各サブタスクの平成6年度の成果概要


2.サブタスク2 国際協力推進のための調査・検討

 本調査研究は、WE−NET計画を真の国際共同プロジェクトヘと発展させるための関係諸国との協力体制のあり方、国際的技術情報交換の方策を明らかにするものである。
 平成5年度は、類似プロジェクトの調査等により、WE−NETにおける国際協力推進のために必要となる課題の抽出・整理を行った。
 平成6年度は、前年度の検討をべースに、WE−NETにおける国際協力を実現していくための発展段階として、以下の項目における調査・検討及び施策の実施を行った。

1.WE−NETへの国際的な理解と協力を得るための施策
2.国際的技術情報交換を推進するための施策
3.国際的なネットワークを形成するための施策
4.国際協カの長期ビジョン策定のための検討
5.カナダ・アラスカからの水素導入可能性に関するケース・スタディー
6.カナダにおける水素エネルギー研究開発計画の概要

 以下、概要を記す。

2.1 WE−NETへの国際的な理解と協力を得るための施策

 WE−NETは国際協力を前提としたプロジェクトであることから、WE−NETの構想が海外の機関・関係者に広く、正しく理解されることが、協力を得る前提として重要である。従って、WE−NETの基本的考え方を海外にPRするために必要な施策の立案と実施を本年度の重点課題として取り上げ、以下を実施した。

(1) WE−NET計画周知のための英文資料の作成と配付
 WE−NETの概念、全体構想、技術開発課題及び研究開発成果を広く世界にPRし、WE−NETへの理解を深めるための資料として、英文パンフレットと平成5年度成果報告書要約集を平成7年2月東京で開催されたNEDO主催による水素利用クリーンエネルギー国際シンポジウム(IHCE '95)の参加者及び海外関係者に配付した。

(2) 国際会議での発表
 WE−NETの内容を海外に紹介する場として、世界各地で開催される国際会議やシンポジウムが有効である。このため、今後開催される水素技術関連の国際会議を調査すると共に発表方法の検討を行った。発表の時期としては、平成8年6月にドイツで開催される第11回世界水素エネルギー会議が最適であり、それに焦点を合わせ、各サブタスクヘの働きかけを行った。

(3) 国際シンポジウムの開催
 水素利用クリーンエネルギー国際シンポジウム(IHCE '95)の開催に際し、国際協力事業の一環として運営の全面的なバックアップを行った。シンポジウムの参加者総数434名のうち、海外からの参加は、11ケ国50名にのぼった。WE−NETの全体計画、技術開発内容の講演に加えて、ポスターセッションでは各サブタスクの具体的研究開発内容が紹介され、WE−NETの現状の理解を促した。シンポジウム及びその後の技術交流会を通じて情報交換が行われ、今後の協力関係を構築するための基礎を築くなど大きな成果を得た。

2.2 国際的技術情報交換を推進するための施策

 WE−NETを国際的な協力の下で国際的共同研究へと発展させて行く上では、関係各国と密接な連携を図りながら、関係機関との定期的情報交換および協議を実施していくことが不可欠となる。国際的技術情報交換を推進していくための施策立案の基礎として、海外の水素関連技術の研究機関の状況調査、IEAを含む技術情報交換の現状調査、国際会議における発表状況の把握等から、技術情報交換の在り方と実施のためのシナリオの考察をおこなった。
各国研究機関の調査では、分野別・地域別に延べ339の水素関連技術の研究を実施している機関・企業をリストアップした。
 技術情報交換の現状としては、本年度、(1) Canadian Liquid Air社、(2) Daim1er-BenzAerospace社およびAirbus社、(3) Stanford大学との技術交流会が開催され、関連サブタスクとの意見交換が実施された他、各サブタスクより9件の海外調査が実施され、各関係先との情報交換が行われた。また、IEAでは、水素執行委員会を始めとして、太陽光による水素製造、統合システム、金属水素化合物の3つのワークショップで多国間協力が進められており、通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画推進本部を中心に交流が図られている。
 また、本年度開催された、水素エネルギー技術に関する主要な国際会議として、第10回世界水素エネルギー会議および第6回全米水素会議における発表状況をまとめた。

2.3 国際的なネットワークを形成するための施策

 前章でも触れたように、WE−NETは国際的な理解と協力のもとで成立するプロジェクトであり、諸外国機関の参加と協力のもとで開発を推進する体制を整備することが、その効率的推進には不可欠である。この前段として、相互の理解を促進し、プロジェクトの方向性、役割分担を考察できるような国際的ネットワークを様々なレベルで形成することが重要となる。
 このため、第10回世界水素エネルギー会議で発表された論文等に基づき、アメリカ、カナダ、ドイツ等水素エネルギーの開発に積極的な国々に於ける政策、開発状況を調査するとともにWE−NETに対する海外の意見を分析することで問題点・課題の抽出を行い、国際的なネットワークを形成するための方策を検討した。
 この方策の具体例としては、WE−NET国際フォーラムの設置が挙げられるが、その構成等詳細は、今後、長期ビジョンの策定と併せて、更に詰めて行くことが必要となる。

2.4 国際協力の長期ビジョン策定のための検討

 上述のような各種の要件を満たしながら、WE−NETを国際共同プロジェクトヘと発展させて行くためには、長期的なビジョンに基づいた、戦略的な施策の展開が必要となる。
 先ず、その前提となるのは、

  1. 関係各国が問題意識を共有し、その趣旨に賛同できるようなプロジェクトのフィロソフィーの明確化
  2. 関係各国がプロジェクトヘ参加し、協力していくことで得られるメリットの明確化
  3. 関係各国のエネルギー・環境政策との整合性を確保し、且つ、協調によりシナジー効果が得られるような展開シナリオの明確化
    である。
 また、国際協力を具体化する上で、例えば、先端科学技術協力面では、研究者のシンメトリカルアクセスの問題、資金の裏付け、権利の保護、途上国協力面では、援助体制、形態、内容といった種々の課題が存在する。これらの課題を更に整理し、それぞれに応じた施策をその実施のタイミングと併せて検討し、長期ビジョンとして策定することが今後の課題となる。

2.5 カナダ・アラスカからの水素導入可能性に関するケース・スタディー

 WE−NETで想定されている海外からの液体水素によるエネルギー輸送の検討の一助とするため、カナダ水素工業会(HIC)に依頼し、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州(B.C.州)およびアメリカ、アラスカ州から液体水素を日本へ輸入する場合のコスト試算を実施した。
 試算は、水素の製造・液化コストに1,000km相当の送電ライン、海上輸送、貯蔵・港湾施設、移送ロス等を加味して行われ、結果は以下の通りとなった。

ケースB.C.州アラスカ州
1GW25.52 円/Nm3−GH234.65 円/Nm3−GH2
4GW23.56 円/Nm3−GH232.64 円/Nm3−GH2

 B.C.州とアラスカ州における水素製造コストの差は、それぞれの州で設定されている水力発電コスト(B.C.州:3CA¢/kWh、アラスカ州:5CA¢/kWh)の差によるものである。
 また、B.C.州において、最低コストシナリオを実施するには、1GWケースでCA$3,785百万、4GWケースでCA$11,253百万の投資が必要と考えられる。

2.6 カナダにおける水素エネルギー研究開発計画の概要

 主要各国の水素エネルギー計画に関する調査を補完するため、カナダ水素工業会(HIC)に依頼し、カナダにおける水素エネルギー研究開発計画の概要をまとめた。
 カナダの水素エネルギー開発に関する戦略は、以下の3つの要素により定義される。

  1. 天然のエネルギー資源に基づく開発であること
  2. 世界をリードする水素技術の開発に重点を置くこと
  3. クリーンエネルギーの世界への供給に関し、国際的なパートナーシップを促進すること
 カナダにおける水素開発の一例として、アルバータ水素リサーチプログラム、 EQHHPP計画等のプロジェクトや水素分野で積極的に活動している企業を紹介した。



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