第67号/1995.3

■研究企画委員会報告

■大深度地下空間開発技術委員会報告

■阪神大震災現地視察報告

■地下利用推進第一部会活動報告

■第168回サロン・ド・エナご案内


■研究企画委員会報告■

平成6年度第3回研究企画委員会が、3月15日(火)午後1時から当協会において開催されました。協会を代表し、山口専務理事より地下センターの現状と平成7年度の見通しを含めて挨拶がありました。ついで、伊丹委員長の司会により、新委員の紹介が有り、議題の審議と報告が行われました。今回は、平成7年度の事業計画と予算、活動テーマの審議が中心となりました。議題と議事内容の概要は、下記の通りです。

議題 1 平成7年度事業計画および予算について

  1. .補助金要望結果について
    平成7年度機械工業振興資金要望総括表と同補助事業概要について、説明があった。
  2. .大深度地下空間開発技術予算について
    平成7年度は、小型地下ドームの開発等による総合実証実験の実施が、中心となる。
  3. .事業計画について
    地下空間の開発利用システムの研究開発等の推進、大深度地下空間開発技術に関する研究開発、調査・資料情報の収集、広報事業、受託事業等に関する事業計画の説明があった。
  4. .地下センター予算について
    平成7年度の予算(案)総括と予算内容(案)について、説明があった。
議題 2 平成7年度新規研究テーマについて
    分科会、プロジェクト計画策定事業、実証試験の平成7年度活動テーマ(候補)について、説明された。 以上の二議題が審議され、承認された。
議題 3 平成6年度事業内容について
    平成6年度の、地下空間の開発利用システムの研究開発等、地下空間の開発利用に関する議題の調査研究、受託事業、広報事業等が、報告された。
新任の委員は、次の方です。(敬称略)

磯村 栄治  三菱地所  建築業務部



■大深度地下空間開発技術委員会報告■

○技術専門委員会(平成6年度第3回)

日時: 3月13日(月)10:00〜12:00
議題: @ 平成6年度研究開発成果について
A 平成7年度研究開発取り組み方針および予算について
B 平成7年度実証実験について
C 平成7年度特別分担金の分担について
D 平成7年度地下センター事業計画および予算(案)について

通商産業省環境立地局産業施設課・岡田技官、NEDO産業技術研究開発部・小池主査を来賓にお迎えして開催された。議事は平成6年度研究開発成果の報告があり、活発な質疑応答があり了承された後、実証実験についての各委員による議論の後、平成7年度以降の取り組みについての方向付けがなされた。



■阪神大震災現地視察報告■

地震発生後約1カ月経過時点で阪神大震災による地下構造物の損傷状況を視察し、今後の地下開発利用の参考とするために以下の要領で各地を視察した。

1.視察メンバー(2月14日のみフルメンバー)

稲田教授(愛媛大)、小島教授(東京大)他計10名、ENAAから恵木部長、鈴木主研の2名参加。
2.行程
視察した主要場所は以下のとおり。
13日: メリケンパーク、ポートアイランド、神戸駅周辺地下街(DUO神戸・市営地下駐車場・高速神戸駅)
14日: 三宮駅周辺(市営地下鉄三宮駅・阪神三宮駅)、新開地駅(神戸高速)、大開駅周辺(神戸高速)、ハーバーランド、山麓バイパス(三宮側出口)
15日: 湊川公園周辺(市営地下鉄湊川公園駅・公園地下駐車場・同商店街)、上沢駅(市営地下鉄)新開地駅から神戸駅迄の地下通路(メトロタウン)、阪神高速道路深江高架橋倒壊現場
3.市内の概況
交通機関は以下の様な状況下にあった。
@ 阪神電鉄 梅田〜御影(電車開通)、御影〜三宮(代替バス運行中)
A 阪急電鉄 梅田〜西宮(電車開通)、西宮〜三宮(代替バス運行中)
B JR   大阪〜住吉(電車開通)、住吉〜三宮(代替バス運行中)
C 神戸高速 新開地〜三宮(電車開通)
D 市営地下鉄 2月16日より全線開通予定(新長田駅、上沢駅、三宮駅通過)
なお、@ABの代替バスは43号線の専用レーンを快走するので所要時間は短いが、運送能力は電車に比し絶対的に少ないため、ラッシュ時は待つ時間が長く、最短の@Bは場合によっては徒歩と大差ない時間を要する。市内の様子は撤去作業が随所で活発に始まっているため、ホコリが舞っていてノドがおかしくなる。また、主要道路は緊急車両、工事車両、一般車両等が混じり合い、各地で渋滞しており警察も近日中に緊急車両の見直しをするとのこと。
繁華街は活気に満ちており、DUO神戸の地下街は、JRから神戸高速への乗換ルートでもあるため、一日中人通りが絶えない。また地下の飲食店はガスが通じないため、別の場所で調理したものを運んできて、電子レンジで加熱して客に提供している。なお地上の商店街も露天商あるいは屋台のような飲食店が多数出店し賑わっている。しかしながら、視察団が宿泊したホテルのように、依然として断水中であることからエアコンが働かず、トイレが使用出来ないため外まで用足しに行かねばならないことの不便さに、震災の後遺症が身近に感じられた。
4.調査内容
今回の調査の主眼である地下構造物に関する震災の調査結果をまとめると、次のようになる。
(1) 小型独立構造物:ガソリンスタンド・地下横断歩道・小規模地下商店街
これらはいずれも健在であった。この理由は土被り重量が少ないことから上下動のダメージを受けにくく、また小さいことから周辺地盤に同調して動くことにより、局部に応力集中が発生しにくいためと推察される。
(2) 大型連続構造物:地下駅・地下街・地下駐車場
これらは健在であったものと、損傷を受けたものの両方が存在した。それらは以下のように整理される。
@ 地上部分の被害が大きかった地区は地下も被害が大きい。すなわち地震動自体の大きさに起因する。 (三宮地区・大開駅付近・上沢駅付近等)
A 地上と比較した場合には地下は被害の程度が軽く、健在であるところがみられる。 (神戸駅周辺)
B 地下鉄駅舎の場合、土被り重量が直接作用するB1の天井を支える中間支柱は大きな荷重が作用し被害が大きい。 (市営地下鉄三宮駅、上沢駅・神戸高速大開駅等)
C 深井B2、B3等は意外に安定している。したがって大きな空間でも健在であるところが見られる。 (市営地下鉄三宮駅・阪神三宮駅・神戸高速神戸駅、新開地駅等)
5.まとめ
今回の地震は直下に震源が発生したことから地震動の絶対的な大きさが過去の観測記録を遥かに上回るものであった。このため従来から地震に対して安全であるとされていた構造物(地下構造物・土木構造物等)が損傷を受けたことから、耐震設計の見直しが図られるようであるが、今回の調査で確認されたことは、古い構造物ほど被害が大きく、最近建設された構造物は明らかに被害が少なかったことである。従って今回の経験を生かして、より安全性の高い構造物を作ることはできるが、大切なことは作る目的と用途とそれに対応した設定条件の明確化が問われることになると考えられる。
(GEC 鈴木 記)



■地下利用推進第一部会活動報告■

地下利用推進第一部会は、活動の一環として2月16日(木)〜17日(金)に、久慈国家石油備蓄基地(岩手県久慈市)と青函トンネル・吉岡海底駅(北海道−青森県)の調査、ヒアリングを実施しました。その概要を報告します。

1)久慈国家石油備蓄基地調査

久慈国家石油備蓄基地は、備蓄容量が175万キロリットルあり、平成6年2月にオイルインが終了しています。現在、日本地下備蓄鰍ニ久慈市が、サービストンネルを利用して約11億円をかけ、石油文化ホールと地下水族科学館を建設し、営業を行っています。
石油文化ホールは、基地の特徴である地下空間利用のあり方や、久慈湾総合開発における基地の位置づけを明らかにし、基地の社会貢献性、重要性をアピールすることを目的としています。一方、地下水族科学館は、市民の水産及び地下空間についての知識・教養の向上を図るとともに、観光に資することを目的に、建設されました。これらの施設を見学後、以下の項目に関しヒアリングを行い、それぞれに詳細な説明を受けることができました。
  • 施設の現状と今後の課題
  • 現在の施設に決定した経緯、計画時点で比較検討した案
  • 計画時に調査した地域性、規模、採算性、安全性等の事項
  • 苦労した事項や不安だった事項等、当初の計画と実際との差異
  • 今後の地下観光施設を計画している人への、特に注意、考慮すべき事項等のアドバイス
  • 施設の維持、管理状況と将来の老朽化に対する考え方
  • 2)青函トンネル・吉岡海底駅調査
    青函トンネルは、総延長53.85qのうち23.3qが海底部にあり、世界で最も長いトンネルです。内部の定点と言われる地点には吉岡と竜飛の二つの海底駅があり、今回は吉岡海底駅を、JR北海道の方々に詳しく案内して戴きました。吉岡海底ワールドと避難所、万一の災害に備えて作られている列車火災検知設備や消火装置等、現場を見ながら説明を受けました。 さらに、斜坑のトロッコに乗り、最深部のポンプ室と先進導坑まで下り、見学する事ができました。ポンプ室は海面下約300mにあり、先進導坑を通り集まってくる水を地上に汲み上げています。実際に、これらを目のあたりにすると、当時、日本で最初に使用された水平ボーリングや地盤注入、ロックボルト工法などの様子が、実感として浮かんできました。このたび、お世話になりました皆様に紙上をお借りして、改めてお礼申しあげます。
    (GEC 小林 記)


    ■第168回サロン・ド・エナご案内■

    テーマ:「海外コンサルティングの現状と今後の役割」
    日 時:平成7年4月19日(水)17:30〜20:00
    講 師:山口 仁秋 殿((社)海外コンサルティング企業協会 特別顧問)
    場 所:当協会 6階 CDE会議室