各サブタスクの平成10年度の成果概要


8.3 タービン翼・ロータ等主要構成機器の開発

8.3.1 研究開発目標

8.3.1.1 研究目標

 タービン翼、ロータ等主要構成機器の開発に関する調査、要素技術開発を行い、パイロットプラント開発に必要な基礎技術を確立する。

8.3.1.2 研究範囲

 水素利用技術の一つとして、環境性に優れかつ画期的高効率が期待できる水素燃焼タービンに関し、調査研究とパイロットプラント開発のために必要な技術開発を行う。
 タービン動・静翼冷却技術では、平成8年度に実施した中間評価において発電効率60%(HHV基準)達成のため、1700℃高温水蒸気条件に対応する冷却方式として、選定された3種類の翼冷却方式に対し、必要な要素試験、翼詳細設計及び一部製作を実施した。平成10年度は冷却翼評価試験用試験翼及び試験装置の設計・製作を実施するとともに、3種類の冷却翼について評価試験を行い、最適なタービン翼冷却方式の評価・選定を行う。
 また、ロータ冷却技術では、水素燃焼で生じるタービン主流蒸気の巻きこみ現象解析のため、数値流体解析(CFD)に基づくロータディスクキャビティ温度解析手法の開発及びロータ基本構造とそれに基づく基本シール条件の検討を行い、ロータ冷却技術の総括を実施する。

8.3.2 平成10年度研究成果

(1)タービン翼冷却技術の開発

  1. 試験概要

    (イ)冷却翼評価試験は平成10年10月から12月にかけて約3ヶ月間実施した。
    試験条件は実機との相関性を考慮し、タービン翼長さは実機の半分程度の約35mmから40mmとし、熱流束及びレイノルズ数は実機と相似則の適用が可能なオーダーに設定した。試験条件の詳細を表8-3-1に示す。

    (ロ)試験翼の主な仕様は以下の通りであった。詳細については表8-3-2に示す。

    • 水冷却方式:静翼の水冷却には銅合金(CZ-Cu)、動翼には単結晶ニッケル合金を用い、TBCにはジルコニアーイットリウム(Zr2O3-Y2O3)をトップコートとして一部に減圧物理蒸着法による施工を採用した。

    • 完全回収式内部冷却方式:動・静翼とも水蒸気の完全回収型の冷却方式であり、翼材にはコバルト基超合金を用いた。TBCは従来型のもので厚さを0.5mm(トップコート)と通常の2倍の厚さを採用した。

    • 回収式
       内部冷却方式:一部フィルム冷却のある回収式蒸気冷却で評価翼には第二世代材料のニッケル基単結晶合金を採用し、TBCの施工に減圧物理蒸着法を採用した。

    (ハ)評価試験は動翼、静翼とも安全性を考慮し、1000℃、1200℃、1500℃、1700℃と徐々に昇温するとともに、各ステップにおける温度、圧力、冷却量等評価に必要な測定を実施し、最終的に1700℃において20分程度の計測が可能な計画とした。

  2. 試験結果

     計測時間に若干の差異は生じたものの、各方式とも1700℃における試験データを採取した。また、短時間ではあるがTBCの健全性を確認するとともに、試験結果を用いた再計算により、プラント効率60%以上の達成を立証した。各方式の主な試験結果を表8-3-2に示す。

    (イ)水冷却に対しては一部蒸発の可能性を示すデータがあったが、メタル温度300℃以内の達成及び設計値との相関性の検証が出来た。

    (ロ)完全回収式内部冷却では、一部900℃を超える部位があったが、全体としてメタル温度が820℃以下であり、設計値を下回った。

    (ハ)回収式内部冷却(ハイブリッド冷却)では一部に設計予測値より高い部分が認められたが、全体として設計値との相関が認められた。

  3. タービン翼冷却技術の評価結果
     冷却翼評価試験、各社の工場試験及び固有の設計能力について各委託先の評価を実施した。その結果は東芝83.31、日立83.01、三菱重工業82.13の順となった。
     しかしながら冷却評価(田代試験)では日立、東芝、三菱重工業の順、冷却評価(総合評価)では三菱重工業、日立、東芝の順、構造成立性〔総合評価〕では東芝、日立、三菱重工業の順と評価が分散した点には考慮を要する結果となった。評価結果の詳細を表8-3-2に示す。

  4. 今後の課題
     以下の課題について検討を実施する必要があると考えられる。

    1. 空力性能確認のための、回転体試験の実施。
    2. TBCの長時間耐久性確認及び確認手段の開発
    3. ロータ冷却技術等含んだタービンシステムとしての効率、信頼性等の検討
    4. 信頼性ある高温温度計の開発

(2)ロータ冷却技術の開発

  1. ロータ冷却シール機構と計算機予測手法の開発
     タービン主流の擾乱による巻き込みが、ロータ冷却及びシール量に与える変化に対する計算機数値解析手法の開発を実施した。図8-3-1に示す様に擾乱の要素として不均一燃焼の擾乱及びロータの偏心による擾乱が存在することから、シール出口周辺の3次元的擾乱を想定した巻きこみ発生量の数値解析を行った。図8-3-4に解析結果を示す。3次元的解析結果より、ロータ冷却設計法について3次元擾乱を考慮し、図8-3-2に示す主流条件のパラメータを加味したロータ冷却系の設計フロー(図8-3-3)の構想を構築した。

  2. ロータ冷却技術の開発
     ロータ基本構造についてその基本形状設計、体格強度の検討及びロータディスクの最適冷却設計を実施した。また、システムから要求されるシール性能と現状のシール形状におけるデータを比較した結果、500MW水素燃焼タービン発電所において61.8%の計画効率を60.1%と下方修正する結果となった。シール性能性の目標に対する現状シールとの比較検討結果を表8-3-3に示す。またロータ系の最適ディスクを組み入れた蒸気フローモデルを図8-3-5に示す。

  3. 今後の課題
     今後の課題としては以下の検討が必要と考えられる。

    1. 高温高圧下における計算機数値解析の精度検証
    2. 実機を想定とした熱流動、構造の連続解析等
    3. システム性能向上のための、新規シール構造の開発
    4. シール蒸気流路での機械的強度の詳細解析



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