事業報告Business Report

1.概要

 本調査は、日本CCS調査(株)が、経済産業省より平成23年度「二酸化炭素削減技術実証試験委託費」業務として受託し、同社より弊協会がその一部を受託したものです。
ここでは、欧州および豪州調査で得られた海外でのCCS法規制および技術基準の概要、豪州および欧州の動向に関する情報をまとめました。


2.法規制と技術基準

(1)2008年、IEA(International Energy Agency)が、国際的なCCS法規制ネットワークを設立、各国におけるCCS関連法規制の整備動向を取り纏めて紹介しています。

(2)2007年以降、CCSのためのベストプラクティス、ガイドライン、技術基準に関する数多くの文書が発行されていますが、特定の分野であったり、全体を包含するものであったり、記載内容のレベルも様々です。

(3)ISOによる規格化の動きが出ています。


3.豪州におけるCCS動向

(1)豪州は、国内に大量の石炭埋蔵量があることにより、今後も石炭火力が中心になると考えられています。そのため、CCSには早くから関心を持ち、連邦政府のみならず州政府、ACA(Australian Coal Association)等の業界団体、Global CCS Institute等がCCSを推進しています。

(2)CCSに関連する連邦政府の法規制において、オフショア・エリアは、基線(海岸線に沿った低潮線)3マイルから大陸棚外側境界線までと定義しています。連邦政府がオフショア・エリアを、またその内側(陸域および基線から3マイル以内)を州政府が管轄しています。石油探査の許可制度、リース制度、石油生産ライセンス制度と同様に、CCSに必要なアセスメント実施の許可制度、温暖化ガス貯留層探査のリース制度、温暖化ガス圧入ライセンス制度等も規定しています。

(3)法規制を定めている州政府は、ニューサウスウェールズ、クイーンズランド、ヴィクトリア、西オーストラリア、南オーストラリア等です。例えば、クイーンズランド州の規制には、石油・天然ガスに関する法規制をモデルにして、探査許可制度や圧入・貯留リース制度を定め、リース期間終了後は、貯留されたCO2は州の所有物と規定しています。ただし、CO2貯留によるリスクが可能な限り小さくなるまで貯留層リースの返却は受付けず、また返却後も一定の責任が元リース者に残る等の問題点が指摘されています。


4.欧州におけるCCS動向

(1)EUでは加盟国と欧州委員会の両者がCCS規制に関与しています。

(2)加盟国はEU指令を反映するよう各々の国の法規制を整備するように求められます。

(3)CCSに関してはCCS指令遵守とEU域内排出量取引制度(EU-ETS)も適用されます。

(4)ノルウェー:スタットオイル社のスノービットでは、2008年4月から、ガス生産領域とは断層により区切られた領域の海面下約2,700mの帯水層に年間約70万トンでCO2の圧入を開始しています。

(5)オランダ:ロッテルダムの北約200kmの北海にある天然ガス田では、CCSとして天然ガス中に含まれるCO2をプラットフォーム上で分離・回収、累計約8万トンを海底下約4,000mの生産終了ガス層へ圧入しています。坑井は生産井を転用、ケーシングパイプやセメントは耐CO2仕様ではありませんが、事前に十分な調査・検討を実施しているそうです。

(6)フランス:トタール社の天然ガス田では、酸素燃焼ボイラーからCO2を分離・回収し、27km離れた生産終了ガス田までパイプラインで輸送・圧入を実施、パイプラインと圧入井は、天然ガスの生産・輸送に用いたものを再利用しています。また、CO2漏洩検知のため、CO2検知器(赤外線方式)を、圧入井付近に設置し、圧入井内には緊急遮断弁と地震計を設置しています。

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