第208号/2007.1

■年頭所感

■日本自転車振興会補助事業 地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用システムの実現化の調査研究 第2回委員会 報告

■石油天然ガス地下岩盤貯蔵の新技術開発状況調査 第2回技術委員会報告 現地調査報告

■第12回 地下空間シンポジウムのご案内

■会員の皆様へのお知らせ




■年頭所感■
 

経済産業省地域経済産業審議官  福水 健文

 平成19年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。新しい年の門出に あたり、地域経済産業政策に対する所感を述べさせて頂きます。
  日本を構成するのは、地域です。地域の活力があってこそ、日本経済にも活力が生まれます。現在の地域経済の状況としては、有効求人倍率や工場立地件数が回復しているように我が国の景況感は回復傾向がみられる一方、その回復には地域ごとにばらつきが見られます。しかしながら、地域はそれぞれが高い潜在力を秘めています。地域がその活力を最大限に発揮することが、地域にとっても、また我が国全体で見ても経済活性化の観点から不可欠です。
 こうした地域の力を発現するには、地域が自らの強みを認識し、公共事業に依存するのではなく、自立的・持続的な成長を可能とする経済構造を民間主導で実現していくことが大切です。このため、経済産業省では以下の二つの施策に重点的に取り組んで参ります。

 まず、地域の魅力を踏まえた企業立地を促進するために、経済産業省では本年の通常国会に法案を提出することを検討しております。地域に雇用と所得をもたらす企業立地は地域活性化の鍵のひとつであります。具体的な施策としては、規制緩和や手続の迅速化、事業活動の中心となる人材の育成、地域における産学官連携による高度化技術開発への支援などを展開します。施策を講ずるに当たっては、関係省庁とも十分連携し、予算、税制、政府系金融機関による融資などを総動員します。

 企業立地の促進においては、「グローカル」と「広域」という概念が鍵となり ます。戦後は、国は各地域 に対して同一の施策を取っ てきましたが、経済状況や 産業構造など地域の状況は 様々です。
 これからは、地域自らが 主体的に特色のあるグラン ドデザインを描かなければ なりません。
 また、例えばコールセンターの立地では沖縄や大連が競争しているように、現在はどのような地域であっても国際競争力がなければうまくいきません。つまり、こうしたグローバル化の中で、地域の強みをいかした戦略をとる「グローカル」という概念が重要です。それに加え、北部九州の自動車産業の集積に見られるように、都道府県や市町村を超えた「広域」の連携が重要です。この「グローカル」と「広域」という概念を軸とした、地域の主体的な取組を経済産業省では全面的に支援します。

 第二に、地域において新たなイノベーションと新事業やベンチャー企業が続々と生み出すため、産業クラスター計画を引き続き推進してまいります。
 地域の中小企業、大学、公的な研究機関などが網の目のような人的ネットワークを形成し、新しい事業の創出に取り組む産業クラスター計画は、平成13年にスタートし、昨年の3月で第1期のプロジェクトが終了しました。続いて、今年度から22年度までの第2期がスタートしております。第1期では、全国19プロジェクトにおいて、約6,100社の中堅・中小企業と、約250もの大学の参加の下、産学官の連携、異業種の連携など、広域ネットワークの形成によって新事業創出に取り組んでまいりました。実際に、産業クラスター計画が推進役の一つとなって、例えば近畿ではバイオの拠点ができ、産業集積が高まるという成果が現れております。

 第2期は、「産業クラスターの成長期」と位置づけております。第2期では、これまでの成果を再評価して、プロジェクトを廃止、継続、新設など再編成しました。新たに17のプロジェクトで、バイオ、ITやモノづくり、環境といった切り口で、各々国際競争力をもった産業を育成することを目標として取り組んでおります。
 これまでに経済産業省で主に行ってきたのは、技術開発の支援とそのための拠点整備です。更に、今後は市場化を意識してマーケティングの強化などに取り組むことによって、出口を意識した戦略を推進していきます。こうして、地域発の世界に通用する企業や事業が多数生み出され、我が国の国際競争力強化に大いに貢献することを期待しています。

 この産業クラスター計画と企業立地促進策を併せることで、地域全体の活性化に取り組んでまいります。
最後になりましたが、本年も地域経済産業政策へのご理解とご協力をお願いするとともに、皆様の御多幸と御健勝を祈念いたしまして、新年の御挨拶とさせていただきます。



 




■日本自転車振興会補助事業■

□ 地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用システムの実現化の調査研究 □
□第2回委員会 報告□
 平成18年12月21日(木)標記の第2回委員会(委員長:松下 潤、芝浦工業大学教授)が当協会の会議室で開催されました。
本調査研究の目的は、地域産業の活性化をめざし水素エネルギー供給利用の地域モデルを構築することであります。平成17年度事業に引き続き、本年度の事業では、地域の水素・電力・熱供給ネットワークモデル全体像(短・中・長期)の構築、展開をめざすため、以下の調査検討が進められています。
@想定地域の電気・熱の需要サイドの検討
A想定地域に対する電力・熱の供給サイドの検討
B想定地域への電力・熱の供給インフラの検討

委員会では、調査研究の中間進捗状況、今後のスケジュールなどが報告され、活発な意見交換がなされました。

 


 


 

■石油天然ガス地下岩盤貯蔵の新技術開発状況調査 報告■



□第2回技術委員会 報告□

 標記調査の第2回技術委員会(委員長 山地 憲治 東京大学教授)が、平成18年12月19日(火)に当協会会議室で開催されました。
 本調査研究は、各種燃料を対象とした国内外の岩盤貯蔵技術を調査し、現状の評価をするものです。今回の技術委員会では、各燃料毎の貯蔵技術の評価について議論されました。各技術に対する評価基準について再検討することとなり閉会しました。また、ジオストック社のシュルチンガー氏(Mr.Roland Schirtzinger)をお招きして講演していただきました。
 演題は、「The State-of- the-Arts of Underground Energy Storage Facilities in the world and Future Perspectives」で、世界の燃料貯蔵技術の現状を紹介していただいたものです。岩塩貯蔵や帯水層貯蔵など国内で見られない技術の紹介もあって興味深いものでした。また、低温貯蔵技術など新しい岩盤貯蔵技術にも触れられ世界中で広まる岩盤貯蔵のニーズの高さを改めて確認しました。
 次回は、2月下旬に開催されます。


□ 現地調査 報告 □


 前述の技術委員会に先立ち、石油ガス地下岩盤貯蔵の新技術状況調査の一環として、現稼働中の石油岩盤備蓄基地における維持管理方法や災害時の対応等の現状把握を行うとともに、現在施工中のLPG岩盤備蓄基地を視察し、岩盤備蓄の安全性・有効性を調査することを目的として現地調査しました。この調査は、技術委員会 山地憲治委員長(東京大学 教授)をはじめWG委員も参加して12月4日(月)〜5日(火)に菊間国家石油備蓄基地と波方国家石油ガス備蓄基地の2ヶ所を現地調査したものです。

 4日(火)に菊間国家石油備蓄基地を訪問して、操業中の基地を視察しました。基地概要のご説明を受けた後は、サービストンネルから受払竪坑上部室に入り、受払施設も視察させていただきました。その後、会議室にて質疑応答があり、操業中における維持管理方法や災害時の対応などの知見を深めることが出来ました。
二日目の5日(火)は、波方国家石油ガス備蓄基地に赴き、基地の概要説明を受けた後、坑内へご案内していただきました。最深部に到達した坑内は、石油ガス岩盤貯槽がくっきりと姿を現し圧倒的な規模が体感できるものでした。水封トンネルなども着々と進む様子をつぶさに見せていただくことができ、目的とした岩盤空洞の施工、水封施設、その他付帯施設を調査することで岩盤備蓄の建設技術、技術成熟度等の新技術状況を把握することに大いに役立てられるものとなり、有意義な調査となりました。

 この調査にあたり、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)菊間国家石油備蓄基地事務所および、波方国家石油ガス備蓄基地事業所、日本地下石油備蓄株式会社菊間事業所の関係者のご協力に紙面をお借りして御礼申し上げます。






■第12回 地下空間シンポジウムのご案内■



「歴史に学ぶ地下空間利用」

1.主  催 :(社)土木学会 (担当:地下空間研究委員会)
2. 後  援 :国土交通省・(財)エンジニアリング振興協会・(社)日本建築学会・(社)日本都市計画学会
・(社)地盤工学会・(社)資源・素材学会・日本応用地質学会・都市地下空間活用研究会
3.期  日 :2007年1月17日(水) 9:15〜17:40 (予定)
4.会  場 :早稲田大学国際会議場
(〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1丁目20−14 / TEL 03-5286-1755 )
東京地下鉄東西線「早稲田」駅下車徒歩約10分,都電荒川線「早稲田」駅徒歩約2分
5.参 加 費 :8,000円 (テキスト代5,000円を含む) ただし,学生は3,000円
6.定  員 :250名(先着順)
7.申込 方法 :次のいずれかの方法でお申込ください。申込書到着後、10 日前後にて折り返し「参加券」をお送りいたします。
(1) 電子申込:土木学会ホームページ 本部主催行事の参加申込
(http://www.jsce.or.jp/event/active/information.asp) よりWeb上からお申込ください。
(2) FAX申込:土木学会誌に綴込みの「土木学会本部主催行事参加申込書」に必要事項をご記入の上、FAX 03-3355-5278 あて送付ください。なお、参加申込書は土木学会ホームページ (http://www.jsce.or.jp/event/active/form.pdf) よりダウンロードすることもできます。
8.申込締切 : 2007年1月10日(水)【必 着】
9.プログラム:
井深大記念ホール (司会 第12回地下空間シンポジウム実行委員会委員長 小森 和男)
9:15〜 9:30 開会挨拶・委員会報告 地下空間研究委員会委員長 大西 有三
9:30〜12:00 パネルディスカッション 「歴史に学ぶ地下空間利用」
  コーディネータ 岸井  隆幸 日本大学教授
  パネリスト 竹内  直文 国土交通省大臣官房技術審議官
    大西  有三 京都大学大学院教授
    越澤   明 北海道大学大学院教授
    小沢 詠美子 成城大学民俗学研究所研究員
12:00〜12:20 話題提供 「上海の地下利用の現状と未来」
  話題提供者:束 c (SHU YU) 同済大学教授、粕谷  太郎 鉄建建設(株)
12:20〜13:20 昼 食
13:20〜17:30 3会場に分かれて論文発表


第1会場
第2会場
第3会場
13:20〜14:10 審査付論文発表
(A1) 2編
13:20〜14:10 審査付論文発表
(A2)2編
13:20〜14:10 審査付論文発表
(A3)2編
14:10〜14:20 休憩 14:10〜14:20 休憩 14:10〜14:20 休憩
14:20〜17:15 一般論文発表
(B1)11編
14:20〜17:30 一般論文発表
(B2)12編
14:20〜17:30 一般論文発表
(B3) 12編
・審査付論文発表 各発表20分 各質疑5分
・一般論文発表 各発表10分 各質疑5分
17:30〜17:40 閉会挨拶







 

■会員の皆様へのお知らせ■

○第293回サロン・ド・エナ開催のご案内
日  時:平成19年1月17日(水)17:30〜  (於:当協会6階CDE会議室)
講  師:井口 哲 殿   トヨタ自動車株式会社 トヨタ自動車東富士研究所 FC開発部 主査 
テーマ:「燃料電池自動車の開発動向」
〜持続可能なモビリティ(移動手段)の実現に向けて〜
講演要旨: 燃料電池自動車は、究極の低公害車として、国内外の自動車メーカーが開発に注力している。
国内でもトヨタ・ホンダ・日産・スズキなどが、すでに公道走行ができる車両を開発済みで、経済産業省が進めるJHFCプロジェクトなどの場で、従来の内燃機関を利用した自動車に比べ、エネルギー効率に優れ、地球温暖化の原因ともなるCO2の排出も削減できることを積極的にアピールしている。しかしながら、燃料電池自動車の普及には、主要コンポーネントである燃料電池の耐久性の改善や車両コストの低減などに加え、水素インフラの整備、社会的コンセンサスの形成など解決しなければならない課題が多く残されている。
  今回の講演では、移動手段としての現在の自動車が、ガソリン車に至った経緯、石油資源の枯渇・CO2による地球温暖化問題への対応、燃料電池車への取組みと意義、トヨタでの開発の成果と今後の課題および解決手段、水素社会実現へのプロセスと課題および期待される政策等についてお話戴く。
   (講演終了後、懇親立食パーティがあります)
申込要領:FAXで事務局へお申し込み下さい。申込多数の場合は先着順で締め切らせていただきます。
  地下開発利用研究センター 事務局 中村 (TEL:03-3502-3671/FAX:03-3502-3265)


地下センターのホームページ(http://www.enaa.or.jp/GEC/)から直接申込みができます。








 

舌句雑感:明けましておめでとうございます。昨年、年の瀬も押し迫る頃、早くも安倍政権の支持率が下がってしまいました。そんな中で、平成19年度政府予算案が決定しました。82.9兆円の規模は、前年比4%増の久しぶりに80兆円を超える規模です。その中でも少子化対策の予算増は好ましいことですが、本当に真剣に考えないと「国が滅ぶ」ことになりかねません。ある雑誌のコラムでは、少子化対策には、「移民を受け入れよ」とか意見を述べていました。単一民族国家が消滅しかねません。生産力は落ち、経済力も失墜します。
 10月頃横浜駅で「立ち遅れる日本のインフラ」をテーマとした展示がありました。公共事業費縮小の中で国内のインフラが、周辺各国に追い抜かれつつあります。空港、港湾、道路など都市機能に必要なインフラは、既に立ち遅れが目立ってきました。周辺各国のインフラ整備は目覚しく、国内の首都圏、中部都市圏、関西都市圏などは、上海、香港、台北、ソウルなどと比較して、すっかり色あせています。高齢化社会、少子化人口減、財政悪化の言葉で迷わされていないでしょうか? 国力を伸ばすための発想を決して忘れてはいけません。2016年オリンピックに立候補した東京都は、環境に優しいインフラ整備をスローガンにしています。まさに大英断と言えます。地球温暖化防止に向けた環境に優しい技術開発は、日本が世界で一番なのです。
今年も皆さん、とにかく元気で頑張りましょう!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(GECニュース編集者)