各タスクの平成11年度の成果概要


3. タスク3 国際協力に関する調査・研究

3.1 研究開発目標
 本調査研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託により、平成5年度から実施されている「水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)」の中で、WE-NET計画を真の国際共同プロジェクトへと発展させるための関係諸国との協力体制のあり方、国際的技術情報交換の方策を明らかにするものである。

これまでの第T期研究開発では、WE-NETに対する国際的な理解を深め、関係機関との情報交換を促進するための活動を行うと共に、関係諸国の類似プロジェクトの動向、各国研究機関の研究内容、主要各国の水素エネルギー技術開発計画等を調査することにより、WE-NETにおける国際協力推進のために必要な課題を抽出してきた。これらの調査研究のまとめとして平成8年度に「国際協力の長期ビジョン」を策定し、このビジョンの実現に向けて努力を続けているところである。

本年度は第U期研究開発の初年度として実証化技術の情報交換に重点をおくものの、基本的にはこの長期ビジョンの実現を目指して次の項目の施策を実施する。

3.2 平成11年度の研究開発成果

3.2.1 国際的研究協力の推進
 
WE-NETは国際協力を前提としたプロジェクトであり、先ずWE-NETの全体構想 が海外の機関・関係者に広く正しく理解されることが、最も必要である。また今後の国際的協力を考えると、WE-NETが海外の水素プロジェクトに対してどのように貢献できるかを明らかにしていく必要がある。このため本年度は、以下の活動を実施した。

(1) 国際会議での発表

 WE-NETプロジェクトへの理解を深めてもらうため、以下の国際会議での発表を行った。

<1>第5回韓国-日本水素エネルギージョイントシンポジウム
<2>米国DOE水素政策審議委員会(HTAP会議)
<3>全米水素協会(NHA) 総会
<4>第2回Annual International Fuel Cell Conference
<5>日米電気化学学会
<6>第1回Australian Hydrogen Forum

(2) International Energy Agency(IEA)における研究協力

 IEAにおける研究協力として、以下の活動を行った。

<1>水素実施協定対応委員会
 水素執行委員会の結果を受け、国内専門委員への情報伝達及び情報交換を行った。

<2>各アネックスへの専門家派遣
 専門会員をIEAの各アネックスの開催毎に派遣し、IEAの研究開発協力を積極的に進めた。現在8名の専門家委員が4つのアネックスに参加している。

(3) WE-NET成果の発信

 WE-NETは国際的な視野に立った研究テーマを含むプロジェクトであり、研究活動においては海外の開発動向を良く察知しながら推進していく必要がある。これらの点から、情報交換を随時行っている約170の海外関係機関に、プロジェクト全体の成果が判る平成10年度の英文成果概要集を送付した。以上の様に、最新のWE-NETの成果を国際的に広く発信し、海外の水素エネルギー研究活動を行う機関への貢献を図るとともに、絶えず海外研究機関から情報を円滑に入手できる体制を整えた。

3.2.2 国際的技術情報交換等の実施

 WE-NETを国際的な協力の下で国際的共同研究へと発展させていく上では、関係各国と密接な連携を図りながら、関係機関との定期的情報交換を行うことが不可欠である。これらの情報交換を推進していくための施策として、本年度は以下の活動を実施した。

(1) 海外調査

 WE-NETの各タスクにおいて欧米諸国、韓国、オーストラリア等での海外調査を実施し、DOE、NHA、CHA等の海外機関や大学との情報交換を行った。

(2) ECにおける水素プロジェクトの調査

 ドイツのL-B-Systemtechnik GmbHに委託し、ヨーロッパの水素プロジェクトに関する調査を実施した。その結果、現在予算化されているプロジェクトが70件、381百万ユーロに達しており、その積極策がうかがわれる。

(3) 2000年国際会議の準備作業

 WE-NETプロジェクト活動を十分に理解してもらい、また海外機関の情報収集を行うため、積極的に国際会議へ参加することとした。特に以下の会議に関して準備作業を行った。

<1>HYFORUM2000 2000年9月ドイツのミュンヘンで開催
<2>World Hydrogen Energy Conference(WHEC)2000年6月北京で開催

(4) WE-NETホームページの更新

 平成10年に開設したWE-NETホームページは第T期研究開発の内容であったため、本年度よりスタートした第U期研究開発の内容へ更新した。

(5) 水素の安全性に関するビデオ製作

 水素社会実現のためには水素の安全性に関する啓蒙が必要であり、Hydrogen2000のビデオ製作にDOE等とともに参加した。具体的には、WE-NETにおける安全に関する取り組みを追加しながら全体のシナリオ作成に協力した。このビデオの英語版及び日本語版は平成12年度に完成する予定である。

3.2.3 水素エネルギー技術標準化研究
 平成6年度より8年度にかけては、水素の製造、貯蔵、輸送、利用、計測、安全性、材料等の各分野における研究開発の動向、関連規格・法規、標準化ニーズ・課題の抽出を行った。平成9年度は最も基本となる液体水素の貯蔵/輸送/ハンドリング分野に絞り、ソフト面を中心に国内及び海外の法規・規格類を比較検討し、国内外の相違点、問題点を抽出することを目的とした調査を行った。平成10年度は、水素供給ステーションに直結した具体的テーマを取り上げ、「自動車用水素供給ステーションにおける水素ガスの取扱いに関する調査・検討」を実施した。

 平成11年度は、米国/カナダにおいて作成された“Sourcebook For Hydrogen Applications”(水素利用ソ−スブック)資料を参考に、日本版の法、規則に関するガイドラインを作成した。これは、IEA執行委員会からの上記ソ−スブックへ、日本の関係資料を追加したいとの意向に賛同したものである。

 水素に適用される法律などの規制は、高圧ガス保安法、消防法、労働安全衛生法 建築基準法、石油コンビナ−ト等災害防止法及び輸送時に関係する道路運送車両法、道路交通法、港法規等があり、以下の7項目別に関連法規をまとめた。<1>圧力容器、<2>ガス設備、<3>消費、<4>輸送、<5>電機設備の防爆、<6>法令の一覧、<7>関係文書

 本調査・検討は、日本国内においては、水素ガスを取扱いする上での基本的な内容であが、米国/カナダの水素利用ソ−スブックに追記されることにより、国際的資料として活用されることを期待したい。

3.2.4 ISO/TC197対応
 ISO/TC197は、「エネルギー利用を目的とした水素の製造、貯蔵、輸送、測定および利用に関するシステム・装置に関わる標準化」を目的として、1989年11月に設立された。事務局はカナダに置かれ、Dr.T.K. Boseが議長を務めている。

 本年度の進捗は、WG2の「自動車用液体水素燃料タンク」は、各国のバ−ストテスト圧力の違いにより進展しておらず、WG4の 「空港における水素燃料供給設備」、WG5の「自動車用ガス水素及び混合水素サービスステーション、自動車用ガス水素燃料コネクター」については大きな進展は見られなかった。一方、WG6(自動車用ガス水素燃料タンク)、WG7(水素システムの安全性)に関しては引き続き、各コンビーナーを中心に規格案の作成が積極的に進められている。

 また、第8回ISO/TC197本会議及びWGが平成11年4月6〜8日、米国・ヴィエナ市で開催され、日本からは2名が参加、各WGの進捗状況の報告・検討、新規提案項目に関する今後のスケジュール等が審議された。会議における審議結果については本文にその内容を記載した。その他、ISO/TC197以外の水素に関連した他のグループからの規格案の検討依頼に対し国内WGにおいて検討を行った。

 ISO/TC197の中にはワーキンググループ(WG)規格案について、各エキスパート、題名及び現況を表3.2.4-1に示した。

3.3 今後の進め方および課題
 WEーNET計画の基本構想に対する理解と認識は、世界的にも徐々にではあるが広がりつつあると言える。WE-NET研究開発項目のいくつかが既に実証化段階へ入ってきており、これらの開発技術が効率よく実用化へ移行していくためには、単なる国際間の技術情報交換だけでは不十分と考える。よって、今後は具体的なハードウエアに関して国際標準化を推進する上で、標準化技術の情報伝達を国内外に効率よく発信していくことが必要である。

 



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