一般財団法人エンジニアリング協会

1．調査の概要

　本調査は、米国のFutureGenプロジェクトで採用されたCCSサイト選定方法およびリスクアセスメント手法に関する既存の調査成果を踏まえ、国内のFutureGen等のCCSプロジェクト等に関する、サイト選定方法およびリスクアセスメント手法の整理・分析を行うことを目的としています。国内のサイト選定方法およびリスクアセスメント手法に関しては、検証規模や商業規模のCCSの地中貯留地点は、現時点では公表されていません。このため、米国FutureGenプロジェクトなど海外で発表された文献資料の収集や現地調査により資料を収集し、最新の研究動向や地中貯留に関するサイト選定方法およびリスクアセスメント手法の考え方を調査することが急務であり、今後その調査結果をもとに検証規模や商業規模のCCSのサイト選定およびリスクアセスメントの検討に役立つ国内外に通じる方法や手法を検討することが重要であると考えられます。
このため、本調査では、検証規模や商業規模のCCSのサイト選定およびリスクアセスメントの検討に役立つことを視野に入れて、CCSのサイト選定方法およびリスクアセスメント手法に関する海外文献資料の収集や現地調査による情報を整理・分析しました。

2．調査の内容

2.1　サイト選定方法
FutureGenプロジェクトのサイト選定成果を十分に把握したうえ、そのリファレンスとして、豪州のZerogenプロジェクト、Otwayプロジェクト等に対するサイト選定方法について整理・分析しました。具体的には、FutureGenのサイト選定方法に関する文献や既存資料を収集・整理し、それらを取りまとめ分析しました。また、豪州のサイト選定に関する既存文献を調査し、豪州で実施されている一般的な方法についての情報を収集・分析するとともに、Zerogenプロジェクト、Otwayプロジェクト等について現地ヒアリング調査により、具体的なサイト選定方法に関する資料を入手し、それらを分析し、特徴をとりまとめました。また、これらの選定方法について特徴を充分把握のうえ、ベストプラクティスとして役立つように整理しました。

2.2　リスクアセスメント手法
(1) FutureGenプロジェクト（米国）
FutureGenプロジェクトが作成した「環境影響評価のための最終リスク評価報告」に記載されている内容として、「圧入前リスク評価」、「圧入後リスク評価」に着目し、以下の項目についてとりまとめました。
・圧入前リスク評価
圧入前リスク評価について、IGCCプラントにおける評価対象設備、実施されたリスクアセスメントでの評価方法とその手順、対象物質と人および生態系への暴露シナリオ、暴露計算で使用された算定モデルと当該物質の漏出量・漏出速度・漏出時間、影響の解析結果等について、候補サイト4箇所の評価報告書に記載された詳細内容および結果を整理してとりまとめました。
・圧入後リスク評価
圧入後リスク評価については、まずFutureGenにおける前提条件等も含め、リスク評価の際に採用された基本概念について整理し、とりまとめました。また、候補サイト4箇所で検討された漏出シナリオについて、キャップロック・シール・断層・坑井等の分類に従い、想定された漏出速度、経過時間に対する貯留層圧力や漏出量の変動推移等を含むシミュレーション解析結果等についての整理および比較を行いました。さらに、漏出メカニズム、漏出持続時間、人および生態系への影響等に着目し、漏出の解析、暴露モデル、結果の判定等の検討内容の詳細について整理し、とりまとめました。
(2) Zerogenプロジェクト、Otwayプロジェクト（豪州）
FutureGenプロジェクトのリスクアセスメント評価の成果を十分に把握したうえで、Zerogenプロジェクト、Otwayプロジェクト等に対するリスクアセスメント手法について、漏出等に対する発生確率や漏出速度等の検討要素の考え方および検討内容等を中心として、採用されたリスクアセスメント手法の概要を整理し、分析しました。

また、収集したCCSに関する文献のうち規制に関する法令の中で、EU（欧州委員会）で検討されている地中貯留に関するEU Directiveと、EPA（米国環境庁）が立法化を進めているUIC（Underground Injection Control）プログラムにおけるClass VI（CCSを対象とした枠組み）について、関連する部分の和訳を行い、付録に記しました。

FutureGenプロジェクトの概念
(Final Risk Assessment Report for the FutureGen Project Environmental Impact Statement, Revision 2 October 2007)