各サブタスクの平成10年度の成果概要


5.4 各種共通機器類の開発

5.4.1 研究開発目標

 液体水素の大量輸送・貯蔵必要な各設備に共通する機器類に関して、技術開発項目を明確にすることを第 I 期の目的とした。
 大型液体水素ポンプには長時間安定して液体水素を供給出来る事が要求される。一方、作動流体である液体水素は温度20K、密度71kg/m3の極低温流体で、且つ粘度が1.3× 10−5kg/m・s以下の極低粘性流体でもあり、軸受けは厳しい潤滑環境にさらされることになる。
 この軸受けの一つとして磁気浮遊ベアリングがある。平成10年度は、平成9年度に製作した供試体にポンプの吸い込み特性の改善のため、インデューサーを組み込み単体試験を行う。また、センサー用のフィードスルーを開発し、液体水素中での単体試験を実施する。

5.4.2 平成10年度の研究開発成果

5.4.2.1 改修内容

 新たに設計したインデューサーの仕様および形状を図5.4-1に示す。インデューサーは水素ポンプの入り口側に設置され、ポンプ吸い込み特性を改善させた。 また、今回製作したフィードスルーを図5.4-2に示す。 今年度試作したものはセンサーケーブル用として開発した。
 コントローラについては昨年度は治具コントローラとして製作したが、今年度は、昨年度の成果を踏まえ、専用コントローラとして製作した。

5.4.2.2 単体試験

 本年度改修した供試体を用いてLN2試験及びLH2試験を実施した。試験装置を図5.4-3に示す。

(1)磁気軸受け試験

[常温試験]
常温での磁気軸受けの特性データを取得後、回転試験を実施する。

[LN2試験]
LN2温度での変位センサー及び電磁石の特性データを取得後、回転試験を実施する。

[LH2試験]
LH2温度での変位センサー及び電磁石の特性データを取得後、回転試験を実施する。

(2)フィードスルー単体試験
 図5.4-4に試験装置を示す。LH 2温度でのフィードスルーの周波数特性及び漏れ量の評価を行う。

(3)試験結果

 常温、LN 2、LH 2温度でセンサー及び電磁石特性を確認した。また各温度で浮上試験を実施して安定に浮上することを確認した。
 次に定格回転数36,000rpmを目指して、回転試験を行った。
 LN 2試験(77K)では、最高18,000rpmまで回転させた。軸振動は10,000rpmで危険速度を通過したが軸振動は30mmp-p以下であり通過後で20mmp-p以内に収まっている。
 LH 2試験(20K)では最高26,000rpmまで回転した。図5.4-5に危険速度時及び通過時の軸振動の様子を示す。危険速度通過時での20mmp-p以下である。
 また、LH 2試験でのポンプ吐出圧の変化を図5.4-6に示す。24,000rpmまでは、回転数が上昇するにつれてポンプ吐出圧も上昇している。なお、26,000rpm付近にガス吸い込みと思われるポンプ吐出圧の一時落ち込みがあるがすぐに回復しており、インデューサーを負荷することにより吸い込み特性を改善することが出来た。
 また、26,000rpmを超えたところ、軸がケースと接触したため停止させた。軸振動が増加するとともにコイル電流が増加している。軸振動が増加した原因は現在調査中である。
 今回の試験で得られたポンプヘッドー流量特性を図5.4-7に示す。設計ヘッド1,320mに対して84%の約950mのポンプヘッドがあることがわかった。
 フィードスルーについてはLH2温度で機能試験を実施して5kHzまでの周波数特性を取得したが、ゲイン=1 位相=0°であり、良好な周波数特性であった。また、60kgf/cm2をかけてのHeリーク試験を実施したところ、1×10−9atm・cc/s 以下であり、要求を満足している。

5.4.2.3 まとめ

 以下に今年度の試験で得られた知見を示す。

  1. インデュサーを設置することで極低温環境下で24,000rpmまで安定に回転させることが出来た。
  2. ポンプデータを取得することが出来た。
  3. 軸の危険速度が10,000rpm付近にあり、危険速度通過時の振動レベルを30mmp-p 以下に抑えることが出来た。
  4. 26,000rpmでの軸の不安定現象については原因追求を実施中である。
  5. 今年度試作したフィードスルーについて液体水素温度環境下で機能要求を満たすことを確認した。

5.4.3 今後の進め方及び課題

 平成10年度に引き続いて液体水素ポンプ磁気軸受け部の要素試験を実施する。来年度は軸振動の原因を究明し、36,000rpmまでの試験を実施する。



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