平成23年度事業内容Business Contents

CO2マイクロバブル地中貯留の成立性に関する調査研究

1. 研究期間

平成23年6月~平成24年3月

2. 委員長

當舎 利行 氏 (独)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門主幹研究員

3. 参加機関

主査企業:(株)大林組
応用地質(株)、(株)大林組、鹿島建設(株)、川崎地質(株)、サンコーコンサルタント(株)、大成基礎設計(株)、大成建設(株)、(株)竹中工務店、(株)ダイヤコンサルタント、(株)ニュージェック (10社)

4. オブザーバー

経済産業省国際プラント推進室、経済産業省産業施設課

5. 補助事業の概要

(1)事業の目的
地球温暖化対策として期待されているCCS(Carbon Dioxide Capture & Storage)の主流は、排ガスから回収したCO2をGL-800m以深の遮蔽層下位の貯留層に超臨界状態で圧入貯留するものであるが、CO2の分離・回収と輸送に大きなコストがかかる他、超臨界状態のCO2には大きな浮力が働き、上昇しやすいといった問題がある。これに対し、CO2をマイクロバブル化して地下水に溶解してGL-800mより浅い地層に貯留することで大きなコストダウンが見込め、事業性が高まる。本調査研究は、地下水に溶解しやすいマイクロバブルの特性を活かし、既存の深部塩水帯水層を貯留層とし、マイクロバブルによってCO2を地中貯留するシステムの成立性に関する調査研究を行うものである。

(2)実施内容
1) CO2マイクロバブル地中貯留システムに関する課題に対する検討
システムのコンセプトから抽出した技術的課題、CO2が漏洩した場合の周辺環境への影響、社会的受容性と法規制についての検討を行い、その結果を整理した。

2)想定モデル地点の選定とCO2マイクロバブル地中貯留システムのモデル構築
フィジビリティ・スタディに向けた予備検討を進めるために想定モデル地点を選定し、貯留システムのモデル構築とモデルにおける貯留可能量の試算を行った。

3) CO2マイクロバブル地中貯留システムの経済性に関する検討
システムにおけるコスト試算を行い、大規模集中型CCSとの比較、および、再生可能エネルギーとのCO2削減効果の比較を行った。

4) CO2マイクロバブル地中貯留システムの実用化に向けた検討
システム実用化に向けた開発手順をロードマップとして整理し、実現に向けた課題抽出と解決のための最初の段階として、模型地盤による室内試験計画と小規模の原位置実証試験計画を立案した。

図1 マイクロバブル地中貯留イメージ

図2 サイト決定までのフローチャート

6. 予想される事業実施効果

本地中貯留システムは貯留層深度が浅く、ユニットを構成する注入井・揚水井群による段階的な調査により調査精度の向上が見込まれ、適切な貯留位置の選定が容易に図れると思われる。
また、本システムは、注入前後のモニタリングによる注水・揚水の管理が可能などコントロールしやすい地中貯留システムである。今後、環境影響の評価方法と対策等、技術的課題が解決されることで有望な小規模地域分散型貯留技術として期待される。

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地域開発に資する低温地熱発電の可能性調査研究

1. 研究期間

平成23年6月~平成24年3月

2. 委員長

海江田 秀志 氏 (財)電力中央研究所 地圏科学領域 上席研究員

3. 参加機関

主査企業:(株)ダイヤコンサルタント
東京大学、(独)産業技術総合研究所、地熱技術開発(株)、電源開発(株)、富士電機(株)、(株)大林組、(株)ダイヤコンサルタント (7社)

4. オブザーバー

経済産業省国際プラント推進室、経済産業省産業施設課

5. 補助事業の概要

(1)事業の目的
従来の地熱発電は対象地域が自然公園との重なりや温泉への影響の懸念などの社会的要因に加え、開発コストに比してリスクが高いことから新規の立地が進んでいない。そこで、自然公園等の規制がなく既存の温泉からも離れた地域を対象に、120℃以下のいわゆる「低温地熱」の利用ができれば、再生可能な自然エネルギーとして、地球温暖化対策やエネルギーの安定供給に貢献できる。本研究では、従来、地熱地域として着目されていなかった低温地熱地域における地熱エネルギー利用の可能性を検討し、「低温地熱発電」用途の資源量評価、モデル地域を選定したシステムの概念の構築、建設・運用コストの検討および環境影響評価を行う。

(2)実施内容
平成22年度の調査研究では、低温地熱(70~120℃の熱水)存在地域の調査、低温地熱に適する発電方式に関する調査を行った。文献調査により国内でこれまで地熱資源地域として着目されておらず、かつ、比較的低温の地熱資源を期待できる地域を対象に地熱資源賦存量の検討を行った。この結果に、電力需要や代替電源の必要性などの社会的要因を加味して、都市部に近い仙台南西部と離島である隠岐島後の2地域を選定した。また、低温地熱での利用に適した発電システムについての調査と課題抽出を行い、必要とする湯量は多いものの、バイナリー発電システムが有力な候補とされた。
こうした結果を踏まえて、平成23年度調査では、以下の事項を実施した。
1)モデル地域の選定、地熱資源量の評価、モデル地域の評価、課題の抽出
2)低温地熱発電システムおよび熱利用の検討
3)低温地熱資源の採取方法・発電方法、低温地熱資源の利用方法の検討
4)農業事業、陸上養殖事業事例の整理
5)経済性・事業性の評価

図1 低温地熱資源を用いた温熱ハウス・植物工場事業の概念

6. 予想される事業実施効果

地域振興の観点から熱利用の可能性を検討することにより、温室による地域特有の農産品の栽培、介護施設等の温浴や給湯、および養殖漁業などが候補として挙げられる。植物工場を想定することによって、事業性を見込むことが可能なモデルを提示できる。

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ミュー粒子を応用した地盤危険性探査技術の実用化に関する調査研究

1. 研究期間

平成23年6月~平成24年3月

2. 委員長

徳永 朋祥 氏 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境システム学専攻 教授

3. 参加機関

主査企業:川崎地質(株)
東京大学、放射線地学研究所、(独)産業技術総合研究所、東京地下鉄(株)、東京電力(株)、飛島建設(株)、川崎地質(株) (7社)

4. オブザーバー

経済産業省国際プラント推進室、経済産業省産業施設課、(一財)機械システム振興協会、応用光研工業(株)

5. 補助事業の概要

(1)事業の目的
インフラの老朽化に起因する地盤の空洞や、坑道跡や防空壕など過去に掘削された地下空洞が原因で地表に陥没を生じる被害が起きている。従来の空洞探査技術は、探査深度や分解能(解像度)の点で不十分な領域(探査空白域)があり、また、都市部ではノイズの影響を受け適用範囲が限定されていた。本事業は、透過力が高く、都市部のノイズに影響を受けず、また、高い分解能が期待できる宇宙線ミュー粒子を利用した空洞探査システムの開発を目的とする。
本探査システムによる空洞探査や健全性モニタリングが普及すれば、従来の探査技術では調査・把握できなかった地盤の空洞や密度分布の変化を明らかにすることができる。これにより地盤陥没等の災害を未然に防止することができ、国民の安全・安心社会の構築に大きく貢献できる。

(2)実施内容
平成20~22年の3ヵ年は、財団法人機械システム振興協会の委託事業として、宇宙から地表面に自然に降り注ぐミュー粒子を利用した地中空洞探査技術、地盤可視化技術(ジオトモグラフィ)の調査・研究を実施してきた。
3年間の調査研究で、上下2個のシンチレータ(ミュー粒子をカウントする計測器)を同時に透過するミュー粒子をカウントする計測機器を新規に開発し、直径の異なる4機の計測機器を試作し、それらの計測機器を用いた地中空洞計測技術、計測データに基づく三次元ジオトモグラフィ解析による地盤の可視化(密度分布図)技術を開発してきた。
平成23年度は、残された課題である地下環境への対応(防滴・防塵、安定した電源の確保など)を図るための新たな計測機器の開発と実用化システムの構築に向けた活動を行った。

1)地下環境に対応した計測器の改良
・平成22年度製作のマルチ計測機器に防滴対策を施し、工場で動作確認試験を実施。
・1月中旬から神奈川県内の地下施設において、高湿潤環境下(相対湿度100%)での計測試験を実施し、機器の性能確認を行った。

2)実用化システムの構築に向けた活動
・12月末まで都内地下施設にて試作器B・C・改良型マルチ計測器を用いてデータを取得した。その後、三次元トモグラフィ解析を行い、計測点数(データ量)が解析結果に与える影響について検討した。
・試作器Aを用いて長期定点計測を実施。ミュー粒子の時間変動が解析結果に与える影響について検討した。
・本探査技術のニーズが多い狭小空間での計測に対応するため、小型マルチ計測器を考案した。
・様々な分野での利用を想定し、調査目的、調査対象毎に測定方法や現有技術での課題を整理した。

写真1 計測機器 防滴改良箇所

写真2 高湿潤環境(相対湿度ほぼ100%)での計測実験状況

図1 ミュー粒子を利用した探査技術の様々なニーズ

6. 予想される事業実施効果

インフラの老朽化に起因する地盤の空洞や、坑道跡や防空壕など過去に掘削された地下空洞が原因で地表に陥没を生じる被害が起きている。従来の空洞探査技術は、探査深度や分解能(解像度)の点で不十分な領域(探査空白域)があり、また、都市部ではノイズの影響を受け適用範囲が限定されていた。
本探査技術は、透過力が高く、都市部のノイズに影響を受けず、また、高い分解能が期待できる宇宙線ミュー粒子を利用した空洞探査システムである。
本探査システムによる空洞探査や健全性モニタリングが普及すれば、従来の探査技術では調査・把握できなかった地盤の空洞や密度分布の変化を明らかにすることができる。これにより地盤陥没等の災害を未然に防止することができ、国民の安全・安心社会の構築に大きく貢献できる。

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低炭素社会に向けた地下利用方策に関する調査研究

1. 研究期間

平成23年6月~平成24年3月

2. 参加機関

(1)第1部会: 部会長:清水建設(株)、副部会長:大成建設(株)
  委員: (株)技研製作所、千代田化工建設(株)、東急建設(株)、JX日鉱日石探開(株)、三井住友建設(株) (7社)
(2)第2部会: 部会長:大成建設(株)、副部会長:電源開発(株)
  委員: 応用地質(株)、(株)大林組、佐藤工業(株)、サンコーコンサルタント(株)、(株)竹中土木、鉄建建設(株)、 戸田建設(株)、飛島建設(株) (10社)
(3)第3部会: 部会長:西松建設(株)、副部会長:(株)アサノ大成基礎設計エンジニアリング
  委員: (株)大林組、川崎地質(株)、サンコーコンサルタント(株)、(株)ダイヤコンサルタント、(株)竹中工務店、中央開発(株)、 鉄建建設(株)、東洋エンジニアリング(株)、日揮(株)、日鉱探開(株)、(株)間組 (13社)
(4)第4部会: 部会長:鉄建建設(株)、副部会長:鹿島建設(株)
  委員: 応用地質(株)、川崎地質(株)、(株)熊谷組、(株)鴻池組、(株)銭高組、東急建設(株)、戸田建設(株)、飛島建設(株) (10社)

3. 補助事業の概要

(1)事業の目的
地下は、地上に比べて恒温恒湿で騒音がない、地震に強い等の優位性があるので、これらの優位性を利用した地下施設の検討に必要な技術基準のあり方、都市再生への利用方法、地下水・再生水の利用方法、地下道路の防災・維持管理等を検討した適用性等について調査研究を実施して、機械工業に貢献する提言と課題をまとめることを目的とする。

(2)実施内容
「地下特性を活用した地下施設の技術基準に関する調査」(第1部会)、「都市再生のための地下利用に関する調査」(第2部会)、「地下水・再生水を活用した地下利用に関する調査」(第3部会)、「大深度地下道路の適用性に関する調査」(第4部会)の4専門部会を設け、専門部会ごとに、事例調査、国内外資料調査、専門家へのヒアリング、現地調査等を実施して、現状のまとめと課題の抽出、モデル地区の選定等を行って、平成23年度の報告書を作成した。

1)地下特性を活用した地下施設の技術基準に関する調査(第1部会)
低炭素社会を目指して地下施設の利活用が多くの所で検討されているが、それを実現するための技術基準等の方策の整備は十分ではない。
恒温恒湿、騒音が無いなどの地下特性を活用した地下施設を建設する場合に適用される技術基準等について調査するとともに、わが国に適した技術基準等の調査を行い、地下の優位性を活かした新たな地下の利活用方法を探索した。

図1 都市部立体活用にかかわる制度の流れおよび関係

2)都市再生のための地下利用に関する調査(第2部会)
大都市圏、地方都市において老朽化した市街地、遊休地などを再開発する事業が活発に行われる。これらの市街地再開発事業は良質な市街地のストック形成と適切な運営・管理を通じた持続的な価値・向上を追及したエリア・マネージメント手法で進められていくと考えられる。
このような集約型都市へ再生する場合に、地下の優位性を活用して地下施設(商店街、地下駐車場、地下物流施設 等)を建設する方策・防災・環境影響について検討し、モデル地区を設定して具体的な検討をし、地下利用について提言する調査・研究を行った。

図2.1 地下バスセンターの提案

図2.2 大型地下道の提案

3)地下水・再生水を活用した地下利用に関する調査(第3部会)
都市域では揚水規制後、地下水上昇、構造物の浮き上がり現象等も生じ、それらの対策等も実施されてきた。低炭素社会に向けて、地下水を打ち水等のヒートアイランド対策等への活用に加え、さらに有効に活用する方策も望まれている。また、最近、局地的な集中豪雨などによって雨水の処理に困っている地域や洪水災害等も多くなり、雨水処理の対策等も望まれている。
本部会では、このような地下水、雨水、再生水などを有効に活用して、防災のみならず、生活・業務などに活用して低炭素社会を実現する方策について調査し、具体的な提言をまとめる調査研究を行った。

図3.1 内陸型モデルの地下水・地中熱利用施設配置のイメージ

図3.2 沿岸型モデルの地下水・地中熱利用施設配置のイメージ

4)大深度地下道路の適用性に関する調査
道路の地下化の適用性について、その事業性、構築技術、防災対策(洪水、トンネル火災、地震等)を含む維持管理手法の観点につき調査研究を行い、提言を行う。
平成23年度は、平成22年度の成果を基づき、渋滞、混雑状況、鉄道整備計画や各交通関連施策、求められる都市環境に配慮し、整備すべき路線の検討、地下道路の安全性および技術課題検討、便益評価等を行い、大深度利用を含む地下道路の適用性について調査研究、提言を行なった。

図4.1 モデル路線1の検討

図4.2 モデル路線2の検討

4. 予想される事業実施効果

低炭素社会に重要な役割を果たす地下施設に関して未整備な上記4サブテーマについて調査研究を実施することによって、機械工業に貢献する提言と課題をまとめ、受益者のニーズに応えることができる。

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