平成22年度エンジニアリング産業の実態と動向調査(要旨)

<概況>
平成21年度の世界経済は、金融危機(リーマンショック)による景気後退から、中国、インドなどで景気回復が見られたものの、中東経済はドバイショックなど不透明な状況が続いた。わが国経済も、輸出主導でGDPの回復が見られたが、景気の本格的な回復には至らなかった。
また、プラント市場では、2008年半ばに最高値を記録した原油価格が年末にかけて大きく低下したため投資計画の見直しが行われたが、2009年秋頃にはバレル80ドル前後まで上昇し、その後、原油価格が維持されてきたことで産油国をはじめとする海外の設備投資の再開、具体化に向けた動きがあった。しかしながら、エンジニアリング市場で台頭してきた韓国勢との競争激化などにより厳しい受注結果となった。また、国内においても公共投資の削減や民間設備投資の低迷などにより厳しい状況が続いた。
平成17年度~平成19年度の3年間は、12兆円台で推移していた受注総額が、以上のような厳しい受注環境のもとで、平成20年度(2008年度)は10兆3,663億円(前年同一企業比13.1%減)、平成21年度は8兆8,120億円(同12.8%減)となった。 

<受注概要>
平成21年度のエンジニアリング産業をとりまく経済動向は、平成20年9月のリーマンショックの影響を引き続き受ける結果となった。プラント市場では、海外において設備投資の再開、具体化に向けた動きがあったものの、韓国勢との競争激化および国内の大型開発案件の遅れなどにより厳しい結果となった。
以上のような厳しい状況のもとで、平成17年度から19年度の3年間は12兆円台で推移していた受注総額が、平成20年度(2008年度)は10兆3,663億円(前年同一企業比13.1%減)、平成21年度は8兆8,120億円(同12.8%減)となった。

<プラント・施設別受注動向>
プラント施設別受注では、構成比率が最も大きく24.4%を占める電力プラント・システムは海外受注金額が前年度より48.8%減と大きく減少したため、国内は12.4%増と好調であったが、受注金額が前年度比で13.9%減少した。
構成比率20.3%を占める都市・地域開発システムは、海外比率は3.3%と小さく国内中心であるが、国内受注金額は前年度比13.4%の減少で国内・海外合計で14.2%の減少となった。

<業種別受注動向>
平成21年度の業種別受注高は、総合建設が構成比率の29.2%を占め、受注は国内、海外合わせて2兆5,585億円であった。造船重機は1兆6,601億円、重電は海外が67.3%の大幅な減少となり、前年度を18.0%下回る1兆2,291億円、専業大手は前年度を68.1%と大幅に上回る1兆1,366億円であった。

<海外地域別受注動向>
地域別の全体的な受注動向は、大洋州が28.0%で首位、次に中近東が24.7%、東南アジアが16.4%、東アジアが10.8%と続いた。

<売上高>
売上高については、国内は7兆2,025億円と前年度比12.8%減、海外は2兆4,103億円で26.7%の減少となり、合計では9兆6,128億円(16.8%減)となり、平成20年度をピークに売上が減少に転じた。

<プラント施設別の短期(平成22年度)および中期(平成23~25年度)の受注見通し>
国内については、平成22年度5.3%の減少、平成23年度からの3年間も平成21年度に対して4.6%の減少見通しとなっている。一方、海外については平成22年度35.2%の増加から、その後の3年間では平成21年度に対して62.4%の更なる増加を見通している。

<各企業の課題>
このような経済状況、エンジニアリング産業を取り巻く経済環境のなかで、各企業は、今後の課題として、新規事業分野の開拓、研究・技術開発の強化、海外営業力の強化をあげており、新たな分野への取り組みと海外営業戦略の強化に目をむけている。

<特別テーマ 日本の産業をめぐる現状の課題とエンジニアリングビジネス>
平成20年度の世界経済は、平成20年秋のリーマンショック以来、未曾有の金融危機に直面し経営環境はより厳しい状況になった。前年度の白書では、政府の景気対策などにより製造業の景況感がやや上向くなどの兆しはあったものの景気の回復に予断を許さない状況の中で、各業界・各企業がこの経済危機をどのように捉え、その影響を克服するためにどのような対策をとっているかアンケートにて確認した。
その結果、各企業ともコスト削減などによる競争力強化といったことだけでなく、業態の変革、ビジネスモデルの転換などを含めた抜本的な経営戦略の見直し・強化を志向し始めていた。

一方、経済産業省は、平成21年12月から日本産業のあり方を示す「産業構造ビジョン」を策定しており、「日本の競争力」について議論が活発となった。そこで、本年度は産業構造審議会・産業競争力部会で指摘された日本産業の行き詰まりや深刻さを踏まえ、「日本経済の構造上の問題」、「各企業の取り組み」、「ビジネスインフラの整備の必要性」、「期待される産業政策」などについて各企業がどのように考えているか自由記述も含めアンケートを実施した。

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