平成21年度エンジニアリング産業の実態と動向調査(要旨)

<概況>
平成20年度のエンジニアリング産業をとりまく経済動向はそれまでの好況の様相から、米国におけるサブプライム問題に端を発した、平成20年9月のリーマンショックの影響で、金融危機が世界規模で発生し、実体経済へも大きな影響をもたらすこととなった。リーマンショック以前は、米国を中心とする金融不安、景気の減速、原油・原材料の高騰などの兆候がみられ、リーマンショック以降は、金融不安が世界的な金融危機へと発展し、世界景気の一段の下振れ、世界同時不況の様相を示した。平成20年前半は、サブプライム問題が徐徐に顕在化する中、株式市場から商品市場へ資金が流れたこともあり、原油を始めとする天然資源への需要がかつてなく高まり、資源価格の上昇を招いた。平成20年の9月以降は、これら資源価格も急落に転じ、世界的な金融危機、景気後退のなかで下落が続いた。このような状況のなか、日本経済も、それまでの経済の牽引役であった輸出や設備投資が大幅に低迷するなど景気の低迷が鮮明となった。プラント市場においても、金融不安により資金調達が困難となったことや最終製品の需要の後退により投資計画の見直しや設備投資額の更なる低下を期待した発注の手控えなどが生じ、エンジニアリング産業を取り巻くビジネス環境は、総じて厳しい結果となった。
受注環境としては以上のような厳しい状況のもとで、ここ3年は、12兆円台で推移していた受注総額が、平成20年度(2008年度)は、平成15年度(2003年度)の水準である10兆3,663億円(前年度同一企業比13.1%減)となった。

<受注概要>
平成20年度のエンジニアリング産業をとりまく経済動向は、それまでの好況の様相から、米国におけるサブプライム問題に端を発した平成20年9月のリーマンショックの影響で、金融危機が世界規模で発生し、実体経済へも大きな影響をもたらすこととなった。
受注環境としては、以上のような厳しい状況のもとで、ここ3年は12兆円台で推移していた受注総額が、平成20年度(2008年度)は平成15年度(2003年度)の水準である10兆3,663億円(前年同一企業比13.1%減)となった。 

<プラント・施設別受注動向>
プラント施設別受注では、構成比率が最も大きく24.6%を占める電力プラント・システムは受注金額が前年度比で5.5%減少し、海外受注金額は前年度より13.9%減と大きく減少しているが、国内は手堅く2.1%増となった。 構成比率22.7%を占める都市・地域開発システムは、海外比率は3.7%と小さく国内中心であるが、国内受注金額は前年度比12.3%の減少で2兆2,680億円となった。

<業種別受注動向>
平成20年度の業種別受注高は、総合建設が構成比率の34.2%を占め、受注は国内、海外合わせて3兆5,431億円であった。造船重機は1兆8,627億円、重電は海外が20.4%増となり、前年度並みの1兆6,137億円、専業大手は前年度を11.8%下回る6,761億円であった。

<海外地域別受注動向>
地域別の全体的な受注動向は、中近東が37.2%で首位、次に東南アジアが26.5%、東アジアが11.2%と続いており、前年同様中近東が中心であった。

<売上高>
売上高については、国内は8兆5,382億円と前年度比8.3%増、海外は3兆2,754億円で2.0%の増加となり、合計では11兆8,137億円(6.5%増)となり、ここ数年、国内、海外とも受注が好調であったこともあり、売上高は順調に伸びた。

<プラント施設別の短期(平成21年度)および中期(平成22~24年度)の受注見通し>
国内については、平成21年度8.8%の減少、平成22年からの3年間では1.7%の微増見通しとなっている。一方、海外については平成21年度21.8%の増加から、その後の3年間では44.0%の更なる増加を見通している。

<各企業の課題>
このような経済状況、エンジニアリング産業を取り巻く経済環境のなかで、各企業は、今後の課題として、新規事業分野の開拓、研究・技術開発の強化、海外営業力の強化をあげており、新たな分野への取り組みと海外営業戦略の強化に目をむけている。

<特別テーマ 金融危機下におけるエンジニアリングビジネス>
平成20年9月のリーマンショック以降、世界経済は、未曾有の金融危機に直面し、経営環境は一変して、厳しい状況となった。平成21年度に入り、新興国の回復など一部に回復の兆しが見えるものの、米国経済など依然停滞感があり、景気の回復は予断を許さない状況にある。このような状況のもと、各企業が、この経済危機をどのように認識し、エンジニアリングビジネスを中心とした事業への影響をどのように捉え、その影響を克服するための対策をとり、今後をどのように展望しているかアンケート調査を行なった。

アンケート結果を、整理し分析した結果、各業種の国内市場、海外市場の影響度とこれらへの対策、戦略などが明確となり、次のような方向性が見られた。

  • 国内市場については、各業種とも共通して3年くらいは回復を見込めないほど厳しいと見ている。 
  • 海外市場については建設、造船重機、鉄鋼の3業種では国内市場同様3年くらい回復を見込めないと見ているが、専業大手はじめ他業種は1-2年程度とみている。
  • 各企業とも、コスト削減などによる競争力強化といった常套手段に頼るのみならず、この時期に、業態の変革、ビジネスモデルの転換などを含めて、抜本的な経営戦略の見直し・強化を志向し始めていることが明らかとなった。
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