この度、前身の財団法人エンジニアリング協会が発足した1978年から45年間の歴史を持ち、多くの会 員(賛助会員:253、協力会員35)を擁する当協会の理事長を拝命し、身の引き締まる思いです。 微力ながら協会の発展に尽くす所存です。

ウクライナ戦争は収まる気配がなく、米中対立の激化も懸念され、世界情勢は不安定・不透明と言わ ざるをえません。我々エンジニアリング産業はカントリー・リスクについては勿論、コロナ禍から回復 したばかりのエネルギー・原材料等の国際的サプライチェーンの動向についても引き続き注視していか なければなりません。

一方、国内経済は、株式市場がバブル期以降の高値を更新する中、実体経済面でも大型の半導体工場 への投資が各地で進められるなど明るい材料が増えていますが、労働人口縮減が加速し、各産業で人手 不足が顕在化しています。特にエンジニアリング産業にとっては、2024年には建設業・運送業において 働き方改革関連法の猶予期間が終了することから、人手不足への対処が更に難しい問題となっていくこ とが想定されます。

このように、ビジネスのかじ取りが容易でない中ではありますが、脱炭素化・低炭素化した社会の実 現/グリーン・トランスフォーメーション(GX)に向けて、世界各国が取り組みを本格化させており、 GX技術の開発・社会実装の担い手としてエンジニアリング産業への期待はかつてないほど高まってい ます。

加えて、気象災害は激甚化しており、各国でインフラ整備の重要性はますます増しています。特に、 戦後・高度成長期に蓄積された社会インフラが耐用年数を迎えつつある国内においては、巨大地震発生 へも備え、よりレジリエントなインフラの更新・整備が急務であり、こうした面でもエンジニアリング 産業に大きな役割が求められています。

エンジニアリング産業がこのような期待に応え、スピーディーに役割を果たしていくためには、個々 の会社の取り組みだけでは限界があり、幅広い知の結集・統合が求められます。そのためには、エンジ ニアリング産業内での連携・協業に留まらず、他産業との連携・協業も従来に増して活発化する必要が あり、政府や学術・研究機関との密接な連携も不可欠であることは言うまでもありません。当協会の役 割は、正にこうした連携推進の「ハブ」であり、これまでもその役割を果たして来ましたが、エンジニ アリング産業への役割期待が高まる中、その使命は一層重くなっています。

当協会が注力すべきもう一つの取り組みは、エンジニアリング産業への優秀人材の確保と産業内人材 の育成です。我々エンジニアリング産業が、社会の期待に応え、役割を果たすためには、労働人口が縮 減していく中でも、従来同様に優秀な人材を確保し続けることが必須です。

これまでも当協会では、会員企業の採用支援策として学生向けのキャリア支援セミナーを継続してき ましたし、近年では業界で働く人々の様子をYOU TUBE 配信するなどの情報発信にも取り組んでいま すが、エンジニアリング産業はGX 等に向けて成長産業であることや、その使命・やりがい・魅力を更 に強く発信していきたいと考えています。また、協会が開催している講演会・セミナー・講習会のプ ログラムを、プロジェクトマネジメント力強化をベースにしつつも、GXやDXに関するものも更に拡 充していきたいと思っています。特に、DXスキルについては、エンジニアリング産業の生産性向上/ 競争力強化といった観点だけでなく、GXの社会実装という観点でも重要なものと考えます。

以上のように、エンジニアリング産業、そして当協会の役割と責任を肝に銘じて当協会の運営にあた る所存です。最後になりましたが、政府関係機関、学術・研究機関の皆さまに当協会へのこれまで同様 のご指導、ご支援をお願いすると共に、会員各位の協会活動への主体的な参画を改めてお願いして、私 からの理事長就任のご挨拶とさせていただきます。

 

2023年6月30日
一般財団法人エンジニアリング協会 理事長

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