地下を利用した浮体式免震システムに関する交差研究
(平成14年度)
活動要旨:
1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震以降、免震建築の重要性は社会的にも、さらに広く認知されるようになり、免震構造を導入する施設が飛躍的に増加するとともに、免震性能を向上させるための技術開発が活発に行われるようになってきています。
現在、免震構造の最も一般的なタイプは、建物の上部構造を基礎と切り離して、その間に積層ゴムやダンパーなどを組み込んだ形で建物を支持する「基礎免震」と呼ばれている
ものであります。
これに対して本研究の「浮体式免震システム」では、地面との絶縁体として水を利用し、建物を浮力で支持させることにより、免震のコンセプトの原点である「地面から浮いた建築物」により近い構造の実現化を目指しております。
兵庫県南部地震の被害報告からもわかるように、極めて稀に起こる巨大な地震に対しては構造的な被害を防ぐのみならず被災地も機能を維持すべき必要のある施設は数多くあります。たとえば、病院・防災センター・消防署・警察署・通信施設などの「被災時にも機能維持が求められる施設」、公民館、児童館、福祉施設、学校などの「近隣住民が安全に避難できる施設」、データセンター、美術館、博物館などの「資産価値の高い施設」などが挙げられます。本研究は、これら地域総合防災上重要となる施設を巨大地震から守り、人々が安心して暮らすことのできる街づくりへの貢献を念頭に置いたものであります。
また、地下40mのシルト層の上に設置される地上5階、地下1階の病院をモデルケースとして概略設計を行っています。その結果、係留・支持部の剛性および減衰性能を適切に設定すれば、高性能な免震効果が得られるとともに、常時の居住性にも問題が無く、総建設コストも従来の免震法を用いる場合とほぼ同等であり、「浮体式免震システム」は技術的にも経済的にも十分に成立する可能性があることが明らかになりました。
委員長 渡邊 英一(京都大学教授)
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