SEC 石油開発環境安全センター Home ENAA Top
新着情報 SEC概要 事業報告 SEC News 会員企業・関連リンク お問い合わせ アクセス 協会誌 サイトマップ

事業報告平成25年度大水深海底鉱山保安対策調査

戻る

(委託元:経済産業省)

1.調査目的及び概要

 本受託調査事業では、大水深海洋石油・可燃性天然ガス開発及びシェールオイル・ガス開発に係る保安対策の動向、必要なリスク評価の実施状況等について、関係諸外国等から情報を収集・評価するとともに、我が国鉱山保安法令と比較、今後の我が国が取り組むべき対策について考察し、必要な対策・提言等を行った。

2.調査内容

 本調査事業では、以下の(1)及び(2)のテーマを対象に、まずは実際に開発が進められている諸外国における現地調査を中心に、それぞれの開発に係る保安対策(保安技術、遵守すべき保安法令類、開発業界等におけるガイドライン類等)の動向、必要なリスク評価の実施状況等について、関係諸外国等から情報を収集・評価するとともに、我が国鉱山保安法令と比較、今後の我が国が取り組むべき対策について検討した上で必要な対策・提言等を行い、報告書としてまとめた。

(1)大水深海洋石油・可燃性天然ガス開発に対する保安対策

1)調査対象国及び調査対象機関
調査対象国:米国、イギリス、ノルウェー、ブラジル、オーストラリア、その他
調査対象機関:関係政府機関、海洋石油・可燃性天然ガス開発会社、関係業界団体

2)調査事項
(1)海洋石油・可燃性天然ガス鉱山開発における保安技術、遵守すべき保安法令類、開発業界等におけるガイドライン類等
(2)リスクマネジメントの実態とリスク評価方法
(3)環境汚染問題の現状と対策
(4)各種事故例と原因及び対策

(2)シェールオイル・ガス開発に対する保安対策

1)調査対象国及び調査対象機関
調査対象国:米国、欧州関係国
調査対象機関:関係政府機関、シェールオイル・ガス開発会社、関係業界団体

2)調査事項
(1)シェールオイル・ガス開発における保安技術、遵守すべき保安法令類、開発業界等におけるガイドライン類等
(2)リスクマネジメントの実態とリスク評価方法
(3)環境汚染問題の現状と対策
(4)各種事故事例と原因及び対策

3.調査結果に基づく考察

(1)大水深海洋石油・可燃性天然ガス開発に対する保安対策

【法規制等について】

  • 米国の特徴であるPrescriptiveな規制と欧州の特徴であるPerformance-basedな規制は、どちらかに優劣をつけるというものではなく、Case-by-Caseでそれらをうまく組み合わせて活用すると共に、その国・地域特有の文化を尊重する事もとても重要である。
  • イギリス、ノルウェー、米国、オーストラリア、並びにブラジルの法規制について、日本と比較(AppendixのDeepwater:鉱山保安法との比較対照表)すると、特に日本の鉱山は環境影響評価法の適用外であるが、鉱山保安法令の中で、現況調査として、鉱山周辺の状況等につき調査することとなっているが、環境影響評価法と違って、詳細な調査項目は規定していなく、それは、各鉱山の自主性を重んじ、高い能力が要求されていると思料する。

【設備について】

  • 海底BOPについて
    米国メキシコ湾Macondo事故後、海底BOP機能の向上について議論が高まり、ヒューマンエラーにより幾重にも設けたセーフティーバリアをすり抜けて事故・災害に至ったとの情報もある。APIは、2010年の事故を踏まえて、海底BOP機能拡張に関するAPI規格の見直しを2012年に実施している。
  • CAPPING SYSTEMについて
    米国メキシコ湾Macondo事故以後、海洋汚染防止の一環として、メキシコ湾における石油・天然ガス探鉱活動では、海底BOPが機能しない場合に備えて、暴噴時の油濁拡散防止と坑井抑圧を目的としたCAPPING SYSTEMが義務化された。
  • ROVについて
    欧州現地調査に依れば、海洋における石油・天然ガス開発の送油・送ガスパイプライン設備の維持・メインテナンスにおいてROVを使用しており、近い将来には、umbilicalを使用しないAUV(Autonomous Underwater Vehicle)の組み合わせ使用の動きもある。

(2)シェールオイル・ガス開発における保安対策

  • 米国の企業は、モニタリング・データも可能な範囲で公開し近隣住民との共生に最大限努めている。なお、調査途上において、カナダにおいてもシェールオイル・ガスの開発が進んでいるとの情報を得た。イギリスでは、シェールオイル・ガスの開発において、一度のみのハイドロリック・フラクチャリングに対して、世界中の事故例を収集し万全の対策に取り組んでおり、基本的に推進姿勢であり、実績がほとんど無いという意味で、日本とほぼ同じスタートラインに立っている。
  • シェールオイル・ガスの商業化が進んでいる米国の主な州の具体的な規制について、日本と比較対照(AppendixのShale Oil & Gas:鉱山保安法との比較対照表)したところ、水質調査や廃水規制等で日本と同様な環境関連の規制が行われていることがわかった。様々な環境及び社会的なリスクが指摘されていたが、主なリスクは、環境に関連した帯水層(地下水・地表水)汚染リスクと微小地震誘発リスクである。
  • 在来型の石油・可燃性天然ガス技術の応用である水平掘りとハイドロリックフラクチャリングの技術やその影響を分かり易く技術的に説明する普及活動、公聴会、並びに説明会が開催されているとの情報を得ており、地域住民の理解を得て開発を進めることが非常に重要である。

4.我が国の今後の課題

(1)大水深海洋石油・可燃性天然ガス開発に対する保安対策

【法規制等について】

  • 新規開発国の情報の把握について
    日本と同様に大水深開発を目指すアフリカのような新規開発国における法令制度、開発技術、並びにリスクマネジメント等実態を把握し、諸外国の各情報と日本の開発環境を比較する必要がある。
  • 環境影響評価と必要な保安措置について
    日本の大水深における海洋石油・天然ガス開発を環境に配慮して安全に進める上で、大水深での掘削実績のある海域を対象として、海底地形・海底生物・流況等の特有の環境データを把握し、環境影響評価と必要な鉱害等に対する保全措置を策定すると共に、メキシコ湾(Macondo)での事故のようなことが日本で発生したことを想定し、迅速な措置対策を講じられるよう、予め、模擬的に海底の坑井等から漏油が発生し、拡散挙動について海底地形・流況等のデータによりシナリオ設定を行って最適な保安措置は何かを検討する必要がある。

【設備について】

  • 海底BOPの詳細な情報の収集
    大水深開発の先行国における海底BOPのより具体的な仕様等(BOPの構成、構造、制御システム、保守監理、作動試験方法、緊急時作動システム、信頼性・冗長性確保、噴出の前兆(キック)を検知するシステム及びその解析技術、キック流体排出装置、作業員の教育訓練、ウェルコントロール及びドリルステムテスト作業手順)を把握した上で、日本国内での的確な運用を図る調査が必要である。
  • CAPPING SYSTEMの詳細な情報の収集
    CAPPING SYSTEMは、海底BOPが機能しない場合、被害拡大を最小限に食い止める漏油拡散防止対策の手段の一つとして、導入が進みつつあるシステムであるが、各国におけるCAPPING SYSTEMに関する規制等が定まっていない現状を踏まえ、大水深開発の先進国におけるCAPPING SYSTEMの運用について、海底坑口方式と海上坑口方式との相違点、機器の構成と要求仕様、制御システム、緊急時作動システム、信頼性・冗長性確保、操作技術、作業手順、設置および廃坑作業等を調査した上で、日本での運用について検討する必要がある。
  • ROVの詳細な情報の収集
    日本国の大水深の開発における危害防止及び鉱害防止対策のROVの的確な運用につき検討するためには、各国の先進事例(掘削・仕上げ時および漏油対策時における作業内容、ワーククラスROVの要求仕様、操作技術、作業手順、緊急時対応)について、更なる調査を実施する必要がある。

(2)シェールオイル・ガス開発における保安対策

  • 調査対象国の拡大
    調査対象として米国を中心に調査したが、カナダにおいても、日本の石油開発会社が参画していることを知る限り、今後、カナダの情報も把握することは意義がある。
  • 帯水層汚染リスクと微小地震誘発リスクの削減
    シェールオイル・ガスの開発における環境関連の主なリスクである帯水層汚染リスクと微小地震誘発リスクを削減するためには、事前に地殻構造を十分に調査して帯水層の存在と性状を把握した後、ケーシングパイプを的確な深度に降下してセメンチングで遮蔽することで帯水層を確実に保護してゆくことが必要である。
    フラクチャリングの伸張方向と付近の断層を把握して作業計画を定めると共に、事前に作業中断の判断基準を定め、微小地震をモニタリングして、基準を超えた誘発地震の兆候が見られた場合には直ちに作業を中断するような監視体制を定めることが必要である。
  • 地域住民の理解
    シェールオイル・ガスの開発における地域住民の理解は非常に重要であるため、事業者は、会社のステークホルダーへの説明はもちろんのこと、事業を展開する地域の住民への事前、経過、並びに事後の説明会等において情報を開示し、理解を得た上で、開発生産作業を進めることが必要である。

PAGE TOP
Copyright(C) 2009 Engineering Advancement Association of Japan. All Rights Reserved.