各サブタスクの平成10年度の成果概要


8.5 超高温材料の開発

8.5.1 研究開発目標

 WE-NET計画では、水素利用技術の一つとして、環境保全性に優れ、画期的な高効率が期待できる水素燃焼タービンの開発を行っている。そのため、第I期においては、タービン入口温度1700℃の下で、発電効率60%以上を達成しうる最適なサイクル、燃焼制御方式及びタービン翼冷却構造を決定するための検討とともに、補機類に関する調査及び概念設計並びにタービン入口温度2000℃を目標とした超高温材料に関する基礎研究を行っている。超高温材料技術については、既存材料の改良や革新により、水素燃焼タービン部品への応用に必要な超高温材料を明らかにするため、各種材料の加工技術、材料特性評価ならびに構造設計適用の基礎的検討を行っている。
 第 I 期(平成5〜10年度)の6年度目にあたる平成10年度は、水素燃焼タービンへの適用可能性が期待される耐熱合金、セラミック系複合材料および炭素系複合材料を対象に、平成5年度に抽出した技術的課題を踏まえ、材料設計・試作ならびに試験・評価を行い、これら超高温材料の基本特性と今後改善すべき問題点を明らかにした。

8.5.2 平成10年度の研究開発成果

(1)高性能超合金単結晶およびハイブリッド冷却翼材料の開発

  • 高性能超合金単結晶に関して、開発材の中で最も優れた高温強度を有する合金成分にHfを添加した単結晶(SC)材の試作を行い、強度の改善が期待できる組成制御方法、熱処理条件を選定すると共に、高温強度特性等を明らかにした。

  • 繊維強化セラミックス(FRC)に関しては、遮熱特性が期待される液相含浸焼成法による材料試作を行い、製造プロセス条件を選定すると共に、製作した試験片による強度特性、熱的特性等を明らかにした(図8-5-1)。

(2)耐熱合金冷却翼用遮熱コーティング(TBC)の研究(図8-5-2

  • 多多孔質セラミックスコーティングによるトランスピレーション冷却構造モデルの冷却特性を伝熱計算により明らかにしその成立性を検討した。

  • 多孔質セラミックス遮熱コーティングの溶射施工条件の最適化を図るため、ジルコニアコート炭素粉末とジルコニア粉末、1:1の混合粉末を用いて種々の溶射条件で施工した結果、気孔率および密着強度の差異を確認した。

(3)セラミック系複合材料(CMC)の開発

  • セラミック系複合材料の耐熱性・耐環境性向上のために、HIP法を適用した前駆体法の複合材料ならびに緻密な構造が期待できる反応焼結法でマトリックスを形成した複合材料を試作し、1300℃および1500℃での長時間耐環境性評価を実施した結果、高密度の複合材料の優位性を確認した(図8-5-3)。

  • 円筒形状モデル部品の試作により、部品レベルでの製造技術の見通しを明らかにした。耐食コーティング技術では、Al2O3耐食コーティング層と、ZrO2およびHfO2の遮熱コーティング層を多層に形成した試験片を作製し、1300および1500℃での長時間耐環境性を明らかにした。

(4)セラミック系多重構造材料の開発および超高温複合環境下破壊挙動の解析

  • セラミックス系多重構造材料(図8-5-4)では、JFCC芯部材料(SiCf/Si3N4m)と中間部材料(東芝開発材:SiCf/SiCm)からなる集約材を試作・評価した結果、熱処理を行うことで高温でのヤング率の向上を確認した。

  • 表面部候補材である酸化物(YAG、Al2O3)をコーティングした中間部材料(SiC)の高温水蒸気環境下における損傷挙動を解析した結果、腐食生成物と上記酸化物が反応し液相が形成されると、腐食に対する保護膜効果が著しく低下することを確認した。

(5)3次元織物繊維強化複合材料の開発

  • 直交3軸3次元織りにより繊維の種類や配向の異なる4種類のC/C供試材を試作し、3次元織繊維強化複合材料の部品製造法に向けての目処を確認した。

  • 供試材より加工した試験片を用いて室温および2000℃で引張試験を行い、繊維の種類、繊維配向、温度と引張強度の相関について検討し、将来の翼設計・材料設計に向けた有効な基礎データを明らかにした(図8-5-5)。
(6)超高温材料基本特性評価技術の開発
  • 力学特性では、C/C複合材料の短冊型試験片にスリットを加工し、高温引張負荷時のスリット先端における初期破壊のその場観察方法を確認した。

  • 物理特性では、レーザフラッシュ法でレーザ光の吸収率を上げるために使用している黒化膜をSUS304の表面に形成してその放射率測定を試み、黒化膜の放射率測定が可能なことを確認した。また、2000℃近辺での固相反応過程を高温X線回折装置により測定できることを確認した。

  • 化学特性では、高温高圧水蒸気雰囲気酸化試験装置開発のための検討を行った。

8.5.3 今後の研究開発課題

  • 現段階では要素研究としての材料開発が主であり、素材レベルでは充分適用可能と判断されたが、その実用化のためには部材化に必要な問題点である耐環境性、耐久性、信頼性の評価を実施し、大型化を含めた部品としての成立性を検討することが必要である。

  • いずれの材料についても、耐熱性・耐環境性および高温長時間の耐久性の確保のため、適切なコーティング材料の開発・実用化が不可欠であり、コーティングを施した傾斜機能材料が部材を形成する。



Copyright(C) 1998-2003 New Energy and Industrial Technology Development Organization