地下センター事業の一環として、参加者44名を得て、平成元年度第1回九州地区(三池炭鉱、串木野地下石油備蓄基地、菱刈鉱山)見学会が平成元年11月16日〜18日に実施された。
見学にあたっては見学先の絶大なるご協力を得、3日間天候にも恵まれ、業種の異なる参加者皆さんの互いの親睦も図ることもでき、好評のうちに全員無事に見学することができたので、本センターニュースにおいて、見学の概要について紹介・報告する。
見学会コース
11/16 |
福岡空港 |
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貸切りバス |
大牟田市 三池鉱(旧有明鉱)見学
13:30〜16:30 |
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貸切りバス |
熊本(泊) |
11/17 |
熊本市内 |
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貸切りバス
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串木野市 地下石油備蓄基地見学
13:30〜16:30
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貸切りバス |
鹿児島(泊) |
11/18 |
鹿児島市内 |
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貸切りバス
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菱刈町 菱刈鉱山(金山)見学
9:30〜12:00
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貸切りバス
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鹿児島空港(泊) |
見学会参加者記念撮影(串木野地下石油備蓄基地の坑口にて−写真提供・東京ガス椛裄V氏)
@ 三井石炭鉱業梶@三池鉱業所
三池炭鉱の歴史は、約500年前(文明元年)一農夫が燃える石を発見したことに始まる。その後、享保六年に私営で採掘が行われ、明治6年官営となり、明治22年には三井家の経営に移り、今年で101年になる。三井石炭鉱業鰍ナは全国石炭生産量の1/3を占め、三池鉱業所は日本最大の質と量を誇っている。ここでは3つの鉱山から成っていたが、合理化を進めるなかで三池鉱のみとなり、最盛期450万t/年あった生産量も現在250万t/年と規模を小さくしながら、能率を向上させ(124t・人・月)、出炭コストを下げている。ここの石炭は電力、鉄鋼、セメントといった原料炭から一般炭にシフトが進んでいる。現在では、沖合11〜12kmまでの海底200m以下に採炭場所が及んでいる。
当地点の岩質は砂岩層で、炭層が3本挟在し、その最大は5〜6mに及ぶ。5〜6mの炭層のうち3mをスライシング法という採炭法で採炭する。ダブルレンジングドラムカッターという機械で切削し、支保は採炭部のみで最短後部は自然崩壊させる(自走支保)。採掘された石炭はまずベルコン、次に5m3鋼車30両編成で坑道を、そして斜坑をベルコンで坑外に搬出される。切羽(採掘場所)では地熱もあって32〜37℃になり、基準値30℃以下にするため通気(換気−全体で4万m3)、ならびに冷房設備が整備されている。
保安には最大限の注意が払われている。当然、坑内のすべての機械設備は防爆型であり、爆発伝播防止水袋、坑内湧水に対する排水設備、各種可燃性ガスの測定監視、非常時の避難誘導体制など万全が期されている。安全の状況はすべて地上の中央指令所で把握でき、24時間体制が取られている。安全教育、避難訓練にも力を入れている。
生産と保安の充実がここの相言葉となっている。
見学は直径7.5m、深さ約300mの入気立坑底までケージの速度9m/sという高速の運搬設備で降り、同じ大きさの排気立坑を速度6m/sで上がった。その他地上設備として、立坑やぐら、通気ファン、コンプレッサー、中央制御室などを見学した。炭鉱独特の安全に対するピリピリとした緊張感が印象的であった。
A 日本地下石油備蓄梶@串木野事業所
石油公団では、国家石油備蓄3000万kl体制の整備を目標に、各地で施設を建設中である。その中で、日本地下石油備蓄鰍ヘ岩手県の久慈地区、愛媛県の菊間地区、そして鹿児島県の串木野地区に、合計500万klの岩盤内地下タンク方式施設建設を担当している。
今回見学させて頂いた串木野石油備蓄基地は、幅18m、高さ22m、長さ555mの地下大空洞を10本掘削し、この中に容量175万klの石油を備蓄するという超大規模の地下利用施設である。目下行われている建設工事の後、設備工事が続き、安全防火施設、公害防止施設、保安防災施設が整備され、平成4年にはオイルインの予定である。
事務所で建設のビデオを見た後、マイクロバス2台に別れて坑内へ。10%の勾配の斜路を約400m降りると、大空洞が次々に右側に見えてくる。ここの地質は新第三紀の堅硬な安山岩、凝灰岩より成っており、岩盤タンク(石油を備蓄する部分)はこのうちでも割れ目の少ない中硬岩に位置している。
空洞の中央部まで行き、バスを降りると感嘆の声があがる。やはり、見ると聞くとでは大違い、百聞は一見に如かず、である。断面積にして350uは何といっても巨大であるし、長さ555mははるか遠いという感じである。空洞表面は吹付けコンクリートとロックボルトで支保されていて、湧水も殆どみられず、掘削りしている切羽の環境も良好で、初めて入った人にでも安心感を与え、さながら地下の大工場という印象であった。不謹慎な話ではあるが、この大空洞を劇場、コンサートホール、スタジオやワイン貯倉庫等々に利用すれば……といった地下利用の夢がイメージとして浮かんだのも今回の大きな成果であったように思う。
B 住友金属鉱山梶@菱刈鉱山
創業400年になる住友金属鉱山鰍フなかで、菱刈鉱山の歴史は新しい。近くで金が発見されたのは、1975年頃であるが金属鉱業事業団でボーリング等により正式に昭和56年に金銀鉱脈が発見され、金出鉱が始まってからはまだ4年しか経っていない。しかしながら、120tという金埋蔵量(さらに、すぐ近くの山田坑で50tの埋蔵量が発見された)ならびに80g/t鉱石といった品位(通常の金鉱山の品位は6〜8g/tで採算ベースという)は世界有数の金鉱山に相当し、世界中から、地質学者が訪れるなど注目を浴びている。
当地点の地質は、1億〜7千万年前に堆積した頁岩、砂岩(四万十層群)が基盤でその上を第四紀の火山岩類が覆っており、金鉱脈はこの両方の岩体中の割目を充填した浅熱水性含金銀石英・長石脈の鉱床である(マグマが地上近くまで上昇し金属成分は析出したようなもの)。
坑道開発には、坑道を自由に展開できる柔軟性と高い生産性を生かしたトラックレスマイニングが採用され、環境改善にも努められており、一つの地下工場というイメージにぴったりである。
更衣室で裸になり、作業服、防塵マスク、ヘルメットを着け、入坑の準備をした。入坑においては、20人がジープに分乗し、17°の斜坑を降り、地下に縦横無尽に掘られた水平坑道を走り、直接切羽(採掘場所)に到達するという便利さ。
ここの金の鉱脈は30〜100cmの厚さがあり、垂直近い角度で立っており、石英脈(白い脈がすぐわかった)中に存在した。切羽では担当技師の説明を聞きながらお土産の金鉱石を捜すのに一生懸命になっていた。また、ここの鉱床は温泉と同居しており、温泉を抜きながら地下水を低下させ、採掘していた(ここは気温が50〜60℃とサウナ風呂であった)。温泉はパイプラインで近隣の町まで引いて利用されている。
菱刈鉱山の年間の金生産量は5tであり、埋蔵量からいっても寿命は約30年となるため、新しい鉱脈の開発に多くの資金を投じているという。見学を終えた皆は、迷路ともいえる地下工場に深い感銘を受け、切羽で採取した金鉱石の片をみつめながら山師(やまし)の一獲千金のロマンを秘めつつ帰途についた。
■第三回研究企画委員会開催■
去る12月13日平成元年度第三回研究企画委員会が開催されました。主な議題と内容は以下の通り。
1)研究開発テーマについて
第二回研究企画委員会で審議、絞り込まれていた平成元年度研究開発テーマ(日本自転車振興会補助金テーマ)は主査企業との調整作業により、12月下旬には、第一回の分科会を開催できる見通しであることが報告された。テーマと主査企業は以下の通りである。
テーマ |
主査企業 |
@人・物の高速垂直連続輸送システム |
富士電機 |
A大深度地下業務用水システム |
大成建設 |
B地下空間を活用した地区再開発計画 |
梶谷エンジニア |
C地下利用都市複合エネルギー供給システム |
鞄立製作所(分散型熱電供給システム) |
2)マスタープラン専門委員会について
10月25日に第一回マスタープラン専門委員会が開催され、以下の4部会の設置ならびに部会長が選任されていたが、その後各部会委員の公募を行った。応募多数につき調整を行った結果、1部会の委員数を40名程度とした。なお、第一回部会の開催案内等は後日発送予定としている。
部会名 |
部会長 |
・基本問題部会 |
東京海上火災保険
岩崎委員 |
・エネルギー関連部会 |
大阪ガス
吉井委員 |
・物流・輸送等関連部会 |
石川島播磨重工業
高瀬委員 |
・都市・産業関連部会 |
NKK
大野委員 |
3)大深度地下空間開発プロジェクトについて
これまでの経過と今後の予定についての報告がなされた。報告によれば、去る11月28日地下センターとしての提案書をNEDOに提出し、現在NEDOにて審査中である。委託先の決定は平成2年1月以降と予想している。(別途記事を掲載)
4)その他
11月16〜18日に実施された第一回見学会の報告ならびに今後の見学会の予定等が報告された。
■「大深度地下空間開発技術」プロジェクト■
当地下センターでは、平成元年度から新規テーマとしてスタートする工業技術院の大型プロジェクト「大深度地下空間開発技術」の委託を得るべくセンター設立当初より、積極的に取り組んでいるところである。
10月30日新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に於ける公募説明会が開催され出席したが、海外企業も含め数10社の出席があり、大深度地下空間開発に対する国内外の関心の深さが感じられる。
提案書の提出は11月28日午後5時の締切りと定められ、これに向けて当地下センターとしては、このプロジェクトに参画する会員企業の選定と並行して提案書の作成に着手し、会員企業各位の協力を得ながら、予定通り11月28日NEDOに提案書を提出した。
当方の提案書は「大深度地下空間開発技術」の全体を網羅するものであるが、研究開発を行う個別テーマ、更には要素技術の研究開発を行うもの迄を含み、次に示す要目で構成され、全体としては200頁を超えるものとなった。
NEDOでは目下、各社から提出された提案書を審査中であり、明年1月には委託先が決定されるものと想定している。
今回提案した開発概念図は、下図に示す様なものであるが、地下50mに直径50m、高さ30mのドーム状空間を構築するために必要とする技術の研究開発に関するものである。
《提案書の要目》
0.トータルシステム・利用技術
(1)トータルシステム計画
(2)総合実証実験計画
(3)利用技術
T.高精度地下構造評価技術
(1)地盤総合解析・評価技術
(2)探査機器・データ解析技術
U.大深度地下空間構築技術
(1)軟岩用急曲掘進機
(2)現場成形型FRPロックボルト
(3)水没自動掘削機
(4)水没自動ライニング機
(5)総合施工技術
V.大深度地下環境制御・防災技術
(1)通気対策技術
(2)地下空間維持対策技術
(3)火災対策技術
(4)退避対策技術
(5)地下水維持対策技術
(6)環境監視及び総合安全対策技術
以上
■会員皆様へのお知らせ■