理事長年頭挨拶(2014年1月)

 2014年の年頭にあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。
皆様におかれましては、心新たに新しい年を迎えられたことと存じます。

さて、昨年の世界経済は、欧州政府債務危機や中国の成長ペース鈍化などの懸念要因はあったものの、先進国の懸命な財政・金融政策や資源国の国内需要に支えられて、緩慢ながらも景気回復の傾向が見られました。IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しによると、2013年の実質経済成長率は2.9%、2014年は3.6%と弱いながらも底堅い回復が見込まれるようになっています。

わが国経済も、アベノミクス効果により過度な円高が是正され、2020年の東京オリンピック開催も決まり希望の持てる社会に変わりました。景気は着実に回復基調に向かっています。昨年は、政府が打ち出した「日本再興戦略」の実行初年度として、安倍首相ミッションの官民あげての精力的な実行を始めとする諸政策が展開された画期的な年でありました。本年は、その実行をさらに強力に推進し、インフラシステム輸出の成果を上げ、我が国の経済成長を本格的な軌道に乗せる重要な年であります。

エンジニアリング産業について目を向けますと、昨年当協会が公表したエンジ白書「エンジニアリング産業の実態と動向」によれば、当協会会員企業の2012年度受注残高は、12.7兆円と前年度に比べ5.7%増加しております。また、2013年度の受注見通しは14.2兆円で対前年度11.6%の増加となり、石油・ガス、電力、環境、化学等のプラント分野において増加することを見込んでおります。

エンジ白書での会員企業へのアンケートに寄せられた各社の足元課題のトップ3は、「労働力・人材の確保」、「海外営業力の強化」、「新規事業の展開」でありました。リーマンショック後2~3年ほど上位を占めていた「研究開発力強化」や「リスクマネジメント強化」は相対的には順位を下げています。どれもが重要な課題ですが、各社の企業マインドが研究開発やリスクマネジメントといった、どちらかというと「守り」の姿勢から、営業力強化や新規事業展開、そのための人材確保といった「攻め」の姿勢に変化しつつあるように見えます。

また、昨年年初にアルジェリアで起きたテロ事件では、不幸にも当産業に従事する仲間の極めて尊い命を犠牲にしました。昨年当協会では、海外危機管理に関する提言を政府に提出し、いくつかは具体施策として実現に至っております。海外市場に成長を求めるためには、危機管理は必須の事業基盤であります。

我が国国内は、中長期的には少子化や産業構造の空洞化により内需が減退することが見込まれており、今後の成長戦略は、新興国・資源国の成長地域や伸長が期待されるエネルギー、資源、環境分野の需要を取り込んでいくことが必要です。
  エンジニアリング業界としては、地熱発電・洋上風力発電を始めとする再生可能エネルギー開発や、北米でのシェールガス開発に伴う化学プラント需要の勃興を着実に受注していくことが重要です。また、我が国技術と新興国ニーズのすり合わせによりエネルギー・環境プラントや、地震・洪水等の甚大災害の経験を活かしたインフラのプロジェクト創出に役割を果たしていくことが求められます。

規模とコストで勝負を挑んでくる中国・韓国などの競合エンジニアリング企業に打ち勝つには、従来にも増して差別性のある技術力とコスト競争力を磨き、成長国の新たな需要をくみ取るための工夫と努力を重ねていくことが必要です。併せて、関係官庁・団体との緊密な連携と政策面でのサポートが不可欠であり、現在の政府の取組みは誠に心強く、敬意を表するものであります。

協会としては、政策提言や官庁・諸団体の有識者による講演会・交流会による情報発信・相互交流活動に引き続き注力するとともに、人材育成事業や調査・研究開発事業にも強力に取り組んで参りますので、皆様方にはこれまでにも増してご支援・ご指導を賜りたいと思います。 本年も何卒よろしくお願いいたします。

2014年1月
一般財団法人エンジニアリング協会理事長

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