2023年度「CO2パイプラインの技術的ガイドラインに関する調査」

2023年度「CO2パイプラインの技術的ガイドラインに関する調査」
(委託事業名:令和5年度燃料安定供給対策調査等事業(CO2パイプラインのガイドライン策定に向けた調査等業務))
(委託元:資源エネルギー庁 資源・燃料部)
調査概要
1.CO2パイプラインに関する国外の技術指針等の調査
CO2パイプラインに関する国外の技術指針(諸規格やガイドライン等)を調査し、設計および設置等に関する要求事項と、参照した規格やガイドライン等のなかで引用されている他の諸規格(ASME、API等)の要求事項についてとりまとめた。
2.CO2パイプラインに関する技術的ガイドラインに関する情報整理
国外の諸規格やガイドライン等の調査結果を参考に、CO2パイプラインに関する技術的ガイドラインの策定に向けて必要な情報を調査し、技術的ガイドラインとして取りまとめるべき項目を整理した。
主な調査結果
1.CO2パイプラインに関する国外の技術指針等の調査
(1)調査対象
調査対象とした国外技術指針(法規、技術規格)は以下のとおり。
1) 国際標準規格ISO 27913:2016, Carbon dioxide capture, transportation and geological storage - Pipeline transportation systems
- 適用対象:液相/超臨界相、気相CO2パイプライン
- CO2パイプラインに関する国際標準規格。現行版は液相/超臨界相が主体だが、改訂作業中の新版は気相に関する記述が拡充される予定。
2) 民間技術指針DNV-RP-F104, Design and operation of carbon dioxide pipelines
- 適用対象:液相/超臨界相、気相CO2パイプライン
- ISO 27913:2016が策定されるまで、前版のDNV-RP-J202が国際的に唯一のCO2パイプライン技術指針であった。
3) 英国規格BSI PD 8010-1:2015+A1:2016, Pipeline systems - Steel pipelines on land
- 適用対象:石油、ガス、CO2(気液)、および危険物質の陸上パイプライン
- 2015年にCO2を追加して全面改訂された。
4) 米国規則集49 CFR Part 195, Transportation of Hazardous Liquids by Pipeline
- 適用対象:液相/超臨界相CO2など危険液体パイプライン(気相CO2は対象外)
- CO2パイプラインが広く普及している米国の連邦規則。
(2)各技術指針等の比較対照
(1)で示した4種類の国外技術指針等について、設計、施工、保安等の項目(1. 適用範囲、2. CO2の特性,3. 安全思想,4. システム設計,5. 材料設計,6. 施工,7. 運用・保守,8. 既存のパイプラインのCO2パイプラインへの再認可)別に整理した。
2.CO2パイプラインに関する技術的ガイドラインに関する情報整理
(1)海外事故データベース等からのCO2パイプライン事故事例の調査
CO2パイプラインの運用実績が豊富な米国の規制機関PHMSA(米国運輸省パイプライン危険物安全局,Pipeline and Hazardous Materials Safety Administration)のデータベースにより、事故原因や損傷形態などについて調査した。詳細情報のある2010 年以降のデータ期間では、事故原因でもっとも多いのはリリーフバルブ関係他の「設備故障」の52%、2番目に多いのは、「パイプや溶接部の損傷」の17%、3番目は「腐食」で11%であった。損傷の形態についてもっとも多いのはリークで全体の84%、その他には、被害額が大きかった2020年のミシシッピ州Satartiaの大雨による土砂崩れで、パイプラインが破断しCO2が放出された事故があった。
(2)CO2パイプライン事故を想定した海外の実験・解析事例の調査
欧州においては、CO2パイプラインを対象とした様々な合同研究プロジェクトJoint Industry Project(JIP)が実施されており、主なものとして、初期に行われ大規模CO2パイプライン開発のために必要な検討項目を列挙したCO2EUROPIPE、大規模な実管破断実験を行ったCOSHER、英国規格PD 8010-1改訂のベースとなったCOOLTRANSについて概要を調査した。