理事長挨拶(2025年6月20日)


当協会は、1978年にエンジニアリング企業を中心とする賛助会員49社によって設立されたエンジニアリング振興協会を前身とし、約半世紀の歴史を誇ります。現在では参加者のすそ野が広がり、幅広い業種の企業、公益機関、地方公共団体、大学など、様々な分野から約300の組織が集まり、活発に活動を行っております。理事長として、皆様のご支援をいただきながら、この活動をさらに発展させていく責務を強く感じており、身の引き締まる思いでおります。
さて、昨今の世界の状況を見渡すと、多くの不確実性があります。ロシア・ウクライナ戦争やパレスチナ紛争は未だ終結せず、経済面では米国の自国第一主義に起因した関税引上げにより、グローバル経済の分断化が懸念されています。特に米中のデカップリングによってアジアを中心とする経済圏と物流の大きな変化が想定され、加えてグローバルサウスの台頭が世界経済に大きな影響を及ぼし、先が見通せない状況となっております。
また、地球温暖化問題については、過熱気味であった「脱炭素化」推進の流れは世界各地で減速を見せ始めましたが、後退することはないと見られています。脱炭素関連のインフラの整備は順次進められていくことが想定され、エンジニアリング業界が貢献すべき分野であることに変わりはありません。
我々の業界の現況に目を転じますと、資機材や建設費の高騰をはじめ、経済的な不安定要素も多く、また政府方針である働き方改革による業務遂行への影響、労働人口の減少に伴う人材獲得競争の激化といった課題も顕在化しております。このような中、特に脱炭素関連インフラ整備案件に於いては、新規性と難易度が高い多様なプロジェクトの実現が期待されており、まさに変革が求められる時代です。
以上のような状況認識のもと、当協会としましては近年の流れを引き継ぎ、以下の2点に重点を置き、活動を進めてまいりたいと考えております。
第一に、脱炭素社会の実現や社会課題の解決に資するべく、官公庁など外部機関との連携により、受託調査・研究・事業実証などに取り組み、成果を出していきたいと思います。また、講演会やシンポジウム他の機会を通じて本テーマに関連した情報発信を心掛け、エンジニアリング産業全体や当協会に参加している広い分野の識者の知恵を結集することに注力いたします。
第二として、産業を支える優秀な人材の確保と育成に注力します。これまで実施してきた学生向けキャリア支援セミナーや大学での講座、社会人向けの講習会、PMセミナーをさらに発展強化することに加え、AI等の先進技術の活用促進やDXリテラシーの向上にも取り組みます。また、エンジニアリング産業が未来のある重要な産業であることを発信し続けることも重要です。
当協会は、エンジニアリング産業の発展を通じ、社会課題の解決に向けて取り組み、日本および国際社会の持続可能な繁栄に貢献すべく努力してまいります。
つきましては、今後とも関係省庁、関係諸団体、会員企業の皆様によるご支援とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
2025年6月20日
一般財団法人エンジニアリング協会 理事長