第66号/1995.2

■軟岩用急曲掘進機見学報告

■平成6年度分科会等内容と委員会開催状況

■アーバンクリエーション’95出展

■後楽ポンプ所調査報告

■阪神・淡路大震災に関する各学会の動き

■会員の皆様へのお知らせ


■軟岩用急曲掘進機見学報告■

工業技術院産業科学技術研究開発制度の下、平成元年度より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託している「大深度地下空間開発技術の研究開発」プロジェクトで開発を進めてまいりました地下空間構築用機械群の内、軟岩用急曲掘進機の実証機が完成し1月25日(水)〜27日(金)の3日間見学会が行われましたのでその概要を紹介します。
本研究の特徴の一つは、スパイラルトンネルにより地下空間の天盤を保持することですが、軟岩用急曲掘進機はそのトンネルを掘削する機械で次の様な仕様です。

 
掘削機外径×機長: φ4100o×7917o
掘進可能曲率半径: 7〜20m
重 量 : 190ton(セグメント打設機構除く)
耐水圧性能: 4.0kgf/p2
推進速度: 3.4p/min.(最大4.0p/min.)
セグメント: 鋼製、テーパ・ストレート併用式(6ピース/リング)
推力発生機構: 直動型矩形グリッパ方式(総推力1800tf)

スパイラルトンネルは連続的に掘削曲率(最小7m)が変化するため、本機械はパラレルリンクシリンダ方式のフレキシブル機構等を開発し対応に成功しました。
見学会は鰹ャ松製作所の小松工場(石川県小松市)で行われ、25日は開発委員会及び技術専門委員会関係、26日は構築部会関係、27日はトータルシステム・利用技術部会関係を対象に、高松委員長/井畔委員長を始めとして総勢43名が参加しました。コマツの設計者より機械の概要説明があった後、工場内で実物を見学しました。外見は普通のシールド機と殆ど変わりがありませんが、曲率半径7mの状態に屈曲させるとさすがに新機軸の開発機であるとの感じを受けました。見学終了後質疑応答があり種々質問が出されましたが、本機械は平成8年度に実証実験を計画していますので、その時十分な性能を立証するものと期待しています。
尚、折角の機会なので近くの粟津工場でパワーショベル及びトランスミッションの組立ラインを見学しましたが、違う業界の人にとっては組立ラインのスピードに合わせててきぱきと働く作業者の姿は厳しいものに写ったようです。今回の見学会は阪神大震災の直後ということで、当初の参加予定者に変動がありましたが、所期の目的は達成出来たと考えております。見学会の準備をして頂きましたコマツの地下建機事業本部他の皆様に誌上を借りてお礼申し上げます。
(GEC 小宮山 記)



■平成6年度分科会、実証試験、プロジェクト計画策定内容と委員会開催状況(継続テーマ分)■

各調査研究も、まとめの段階に入っております。本年度スタートした分科会等の活動状況は、既に前号までに紹介致しましたが、平成5年度から引き続き実施している分科会等は、それぞれ所期の研究内容を順調に終了する予定となっております。そこで、その内容と委員会開催状況を紹介致します。

  テーマ名 分科会(委員会)構成 平成6年度研究内容 開催状況


環境に調和した地熱発電所に関する調査研究

MP分類:利用・エネルギー

分科会長: 阿部博之(東北大教授)
参加企業: 日鉄鹿児島地熱、 NKK 、大林組、三菱マテリアル 、 住友金属、東北電力、高砂熱学、 NEDO、NEF 、東京農大、 東芝、通産省、東北大プレック研、 大成建設、九州電力、熊谷組、 日本重化、電源開発
主査企業:

椛蝸ム組

地熱発電に関する各種装置の物理的寸法を減少させうる新技術や騒音減少等の新技術と、施設を地下化(半地下化や盛り土による被覆を含む)する最新技術とを組み合わせ、地下化の可能性について技術ならびに経済評価を行う。 第1回
 7/1
第2回
 11/1
第3回
 (3/2)
地下空間利用における空間デザインに関する調査研究

MP分類:利用・都市

分科会長: 馬場俊介(名大教授)
参加企業: 工技院資環研、 川崎製鉄、佐藤工業、日揮、 NKK、ハザマ、西松建設
主査企業:

佐藤工業

課題を抽出し整理分析するとともにケーススタディを実施し、実際の地下施設を計画設計するためのデザイン手法を構築する。 第1回
 7/22
第2回
 10/20
第3回
 (3/2)



リニアモータによる垂直輸送システム実証研究

MP分類:利用・都市

分科会長: 高橋輝男(早大教授)
参加メンバー: 神奈川大学、IHI 、 川崎重工、清水建設、フジテック
主査企業:

富士電機

前年度に製作したスケールモデルの実験装置(水平約10m、垂直約8m移動)の組み立て・調整を行い、走行・分岐などの性能試験を実施する。 第1回
 9/2
第2回
 (3/末)






丘陵核都市における総合的地下利用に関する調査研究

MP分類:利用・都市

研究会長: 加畑長昭(日揮梶j
参加メンバー: 日揮、大成建設、 東急建設、鉄建建設、日建設計、 IHI 、ダイヤコンサルタント、 能美防災
主査企業: 日揮
地下を有効に利用しやすい丘陵核都市をモデルとし、地下物流施設の実態調査、概念設計と実用化にかかわる検討を行い、建設費概算および建設工程、実用化にあたって解決すべき事項を検討する。 第1回
 9/27
第2回
 12/5
第3回
 (3/29)
夜間電力活用型下水処理システムに関する調査研究

MP分類:利用・エネルギー

委員長: 林正夫(東海大教授)
参加メンバー: 徳島大、日大、 工技院、資源エネルギー庁、 東大、電中研、NEDO、 下水道事業団、ハザマ 、 三菱化工機、鹿島、利根地下、 三井造船、川重、日立プラント
主査企業:

三菱化工機

電力多消費型施設である下水処理場において、夜間電力を活用することによって電力負荷平準化に寄与できる、複合したシステム規模など最適化モデルの検討とF/Sを行い、実用化に向け今後実証すべき技術項目とスケジュールを提案する。 第1回
 7/19
第2回
 12/9
第3回
 (3/31)



■アーバンクリエーション’95出展■

当センターの本年度の主要な事業の一つとして、「アーバンクリエーション’95」への協賛と展示参加を行いました。
アーバンクリエーション’95は、既にお知らせしたように「ジオテック’92」を合流継承したもので、国際的に求められている地球環境の保全を考慮し「地球にやさしい都市づくり」というコンセプトを継承したものであり、都市の活性化や生活の潤いを創出するための、相互情報交換を目的として開催されました。
1月27日〜30日の4日間に総入場者数は、4万1千人を越え、エン振協のブースにも官公庁や地方自治体、学校関係、一般企業など多数の来訪があり、ビデオに見入ったり、展示パネルに関する熱心な質問がありました。
会員各社のご助力を得て、盛況のうちに無事終了する事が出来、たいへんありがとうございました。



■後楽ポンプ所調査報告■

平成5〜6年度に実施中の「夜間電力活用型下水処理システム調査研究」委員会は、調査の一環として1月24日に、東京都下水道局の後楽ポンプ所内に熱源プラントを設置している東京下水道エネルギー褐繩y事業所を見学しました。その概要を紹介致します。
このプラントは、都市の未利用エネルギーを使った地域冷暖房システムを採用しているところに特徴が有り、さらに未処理水を使い、下水が四季を通じて温度変化が少ない(温度変化…2℃/日)という特性を活かし、冷暖房の熱源として利用しています。
東京都下水道局の丸山主査の説明と案内により、地下5階のプラント室や地下4階の制御室等の見学を行いました。冷水と温水用の熱交換器及びヒートポンプが各々3台有り、7℃の冷水と47℃の温水を、21.6haの地域に供給しているとのことでした。都市排熱の35%が下水に放熱されていると言われており、平成6年7月にスタートしたこの地域冷暖房システムは、東京都下水道局が「アーバンヒート」と名づけてスタートした、快適な都市を創出する下水道の一環に位置付けられているとのことでした。
なお、紙面をお借りして、今回の見学にご協力戴きました関係者の皆様に、改めてお礼を申し上げます。



■阪神・淡路大震災に関する各学会の動き■

阪神・淡路大震災による土木構造物や建築物の被害状況調査結果が、各学会から報告されています。土木学会は2月8日、建築学会は15日にそれぞれ東京地区で報告会を行い、会場が超満員となったことがテレビ等で報道されました。特に、土木学会の第二次調査団報告の鉄道グループと都市施設グループの報告の中に、地下に関係する部分が有りましたので、紹介いたします。

「被害状況に対する見解…(5)今回われわれが直接調査した範囲では、道路・鉄道の橋梁、高架構造物、港湾施設、上下水道管網、下水処理場の大被害に比べて、平面街路、鉄道の地平区間、地下街・地下駐車場等の外見上の被害は比較的軽微であると見られます。また、地下鉄道は、大きな被害が出ている区間が見られるものの、それは局地的であり他の区間の被害は軽微であると認められます。」(報告会資料40ページ) 鉄道グループ報告…神戸高速鉄道のこの区間は昭和37年頃開削工法で建設されている。大開駅ではボックスラーメン構造であり、その中柱が完全に破壊するとともにラーメン上面スラブが破壊して2〜3m沈下し、ボックス断面が下面スラブを残してM型断面になっている。 −途中略− 神戸市営地下鉄三宮駅は3層ラーメン構造であり、B1FおよびB2Fの電気および機械室内のRC造の柱のかぶりコンクリートが剥離し、一部の柱では鉄筋の座屈も生じている。B2FおよびB3Fの一般旅客の入るコンコースの中柱は鋳鋼製の丸柱が使用されているが、損傷はない。なお、三宮駅に隣接する一般トンネル部はボックス断面トンネルであるが、駅内が損傷しているにも関わらず視察した範囲では損傷は生じていない。」(報告会資料47ページ)

「都市施設グループ報告…さんちかタウンではガラスが若干割れ、壁の化粧板が一部ではがれた程度であった。また、書店の棚の本も半分は本棚に残ったままで、揺れ自体が地上部よりかなり小さかったのではないかと思われる。ハーバーランド地下街およびその地下駐車場も土被りが2m程度と浅いにもかかわらず、全くといってよいほど被害がなかった。破損した地中の水道管から流出したと思われる水流が一部地下街に漏れだしている所は見られた。
いずれの地下街も、化粧張りをはがして構造物の本体を見ないと本当の被害は不明であるが、問題の発生が予測された地上との接続部においても全く損傷は見られなかった。また、ガスについては地下街の元栓での遮断は完全であり、各戸のガス遮断も有効に作動し、ガスもれもなかった様子である。 −途中略− 長田区の公園下地下駐車場は隣接の中層建築物が破損しているにもかかわらず、構造的には外見上は問題は見られず、蛍光灯、ダクトに少し落下被害が有った程度である。 −以下略− 」(報告会資料91〜92ページ)



■会員の皆様へのお知らせ■

「Newsweek」誌の11月号に大深度地下空間技術が紹介されるなど、ここ数カ月の間、GECに関わる報道が相次いでいますが、2月12日(日)のNHK、サンデー経済スコープの中の「探訪 次世代技術」で、大深度地下空間開発技術がTV放送されました。東急地下実験場の紹介とジオドーム施工法の紹介(三菱マテリアルのCG)、軟岩用急曲掘進機の工場運転状況等が紹介されました。
第167回サロン・ド・エナが、下記の要領で開催されますので、是非ご参加下さい。
 

日 時 : 3月15日(水)17:30〜20:00
場 所 :  当協会 6−CDE会議室
講 師 : 「CALSは企業をかえる」
テーマ : 水田 浩 氏(CALS研究会技術委員会 委員長) 

(申込はGEC事務局、中村まで)