(委託元:公益財団法人地球環境産業技術研究機構)

調査概要

1.パイプライン漏洩事故時の影響評価、被害想定

諸外国におけるパイプライン新設計画に際しての安全/環境に対する影響に関するリスクベースの定量的評価手法・項目等の規制、ガイドライン内容等について文献調査を実施した。

2.CO2パイプラインからの漏洩検知

CO2 に効果的な漏えい検知装置の仕様や設置場所、管理上の課題としてはCO2 に有効な定期的漏えい検査方法、検査装置、検査頻度等について、文献調査およびメーカー資料等の調査を実施した。

3.非金属材料の評価

液相及び超臨界相CO2パイプラインにおいて、機器に用いられるバルブシート材など非金属材料の選定評価、場合によっては使用を禁止することが望ましい材料等について、論文やメーカー資料等の調査を実施した。

4.緊急対応訓練プログラムのひな型

事故時の有効な避難計画及び平常時の避難訓練等について、諸外国規制機関の公表内容やガイドライン等の文献調査を実施した。

主な調査結果

1.パイプライン漏洩事故時の影響評価、被害想定

  • 米国とオーストラリアの現在のCO2 パイプライン規制は、既存の炭化水素ガイドラインに修正を加えて拡張したもので、CO2 パイプラインがもたらす特定の課題への対処は十分とは言えない。
  • 欧州では、CCUS からの CO2 ストリームに関連する固有の危険が認識されているものの、パイプラインの設計、運用、および低炭素投資を刺激しながら資金制約に対処することに関する専用の指令とガイドラインが必要とされている。
  • 今後、規制の国際的調和と調整を促進し、CCUS プロジェクトの責任ある展開を確実にするために、確立された標準の組み込み: ISO 27913などの国際的に認められた標準や、DNV-RP-F104などの推奨プラクティスを規制に組み込むことが有効と考えられる。

2.CO2パイプラインからの漏洩検知

  • CO2パイプラインの漏洩検知技術としては、従来の石油・ガスパイプラインで使用されてきたものが多い。現状でも使用可能だが、CO2パイプラインへの適合性を高めることが望まれている。固有のものとしては、CO2濃度測定器(ガス検知器)が挙げられる。
  • 漏洩検知技術の運用に関しては、リスク評価や数値シミュレーションによる漏洩事象に応じた漏洩量の定量化や複数の検知手段による二重化が推奨されている。
  • 米国のガイドラインでは、物理的および遠隔識別方法に加えて、パイプラインROWの巡回調査について記載がある。圧力監視では検出できない可能性のあるパイプラインからの漏れを検出したり、パイプラインに悪影響を与える可能性のある活動を特定したりする方法として「無人航空機(ドローン)による遠隔監視」あるいは「衛星モニタリング」と関連付けて考えることができるとされている。

3.非金属材料の評価

  • CO2パイプライン用のポリマーについての文献データは限られており、メーカー資料もポリマーの種類にまで言及しているものは少なかった。CO2パイプラインは既に50年近い実績があるが、CO2に含まれる不純物の影響は明確になっていない。
  • 非金属材料については、パイプラインの技術指針でも項目があるが、特定のポリマーがある用途に適しているとか、使用を禁止するというような記述はなく、選定のための要件が示されている。
  • ポリマーの選定において、吸収量、急速減圧時の吸収ガスの膨張、低温時の柔軟性、CO2ガス中の不純物との化学的な相互作用等、注意を要する点をとりまとめた。

4.緊急対応訓練プログラムのひな型

  • 以下の1)~5)を調査し概要をとりまとめた。対象CO2は、1)は液相/超臨界相、2)は気相/液相、3)は超臨界相。4)と5)は石油・天然ガスを対象としたものであるが、3)に踏襲されている点が多い。
    1)米国法規49 CFR Part 195(Transportation of Hazardous Liquids by Pipeline)
    2)BSI PD 8010-1:2015+A1:2016(Pipeline system – Steel pipeline on land)
    3)API CO2 Emergency Response Tactical Guidance
    4)API RP 1174 Recommended Practice for Onshore Hazardous Liquid Pipeline Emergency Preparedness and Response)
    5)API RP 1162 Public Awareness Programs for Pipeline Operators
  • 米国では、他の非常事態にも使われているインシデントコマンドシステム(ICS)が、CO2パイプラインにも適用されている。調査対象1)~4)は、パイプライン事業者の非常時対応が内容の中心であり、5)が一般市民に対するパイプライン事業者の公共意識向上プログラムに関するものである。

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