冒頭、本年1月1日に発生しました令和6年能登半島地震において亡くなられた方々に心からご冥福をお祈り申しあげるとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。

政府一丸となって、「人命第一」で、救命・救助活動に全力を尽くしてまいります。
経済産業省としても、総力を挙げ、関係省庁と連携し、

  1. 電力、石油、ガスのエネルギーインフラの復旧、
  2. ストーブ等の暖房器具や灯油など経済産業省が所管する物資について、「プッシュ型支援」の実施、
  3. コンビニ等からの支援物資の供給強化
  4. 中小企業・小規模事業者の資金繰り支援の強化、

等に緊張感をもって取り組んでまいります。引き続き、産業界をはじめとする国民の皆様にも、御協力いただきますようよろしくお願い致します。

昨年を振り返りますと、ポストコロナの社会・経済に活気が戻った一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東紛争の激化など、我が国を取り巻く地政学リスクの厳しさが一段と増した年になりました。

こうした中で日本経済は、これまでのコストカット型のデフレ経済から、持続的な賃上げや活発な投資でけん引する成長型経済への転換局面を迎えています。本年は、こうした成長軌道への変化を一過性のものにしないためにも、更なる投資の活発化と価格転嫁を促すことで、もう一段の賃上げを実現し、成長と所得向上の好循環をさらに進める一年にしたいと思います。その実現のための政策の重点は、GX、DX、経済安全保障の3軸による投資の促進です。

GXの分野では、昨年末のCOP28の成果文書で「化石燃料からの移行を進める」という文言が盛り込まれるなど、一層の取組強化の必要性が確認されました。我が国においても、エネルギー安定供給、産業競争力強化と排出削減を同時に実現するGXを掲げ、投資と規制の両輪で様々な施策を進めています。特に、排出削減に効果が大きいものの、企業だけで実現するには負担が大きい取組については、官も前に出た取組が求められています。既にグリーンイノベーション基金では、水素還元製鉄技術など、脱炭素化に向けた研究開発・実証を支援していますが、昨年末には「分野別投資戦略」として、鉄鋼、化学、紙パルプ、セメントといった製造過程での排出削減が困難なセクターや、自動車、航空機等を含めた16分野でのGX実現に向けた方向性と投資促進策を策定し、今後、プロジェクトの具体化を進めることとしています。加えて、戦略分野での生産・販売量に応じた減税措置を新設しました。こうした政策をもとにしたGX関連の投資の実現に向けて、脱炭素社会実装の担い手である皆様に一層の期待をすると同時に、その活動を後押ししてまいります。

また、経済安全保障の分野では、国際情勢が厳しさを増す中で、サプライチェーン上のリスクが顕在化しています。政府としては、自立性の高い経済構造を実現すると同時に、我が国の技術・産業競争力の向上や優位性確保を目的として、官民による先端重要技術の研究開発を推進するほか、永久磁石や工作機械・産業用ロボット、航空機の部品、半導体素材などの我が国の生産基盤を支える重要物資の安定供給確保を支援してまいります。

このようなGXや経済安全保障の課題への対応、また、企業の競争力の基盤という意味でも、デジタル化に向けた取組は不可避です。政府としては、デジタル時代の社会インフラたる「デジタルライフライン」の整備を進め、自動運転技術の社会実装などを支援してまいります。また、製造事業者のDXの目指すべき姿をお示しできるようスマートマニュファクチャリングのガイドライン策定を進めるほか、3Dプリンターによる「ものづくり」の変革にも取り組んでいきます。エンジニアリング産業においても、ロボットやドローンを活用したプラントの巡回や警備、災害対応などのニーズが高まっており、すでに積極的に取り組まれている企業もあります。DXの活用を顧客の競争力強化に結びつけることが大きなポイントであり、ビジネスチャンスに繋げていただくことを期待しています。

産業界が今直面する課題は、官も民も一歩前に出て取り組まないと解決できないため、本年も国内外で活躍されているエンジニアリング産業の皆様と緊密に連携しつつ、将来につながる日本の経済基盤をともに形作っていきたいと考えております。

最後に、エンジニアリング産業の皆様の益々の御発展と、本年が素晴らしい年となることを祈念して、年頭の御挨拶とさせていただきます。

2024年1月
経済産業省 製造産業局長 伊吹英明

PAGETOP