一般財団法人エンジニアリング協会

（委託元：（独）石油天然ガス・金属鉱物資源機構）

1．はじめに

　日本周辺海域に賦存するメタンハイドレート（以下MH）は将来のエネルギー資源として注目されており、経済産業省主導のもと、メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム（MH21）が組織され、MHの資源化に向けた研究開発を推進しています。平成13年度から20年度まで実施されたフェーズ1において、環境分野に関してはMH開発時における環境影響評価手法確立のための基礎研究として、東部南海トラフにおける海域環境調査、種々の環境モニタリング手法の検討、環境影響因子の拡散挙動を予測するシミュレーションモデルの構築などを実施しました。平成21年度からはフェーズ2に移行し、MH海洋産出試験を通じた環境影響評価手法の提示を目標の1つに設定しています。

　平成27年度、当センターは（独）石油天然ガス・金属鉱物資源機構より、環境分野の一部の研究を「メタンハイドレート開発に係る海洋生態系への影響評価のための基礎研究」として受注致しました。平成27年度は海底面からのメタン漏洩ならびに作業に付随して発生しうる流体などによる海洋生態系への影響予測および評価などに係る基礎研究を実施しました。

2．実施内容

　平成27年度業務では、上記の環境影響要因を考慮して、海洋生態系への影響を予測するための生態系モデルの構築、底層の流況解析、数値モデルによるメタンの拡散予測、環境データベースシステムの改良等を実施しました。（図1）

2.1 海洋生態系への影響を予測するための生態系モデルの構築

　平成26年度までに改良した光合成生態系モデルと再現された流れ場を利用して春季の光合成生態系（図2）の再現を行いました。また、光合成生態系の物質循環の詳細なプロセスを把握するため、光合成生態系を構成する要素間の炭素の移動について抽出および図化することを検討しました。さらに、底生生態系モデルにおいて、カッティングスの堆積による生物影響を予測するために必要となる情報の収集を行いました。

2.2 底層の流況解析

　物質（カッティングスや生産水等）の移流･拡散を考慮するにあたり、過年度に（独）石油天然ガス・金属鉱物資源機構により実施した流況調査において観測された第二渥美海丘近傍の底層付近での最大流（北西向きの強い流れ：図3）による影響が重要か否かを確認するため、底層の流況解析を行いました。

2.3　数値モデルによる海水中成分の拡散予測

　平成25年度までに構築したメタン拡散予測モデルを用いて、これまでの流況調査で得られたデータ等を基に、様々な可能性を考慮した複数の流況条件での拡散範囲を予測する計算を実施しました。また、平成26年度に作成したWindows上で利用できるプロトタイプについて、利便性向上のための機能付加を行いました（図4）。