各タスクの平成12年度の成果概要

7. タスク7 水素供給ステーションの開発


7.1 研究開発目標

 第II期研究開発における水素供給ステーションの研究開発目標は、「水素自動車への燃料供給を目的としたスタンドアローンタイプの水素供給ステーションの要素技術およびシステム化技術を確立するため、実用規模の水素供給能力の10分の1程度に相当する30Nm3/時の小規模試験システムの開発、実証を行う」ことである。

 平成12年度は、2方式の水素供給ステーション(天然ガス改質型および固体高分子電解質水電解型)について、昨年度実施した基本設計、検討結果を踏まえ、水素吸蔵合金を使用する低圧充填システムに高圧ガス充填システムを追加した水素供給ステーションの詳細設計を実施し、主要構成機器の詳細設計及び機器の調達を行った。また、各種水素ステーションの方式に対する技術指針を作成するための調査・検討に着手した。


7.2 平成12年度の研究開発成果

7.2.1 天然ガス改質型水素ステーション

(1) 改質型水素発生装置
 改質ユニットについては、平成11年度の基本設計に基づき燃料電池50kWクラスの改質部分を適用することとし、詳細設計及び製作を行なった。ユニット内の機器配置の見直しにより、本体サイズを1.75×3.1mと小型化を図った。PSAユニットの内、圧縮機に関しては種々の形式の圧縮機の比較検討を行い、効率等の点からレシプロ式圧縮機を選定し、詳細設計及び製作を行った。また、PSA装置の検討では、パッケージ化の観点から検討を行い、吸着塔3塔で水素回収率71%を維持できる目処が得られた他、オフガスタンクも50%減容できる結果が得られた。

(2) 水素吸蔵合金式貯蔵設備
 水素貯蔵設備の払い出し能力に関し、1/75スケール容器による試験を行いスタンバイ温度5℃、32℃で十分な払い出し能力を維持することを確認した。供給された水素量を計測する方法として、予想される熱媒温度毎に水素吸蔵合金のPCT線図を細かく測定しておき、熱媒の温度に応じたPCT線図を用いることで水素充填量を計測することを検討した。また、合金の不純物耐性に関する試験を行い、1,000サイクル後の吸蔵量の減少は初期の吸蔵量に対して約7%であり、再活性化により回復可能なレベルであることを確認した。上記試験と平行して貯蔵設備の詳細設計を行い、3月より製作に着手した。

(3) 燃料電池自動車(FCEV)とのインターフェイス確認事項
 2方式の水素ステーションの開発メンバー間でFCEVとのインターフェースに関する素案を作成し、参加自動車メーカとの調整を行った。水素吸蔵合金タンクへの冷媒供給圧力はタンク入口で0.2MPa以下、カプラ−サイズの小型化の要望が自動車メーカ側よりあったが、水素25Nm3を10分で充填するに必要な交換熱量を提供するには、さらに慎重な検討が必要である。車載水素吸蔵合金タンクに対する充填制御に関して、今回ステーションでは自動車との通信による制御は行わないこととなったが、正確な充填を行うには自動車からの充填量指示が必要となる。 

(4) MH充填設備
 自動車とのインターフェース条件の確認に基づき、設計条件の再検討を行い、チラーユニット(水冷式)、流量計、流量コントロール弁等の主要機器の選定と詳細設計並びにディスペンサーユニットの製作を実施した。

(5) 高圧充填設備
 自動車とのインターフェース条件の確認に基づき、設計条件の再検討を行い、詳細設計を実施した。主要構成機器として、圧縮機、蓄圧器、流量計、流量コントロール弁の機種選定を行い、この内、本年度製作分である圧縮機ユニットの製作を行った.

(6) 全体システム
<1>全体システムの検討
 各構成機器(改質型水素発生装置、水素吸蔵合金式貯蔵設備、MH充填設備、高圧充填設備)の基本仕様に基づき全体フローシート及び配置計画の再検討を行なった。また、ステーションにおけるユーティリティ使用量のまとめ、各設備の検討を行なった。
<2>集中制御システムの開発
 制御方法としては中央制御を用い、中央制御盤と各構成機器間における運転制御信号を確定した。インターフェース信号の入出力にはシーケンサ通信(MELSECNETlO)を採用した。
<3>ステーション建設工事
 ステーション建設工事に先立ち、高圧ガス変更許可申請及び建築確認申請に関する関係官庁への打診及び申請業務を行った。3月より、仮設工事を皮切りに、基礎及び土木工事に着手した。

7.2.2 固体高分子電解質水電解型水素供給ステーション

(1) 全体システム詳細設計
 今年度より高圧型充填システムが追加されたことにより、水素供給ステーション建設に当たって関連法規を再調査した。現時点では、水素供給ステーションは高圧ガス保安法の定置式製造設備のカテゴリーで建設することとなる。設備の安全対策として、各装置には水素漏洩監視用ガス検知警報器の設置、水素ディスペンサーには緊急停止スイッチの設置、集中制御盤の計装回路にはインターロック機構の設置、水素充填ホースは末端クイックカプラ−式(取外し時閉止機構付き)とすることなどとした。今年度は,水素ステーション設置予定地の整地を主目的とした工事を実施した。

(2) 水電解水素発生装置
 今年度は詳細設計を行い、純水装置、気液分離器、ガス精製器、冷却装置、直流電源装置などの導入を行った。平成11年度の計画に対する変更点は、<1>水電解セル数を75枚から50枚に変更し水素発生量は定格で20Nm3/hとなること、<2>水素の加圧は水素圧縮機を使用せず、水電解セルで加圧することなどである。

(3) 水素吸蔵合金型貯蔵設備
 構成機器である吸蔵合金容器、冷・温水タンク、クーリングタワー、電気操作・制御盤の製作及び各機器間の配管、配線工事を実施し、設備全体の製作を終了した。総水素貯蔵量は実際に製造して得られた水素吸蔵合金の性能が設計値よりも高かったことから78Nm3であった。また、水素吸蔵 速度は冷却媒体としてクーリングタワーからの32℃の冷却水を用いて、圧力0.5MPaGの水素に対し、30Nm3/hで水素を吸蔵することを確認した。また、水素放出において、放出に必要な80℃の温水を用いることにより、規定の水素放出圧力に達した後、約7分で25Nm3の水素を放出できることを確認した。

(4) 吸蔵合金型ディスペンサー
 ガス配管、ブライン配管・計装制御系統の設計・製作を実施し、ディスペンサー本体及び電気制御盤の製作を終了した。また、ブラインチラーにおいては、冷媒系統・ブライン循環系統・電気制御盤の設計・製作を実施し、機器全体の製作を終了した。

(5) 圧縮設備
 国内外のメーカ数社の圧縮機を比較検討し、国産化を念頭に、産業用の大型水素圧縮機にて多数の実績ある国内メーカーが開発を開始した水素供給ステーション用の圧縮機を採用することとした。

(6) 蓄ガス設備
 急速充填を実現するために、2分割(可変圧域、高圧域)のカスケード方式を採用した。本体の製作、水素ガス配管・計装用窒素ガス配管系統の配管工事、計装制御設備の電気配線工事を実施し、ユニット全体の製作を終了した。なお、水素ガス配管に関しては、関連法規に基づく検査を実施し、問題ないことを確認した。

(7) 高圧型ディスペンサー
 高圧型ディスペンサーには、25MPa充填用と35MPa充填用の充填ホースを設置する。外国製のカプラ−は高圧ガス保安法の適用が困難であるため、適用可能なものとして国産品を検討中である。

(8) 高圧充填システムにおける課題
 充填圧力35MPaの時の温度上昇シミュレーションを行った。10分間の充填でガス温度は75℃、容器表面は65℃上昇した。ただし、容器内ガス温度、圧力、容器温度は全体の平均値である。実際の充填においては,局所的にガス温度が高くなったり、容器内壁のほうが外壁に比べて温度が高くなると推測される。また、水素供給ステーションに採用を計画している樹脂製充填ホースの水素透過量の確認試験を実施し、35MPa時の水素の透過量は13〜14cc/h・m・atmと推測した。この量は、屋外の開放空間で充填作業することを考えると使用上問題ないと思われる。

(9) 遠隔監視システム
 水素ステーションの運転状態を監視しデータを収集するシステムは、管理棟の1階展示ホールの一角に設けたブース内に設置する計画であり、無線LAN方式によりデータを伝送・収集することに決定した。

(10) 実証試験方案
 平成13年度より開始を予定している実証試験についてその概略方案を検討した。

7.2.3 水素供給ステーション技術指針検討

 本年度は、天然ガス自動車プロジェクトにおける法的規制の緩和および整備の経緯を中心に検討を進めた。技術指針を製作するにあたっての大事なポイントを明らかにし、水素を取り扱う時の考え方を検討し示した。


7.3 今後の進め方および課題

 平成13年度は、前年度の詳細設計に基づき未製作の構成機器の製作を行うと共に、水素供給ステーションの建設を行う。また、ステーション完成後は、燃料電池自動車及び試験用模擬タンクと組合わせた実証試験を行う。さらに、水素供給ステーション技術指針検討を行う。
各部における次年度の実施内容、研究開発課題は以下のとおりである。

(1) ステーション用構成機器の製作
<1>2方式で各々未製作のステーション用構成機器の製作、据付、性能確認

(2) 水素供給ステーションの建設
<1>水素供給ステーション用構成機器及びユーティリティ設備を含む水素供給ステーションシステムの構築
<2>全体試運転調整による全体システム性能確認

(3) 実証試験の実施
<1>水素発生装置:運転データ収集・評価
<2>水素吸蔵合金式:最適充填条件(水素流量、圧力)、ブライン供給制御、満充填感知方法などの検討
<3>圧縮水素方式:最適充填条件(水素流量、圧力、車載タンク状態)、満充填感知方法などの検討
<4>全体システム:システム評価、安全性評価

(4) 水素供給ステーション技術指針検討
 水素供給ステーションのプロセス別に製造、貯蔵、充填の3つのワーキンググループを形成し、個々のワーキンググループにおいて検討すべき項目を抽出し指針作成を進める。



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