器搬入トンネルの入り口、下部調整ダムなど現場を案内していただき詳細な説明をしていただきました。 
 この工事は、冬の厳寒期には積雪が5mを超えるため、上部調整池では雪解けから10月中頃までの期間だけ施工できるという過酷な施工条件下で建設が進められています。従って、施工できる時期は、昼夜兼行で施工する変則な体制で行われているのです。こういった条件もあり上部調整池の土工事は、ITを活用したGPS管理による情報化機械施工となっています。(丁張がありません。)
 また、上部調整池の施工基盤層は、新たに開発された水工フォームドアスファルトが採用され、上部遮水層は80mmの層厚一層の厚層舗設工法で施工されています。下部調整ダムの建設工事は、着々と進んでいます。その様子が、上と比べてゆったりしているようにも見えたのは、錯覚でしょうか?・・・いずれにせよ、過酷な施工条件をいとわず着々と進む工事の全貌を拝見することが出来ました。

□北海道電力
・泊原子力発電所3号機建設工事
泊原子力発電所は北海道唯一の原子力発電所として稼動中ですが、現在、3号機を建設中です。北海道電力鰍フご協力で普段では見られない発電所の構内を見学させていただきました。土木工事は、既に大部分が完成し現在3号機本体の建屋を建設中です。今回は、建屋の中に入れなかったのが少し残念でしたが、放水路トンネルのシールド工事について映像を交えた詳しい説明をしていただきました。最新式のシールド機の全貌が映像によって手に取るように分かり、技術の先端を知ることも出来ました。   

京極発電所 工事概要のプレゼン風景
 
京極発電所 下部調整池ダム建設状況
 

 3日間の見学を振り返ると北海道は、やはり「広い」という感想に尽きます。快適な高速道路もかなり発達していますが、平野部を走ると、直線距離の長いことに先ず驚きます。信号が無いというのも羨ましい限りです。3日目の移動中に蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山がくっきりと姿を現すと、その雄姿に一瞬、心が洗われるようでした。
 各見学先は、いずれも周到な準備で受け入れ頂きました。資料作成やプレゼンテーションに加え、業務のさなかにも拘わらずプロジェクトや建設工事の関係者の皆様に時間を割いていただき、多大なご負担をお掛けしましたが、質問や視察で新たな発見や知見を蓄積できたことは、非常に有意義な見学会となり、参加の皆様も満足されたと確信できるものでした。
 こうして平成18年度国内見学会は、無事終えることが出来ましたが、広大な北海道には、様々な自然があり、雪害と真正面に取組む関係者の皆様に敬意を表するとともに、今回の見学に際して、非常に熱心な対応をしていただいたことに紙面をお借りして心より御礼を申し上げます。 




 


 

■会員の皆様へのお知らせ■

□第291回サロン・ド・エナ開催のご案内
日  時:平成18年11月15日(水)17:30〜 (於:当協会6階CDE会議室)
講  師:藤田 和男 殿 芝浦工業大学MOT大学院教授、東京大学名誉教授

テーマ:ピークオイル論 
−その意味するところ、油断せず需給緩和策を!−
講演 要旨:  近年の原油価格の高止まり傾向とピークオイル論への注目は、国際エネルギー市場の構造変化と地政学的リスク要因に相俟ってますます増大しており、その結果、石油系燃料価格に対する市場経済的な選択や地球環境問題への配慮も余儀なくされている。1859年米国ペンシルバニアで商業生産されて150年、20世紀は石油が一次エネルギーの主役の座を占めてきた。21世紀に入り中国、インドなどの台頭による世界的な石油需要の増加、供給能力のピークアウト、中東情勢の緊迫化、世界各地での国際テロ紛争が多発したため、原油価格は高レベルが恒常化している。
 「ピークオイル論」とは世界の石油供給能力がピークを迎え、石油需要を満たすことが限界に達し、近い将来に減退局面に入ると言う見解である。地球上の66億人の人口はさらに増え、開発途上国が次々に経済発展をして行くためには、現在世界が消費する石油換算約100億トン/年の一次エネルギーの需要はさらに増加せざるを得ない。その40%を占める主役の石油が近い将来に供給ピークに達する懸念があるなら、資源小国日本こそ油断せずに、火急速やかに省石油、石油代替緩和策を講じる戦略が必須であろう。新たなエネルギー需給システムへの転換には莫大な投資と長い年月を必要とするからである。
 本講演では、「ピークオイル論」についてその意味するところ、世界の識者のピークオイル時期の見解の幅を論じる。しのびよるピークオイルに対処する緩和策のポートフォリオを紹介し、その中で特に石油開発会社の責務と思われる石油供給能力増強のためのビジネスチャンスについて述べて頂く。(講演終了後、懇親立食パーティがあります)

申込要領:FAXで事務局へお申し込み下さい。申込多数の場合は先着順で締め切らせていただきます。
      地下開発利用研究センター 事務局 中村 (TEL:03-3502-3671/FAX:03-502-3265)





 

舌句雑感:都合により休載します。