平成21年度 石油精製業保安対策事業-被覆配管等の運転中検査技術に関する調査研究 報告書

カテゴリー:プラントの高度メンテナンス(TDD) 更新日:2009.07.16

本事業は、被覆材等が施工されたまま運転中に配管腐食の状態を面で捉えることのできる種々の非破壊検査技術について、実際のプラントの部位を測定する精度を調査し、保安検査の方法としての信頼性を評価するとともに、その評価結果を踏まえ、新たな非破壊検査手法を用いたより保安精度の高い方法を5年以内に提案することを目標として、平成19年度より開始された事業である。本年度は以下の調査研究を行った。

①既存の非破壊検査技術に係る情報調査 国内の石油精製・化学プラントの現状調査を被覆下配管腐食の検査手法及び維持管理マネージメントの観点を中心に行った。その結果、各社は独自の維持管理ガイドラインを設け、目視や非破壊検査技術、さらにアメリカ石油学会(API)の規格やリスク・ベイスド・メンテナンス(RBM)を使用してはいるが、主に経験に基づいた手法で管理を行っていた。課題は、劣化腐食の位置を効率的・経済的にどう見つけるか(スクリーニング)及び劣化腐食による損傷の評価をどう行うかであった。また共通のガイドラインの必要性も指摘された。 非破壊検査技術では、昨年度サンプル測定にて良好な結果を得た最新式広域ガイド波超音波探傷法(LR-UT)の使用が始まっており、多くのプラントで導入が検討されていた。放射線検査技術(RT)はスクリーニングや損傷評価に日常的に使用されている。また、一部で環境モニタリングとしてサーモグラフィによる湿分、中性子法による水分等の技術が使用されていた。 海外調査では韓国、台湾、シンガポールでも被覆下配管腐食が大きな問題として顕在化し、APIのRecommended Practiceを参考に独自に目視検査を中心とした維持管理が実施されており、ガイドラインの必要性を訴えていた。

②既存の非破壊検査技術のサンプル測定 平成19年度の調査において、一次スクリーニング技術として腐食部位の特定用のLR-UTと減肉状況の把握用としてRTの技術革新が進んでおり、プラント現地にてサンプル測定を実施する価値があることが示された。 今年度のサンプル測定は、次の5機種について実施した。 LR-UTは、国産装置として日立のLR-UTを、RTでは、GE社のコンピューテッドラジオグラフィー(CR)、富士写真フィルムのFCR、(独)産業技術総合研究所(産総研)の可搬型高エネルギーX線源、Vidisco社のfoX-Rayzorを採り上げた。 各種CR放射線検査技術は充分使用可能であり、被覆材を剥いで検査することに比べれば効率的、経済的に有効であることが確認された。しかしながら放射線の取り扱いは厳しいものがあり、産総研の可搬型高エネルギーX線源、Vidisco社のfoX-Rayzorは小型、簡易な方法であり、今後実用化へ向けてさらに改良開発されることが期待された。

③腐食モニタリング技術の評価とその活用策 被覆下配管の環境では腐食の進展が数倍に加速されるという傾向が確認された。影響因子は塩化物と水のほかに腐食生成物が大きく影響している可能性が高いことがわかった。しかし、より詳細な腐食メカニズムがわからないとモニタリング技術の評価は難しいことがわかった。今後さらにプラントの安全運転を確保するためには被覆配管腐食の損傷評価方法を確立する必要がある。

④調査研究の中間評価 自主的に中間評価を行ない、新たな非破壊検査手法を用いたより保安精度の高い方法として、アジア各国も含んだユーザ各社が要望しているガイドラインの策定が焦眉の急である。また国内外の検査技術はほぼ調査が完了し、さらに改良開発中の技術のサンプル測定を含んだフォローアップが必要である。また損傷評価手法の確立も重要であることが判明した。

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