各サブタスクの平成8年度の成果概要


8.4 主要補機類の開発

8.4.1 研究開発目標

8.4.1.1 研究目標

(1) 技術開発項目
 主要補機類の開発に関する調査、要素技術開発を行い、パイロットプラント開発のために必要な基礎技術を確立する。

(2) 技術開発目標
 水素燃焼タービンサイクルの構成機器の研究開発を行うにあたって、機器の成立性や適用性の検討並びに要素技術開発に必要な基礎技術の調査・検討を行う。

8.4.1.2 研究範囲

 水素利用技術の一つとして、環境性に優れかつ画期的高効率が期待できる水素燃焼タービンの研究開発課題に関し、調査研究とパイロットプラント開発のために必要な基礎技術開発を行うと共に、主要技術の次段階研究に必要な技術的方策を検討する。
 本年度は液体水素を気化する高効率でコンパクトな極低温熱交換器の基礎技術の検討を行うとともに、液体水素冷熱利用による酸素製造装置の成立性と高性能化の可能性を検討する。
 各種水素燃焼タービン発電サイクル用高温熱交換器について、概念設計を行いコンパクト化と構造健全性につき検討する。

8.4.2 平成8年度の研究開発成果

(1) 冷熱利用技術の開発として本年度は、下記の検討を実施した。

  • 水素・酸素供給システムの単機容量の検討
  • 水素冷熱取り出し用熱交換器の形式の絞り込みと機器仕様の検討
  • 冷熱利用酸素製造システムの安全性評価
  • 水素変換反応(オルトーパラ)の触媒特性調査
 水素燃焼タービン発電プラントの規模が500MWのとき、水素・酸素供給システムの単機容量設定につき検討した結果、発電プラント1系列(500MW)に対し水素・酸素供給システム2系列とする結論を得た。このとき水素・酸素供給システム1系列の水素,酸素供給能力は125,000Nm2/h, 62,500Nm2/hとなる。
 図8−4−1に水素、酸素供給システム全体フローを示す。
 冷熱取り出し用コンデンサとして用いられる熱交換器について適用可能な形式、機器仕様を検討した。その結果プレートフィン方式に絞り込み、気化水素ガスを酸素固化防止に使用する流路構成を3ケース検討し、最終候補を抽出した。またコンデンサ体格を検討し、現実的寸法であることを確認した。
 図8−4−2に水素冷熱取出しシステム構成案と図8−4−3にコンデンサ体格設計の例を示す。
 冷熱利用酸素製造システムの見直しとして、安全性の面から同一熱交換器内での高圧水素/酸素の熱交換を取り止め、主熱交換器を水素用と酸素用(液体酸素冷熱回収用)に分離し新システムを構築した。
 図8−4−4に構築した冷熱利用空気分離システムを示す。
 水素のパラ/オルト変換による冷熱エネルギー量について調査検討した。結論として一段触媒変換で連続変換(理想状態)の約9割程度の冷熱が得られる事が分かった。

(2) 高温熱交換器の開発として本年度は下記を実施した。

  • 性能向上によるコンパクト化と構造健全性の検討
  • パイロットプラント用高温熱交換器の体格検討
 伝熱性能予測精度向上のため高温水蒸気物性(熱伝導率、粘性係数等)の調査と検討を実施した。また伝熱管材の選定に反映するため高温水蒸気による腐食(酸化)について調査を実施した。その結果水蒸気酸化による腐食減量はCr含有量が多い材料ほど少なく、ステンレス鋼に対してはショットピイーニング、結晶粒の細粒化が有効であることが判った。
 新ランキンサイクル用蒸気発生器のコンパクト化の検討実施し、フィン数、管ピッチを適正化する事により、設置面積と容積を低減出来る見通しを得た。
 図8−4−5に蒸気発生器の管束部チューブパネルの構造を示す。
 熱交換器ヘッダー部のクリティカル部位を対象に構造解析を実施し、管ピッチが小さい程、曲げ剛性が低下する結果を得た。従って高温熱交換器のコンパクト化と構造健全性とのトレードオフを今後検討する必要がある。
 500MW級トッピング再生サイクル用高温熱交換器の概念設計を実施し、伝熱性能、圧力損失、材料、全体寸法および容積について検討した。図8−4−6にサイクルのヒートバランスを示す。
 上記基本計画をベースに50MW級パイロットプラントの概念設計および高温熱交換器の体格検討を実施した。

8.4.3 今後の課題

 冷熱利用技術の開発は今年度までの検討結果を盛り込んで、来年度は実規模プラントの概念設計を実施し、システムの成立性についての検討内容を、より深く掘り下げる予定である。
 高温熱交換器の開発は今年度までの得られた成果を総合して、来年度は最適サイクルとして選定されたトッピング再生サイクルの高温熱交換器の概念設計に取り組む。



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