各タスクの平成11年度の成果概要 |
9. タスク9 液体水素輸送・貯蔵技術の開発 9.1 液体水素輸送・貯蔵設備の開発 9.1.1 研究開発目標 9.1.2 平成11年度の研究開発成果 9.1.2.1 断熱性能試験装置の改造 (1) 高熱板の改造:接触タイプ(装置20K面と試験体が接触するタイプ)試験体を対象として、保護・測定容器の底面と試験体との接触負荷荷重を、現在の3.92 x103 N(=400kgf)から2.94 x104 N(=3ton)に増強するために、高熱板の改造と測定容器、保護容器の剛性強度チェックを実施した。 (2) 緊急遮断システムの追加:断熱性能試験において試験体放出ガスの排気のための真空引きが1か月に及び、この間、停電・断水が発生し、真空度が劣化する場合があり、この事態に対応する本緊急遮断システムを取付けた。 (3) 質量ガス分析計の追加:試験体放出ガスのデータ収集を目的とした質量ガス分析計(四重極ガス分析計)を真空容器に取付けた。質量流量計の追加:試験体の検査面を通過する熱負荷に応じて定格流量100l/min (67W相当)の大流量測定用及び定格流量5l/min(3.3W相当)の小流量測定用質量流量計を設置していたが、中流量測定用として定格流量20l/min(13W相当)質量流量計を取付けた。上記試験装置改造後、バックグランド試験を実施した。 本装置は熱保護平板カロリーメータ方式を採用しており、試験体検査面を通過する熱流(Qm)を蒸発量で測定換算する。この熱流以外の外部入熱が誤差要因となるので測定容器への外部入熱を測定した。結果は0.1W 〜0.2Wで非常に小さい。また、気圧変化に対する蒸発量変化を確認した。平均蒸発量は約0.15〜0.3Nl/min(0.1W〜0.2W相当)であるが、蒸発量変化の傾向として気圧が減少すると蒸発量が増加し、気圧が増加すると蒸発量が減少する傾向にある。気圧の増加する期間において気圧の微少な増減変動と蒸発量の増減変動が一致している 9.1.2.2 断熱構造試験体の設計、製作 (1)固体真空断熱構造試験体(常温側目地付き) 固体真空断熱構造試験体はポリウレタンフォーム(PUF)を使用した目地付き試験体で、高温面との間隙を保持した状態でタンクに取り付く。目地部の位置を計算パラメータとした伝熱解析を実施し、目地部の熱影響が検査面(測定容器の底面)内に収まる目地部の位置(中心から200mm)を決定した。 (2)メンブレン積層真空断熱構造試験体 メンブレン積層真空断熱構造試験体はFRP管支柱と積層断熱材からなる複合試験体で、FRP管構造について、熱伝導入熱低減を目的としてFRP管熱応力、強度解析を実施し、単管形状から多重管形状に変更した。積層断熱材としてアルミ両面蒸着ポリエステルフィルムを使用して、測定容器・保護容器の低温面(20K面)、多重管フランジ部(20K面)、胴部に取り付けた。 (3)真空パネル型断熱構造試験体 真空パネル型断熱構造試験体は、ポリウレタンフォーム(PUF)を収納した真空パネルで、目地部にポリウレタンフォームとグラスウールを使用した。試験体側面での熱流入、目地部、容器等と試験体間の熱接触抵抗の影響を確認するために、伝熱解析を実施した。 (4)真空積層断熱構造試験体 実機タンクの真空積層断熱構造を検討し、実機を模擬できる試験体形状を検討するとともに、断熱性能試験における測定誤差の要因検討と、技術課題の抽出を行った。 9.1.2.3 断熱性能試験結果 (1)固体真空断熱構造試験体 平成10年度性能試験を実施した固体真空断熱構造試験体(目地なし、接触タイプ)について、半径方向の熱流束を考慮して昨年度解析の熱伝導率を補正し、試験体と容器間の熱接触抵抗を検討し、試験体表面粗さと熱抵抗の関係を推察した。低温面(20K)と試験体の間に空隙を設けてセットした固体真空断熱構造試験体(低温目地付き)について熱伝導率を求めた。解析値より高めになったが、その原因としてウレタンフォームの発泡ガスが十分排気されなったことが考えられる。 (2)積層真空断熱構造試験体 積層真空断熱構造試験体(FRP多重管)は、容器底面(20K面)に多重管フランジの半径方向を許容するボルト取合とし、積層断熱材の測定容器と保護容器の底面に両面テープで接着した。熱流束(熱伝導率)は解析値より5〜6倍多く、その原因について試験後に開放した結果、積層断熱材から脱落し高温側に接触していたことが判った。 9.1.2.4 断熱材の圧縮強度試験 9.1.2.5 タンク支持構造の検討 (1)角型タンク 今後の取り組み課題について検討した。 (2)球形タンク 概略設計したタンク支持構造に対して静的荷重条件で降伏強度評価を行った。結果として温度荷重がスカート部の上下方向の板表面応力に影響しており、荷重レベルが非常に低いことがわかった。 9.1.3 今後の進め方および課題 近い将来の燃料電池自動車の普及に対応して、水素ガス供給システムインフラが必要とされており、このシステムの有力な一つとして副生水素ガス等を液化・貯蔵・輸送・供給するシステムが考えられる。本タスクの液体水素輸送・貯蔵の開発では長期テーマとして大型設備の開発を目的としているが、この小容量液体水素輸送・貯蔵システム検討を短中期のテーマの一つとして取り上げ、小容量液体水素設備の技術課題の抽出を行う。
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