『MES/MOM導入のためのRFP作成用標準テンプレート』公開に当たって

「次世代スマート工場の実現のためには、MES/MOM※1の導入・活用が必須である」――これが、わたし達 『次世代スマート工場のエンジニアリング研究会』の共通認識であり、2018年以来、実態調査・普及活動・教育事業などを微力ながら推進してきた。

しかし縦割り組織であることも多い日本の製造現場にMES/MOMを導入するには、いくつかの障害がある。とくに実現したい業務が複数部署にまたがる場合、その全体像を構想し、どこまでITシステム化すべきかを整理することが、案外困難である。

MES/MOMに精通した外部有識者やコンサルタントが、国内ではまだ少ない上に、業界・企業ごとに用語・概念の振れ幅が大きいことも、問題を難しくしている。
MES/MOMのシステム機能を標準化する国際規格も1990年代以来、制定、精緻化されているが※2、残念ながら正式な邦語版がいまだ存在しない。

※1 MES = 製造実行システム manufacturing execution system, MOM = 製造オペレーションマネジメント manufacturing operation management
※2 ISA-95, IEC 62264, ISO 22400 等

その結果、工場オーナー側がMES/MOMを導入しようとすると、インターネットで公開されている「MESA International 標準11機能」(1990年代に米国で提唱された上記国際規格の原型)の邦訳ベースでRFP(提案依頼書)を作成せざるを得ず、受け取ったMES/MOMベンダーの担当者が頭を抱えるといった状況を少なからず耳にする。
こうした状況を放置しては、国内でのMES/MOM導入が停滞したままとなり、次世代スマート工場の現出も望めなくなる。

そこで本研究会では、有志を募って『MES導入促進ストラテジックプロジェクト』を昨年秋から立ち上げ、MES/MOM導入促進を目的としたRFP標準テンプレートの策定を目指した。

具体的には、米国のITの論理から出発したシステム機能リストの代わりに、日本の製造現場が理解しやすい標準業務機能リストを作成する。これは、工場における直接・間接業務の、いわば最大公約数的なカタログ化である。なお製造業務は業種による違いも大きいため、ここでは我が国でもっとも多いと思われる、組立加工系(ディスクリート型)工場を主に想定した。

この『標準業務機能リスト』は、Excelファイルの形で提供する。表は、各行に個別の単位業務が記述され、以下のような欄が付加されている

  • 整理番号
  • Division(業務のくくり) / Business Category(業務分類) / Sub Business Category(サブ業務分類) ・・単位業務の分類軸(分類は各社によって異なると思われるので、ユーザは自社に合わせてカスタマイズして用いる)
  • Business Process(業務プロセス)・・単位業務のタイトル
  • 業務オペレーション・・単位業務のナラティブな記述
  • MES/MOM対象・・○△×で表示(推奨であり、最終的にはユーザが決める)
  • 代替可能システム・・ERP/PLMなど、MES領域以外で類似機能を持つもの
  • 補足・・留意事項に関する記述など
  • ERP 、PLM、スケジューラー、コントロールシステム、その他システム・・MES/MOMを活用する場合、ERPと連係すべきデータ項目

工場オーナー側は、この標準業務機能リストの内から、MES/MOM導入によって実現したい・変えたい業務を選び、そのTo-Be像を考えた上で、「MES/MOM対象」欄を決定する。また表中の各欄の記述を、自社に合致するよう修正した上で、スコープ表(星取表)として、RFPに添付いただく、という使い方を想定している。

なお、標準業務機能リスト(標準テンプレート)のExcelファイルを補足するために、PowerPoint形式の説明資料を添付した。ユーザにおかれては、両者を参照しつつ、ご活用いただければ幸いである。

標準業務機能リスト(標準テンプレート)およびその説明資料の入手を希望する者は、以下の情報を記載したEメールをMES導入促進ストラテジックプロジェクト(enaa-mesあっとenaa.or.jp (あっとを@に変える))宛送って頂きたい。折り返しリスト、資料をお送りする。

・お名前
・所属企業/団体名
・所属部門/役職名
・標準テンプレートのご利用目的(以下から選択ください)
        ・MES/MOM関連情報の収集など
        ・MES/MOMベンダー側として利用予定
        ・MES/MOM導入側(工場オーナー側)として利用予定
・この標準業務機能リストの存在をどうやってお知りになったか?
・連絡メールアドレス

リスト、資料を、入手者が自社内・RFP等へ二次利用することは自由とするが、著作権は(一財)エンジニアリング協会に帰属するため、二次利用の際は、その旨明記いただきたい。
また、リスト、資料の入手者には、一定の期間経過後にアンケートを送るので回答のご協力をお願い申し上げる。

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標準テンプレートのイメージ

本資料の内容については可能な限りの万全を尽くしているが、まだ完全なものではない。パブリック・コメント版として世に問うこととし、各位の忌憚なきご助言、ご指摘をお待ちしている。
日本における次世代スマート工場の実現に関心のある皆様からの、御清覧と御批判とを期待している。

2024年 11月 1日
一般財団法人 エンジニアリング協会(ENAA)
次世代スマート工場のエンジニアリング研究会
幹事 佐藤 知一 (日揮ホールディングス(株))
プロジェクトリーダー 阿部 洋平

問合せメール : enaa-mesあっとenaa.or.jp (あっとを@に変える)
(事務局: ENAA 技術部 研究主幹 川村)

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