平成25年度事業内容Business Contents

防災・減災型地下インフラの調査

1. 研究期間

平成25年6月~平成26年3月 (平成24年度から平成25年度の2年間研究の最終年度)

2. 参加機関

幹事会: 幹事長:鹿島建設(株) 谷利 信明 氏
副幹事長:佐藤工業(株) 中山 洋 氏
幹事: (株)安藤・間、大成建設(株)、飛島建設(株)、西松建設(株)、(株)アサノ大成基礎エンジニアリング、鉄建建設(株)
(1)第一部会: 部会長:(株)安藤・間 西村 毅 氏
副部会長:大成建設(株) 文村 賢一 氏
委員: (株)大林組、川崎地質(株)、(株)技研製作所、(株)竹中土木、千代田化工建設(株)、電源開発(株)、東急建設(株)、三井住友建設(株) (10社)
(2)第二部会: 部会長:佐藤工業(株) 中山 洋 氏
副部会長:飛島建設(株) 川端 康夫 氏
委員: 応用地質(株)、清水建設(株)、(株)ダイヤコンサルタント、鉄建建設(株)、日揮(株)、(公財)深田地質研究所 (8社)
(3)第三部会: 部会長:西松建設(株) 平野 孝行 氏
副部会長:(株)アサノ大成基礎設計エンジニアリング 藤川 富夫 氏
委員: (株)アサノ大成基礎設計エンジニアリング、(株)大林組、川崎地質(株)、基礎地盤コンサルタンツ(株)、サンコーコンサルタント(株)、JX日鉱日石探開(株)、大成建設(株)、(株)竹中工務店、中央開発(株)、鉄建建設(株)、東洋エンジニアリング(株)、日揮(株) (13社)
(4)第四部会: 部会長:鹿島建設(株) 谷利 信明 氏
副部会長:鉄建建設(株) 千々岩 三夫 氏
委員: 応用地質(株)、(株)奥村組、川崎地質(株)、(株)熊谷組、(株)鴻池組、東急建設(株)、戸田建設(株)、飛島建設(株) (10社)

3. 補助事業の概要

(1)事業の目的
 東日本大震災の後、地下街、地下鉄等の地下施設の被害が比較的少ないことが注目を集めた。本調査では、今後起きるかもしれない東海、東南海、南海地震等に備え、将来の防災・減災に有効な地下施設の整備に資する提案を行うことを目的とする。

(2)実施内容
 平成24年度および平成25年度においては、「防災・減災型地下インフラの調査に関する調査研究」として、以下の4つの調査に取り組み、それぞれの年度で報告書を作成した。

  • 東日本大震災における地下施設の被害と対策に関する調査(第一部会)
  • 大災害に対する都市内空間の有効活用に関する調査(第二部会)
  • 社会インフラ施設の防災・減災に向けた地下水利用に関する調査(第三部会)
  • 大深度地下道路網における災害時の機能・安全性に関する調査(第四部会)

 それぞれの調査の概要は以下の通りである。

1)東日本大震災における地下施設の被害と対策に関する調査(第一部会)

 「東日本大震災」における地下構造物の被害に着目して調査を実施し、被害を低減する方策について検討することを目的として活動を行った。平成25年度においては、平成24年度から継続して被害調査を実施するとともに、調査結果を踏まえて被害を低減する方策についての検討した結果、以下のようなことが課題として認識された。

  • 南海トラフ大地震等、今後発生が予想される大地震に対しては、地域ごとに想定される地震や津波の規模に応じた対策の推進
  • 地上施設に比較して優位性が明らかとなった地下構造物の利用の推進
    例えば、地上タンクの地下化、ライフライン施設の共同溝化、道路・鉄道トンネルの早期補修、地震に強い地下鉄と相互乗り入れのある地上鉄道網の総合的な耐震対策等の推進
  • 災害時における、新しい地下利用の創出
    例えば、津波避難用の地下シェルター
図1:高知県室戸市佐喜浜町都呂地区にて採用された崖地の横穴型津波シェルターのイメージ図

図1:高知県室戸市佐喜浜町都呂地区にて採用された崖地の横穴型津波シェルターのイメージ図
(出典:高知県 平成25年度一般会計予算(案)の概要)

2)大災害に対する都市内空間の有効活用に関する調査(第二部会)

 都市内地下空間である地下街について災害時に有効利用できる可能性を探るために前年度に行った災害発生状況、地下街の被災状況および該当する法律・条令・ガイドライン等の調査と八重洲地下街へのヒアリングにより、災害時の地下街の実態について調査した。
 今後の課題として、災害時に地下街を有効利用するためには、その経営がほとんどの場合が民間であることから二次被害等の発生にも留意し、その際の責任の所在について明らかにしておく必要があるという点等があげられた。
 なお、近年の行政の積極的な働きかけとして、平成24年9月には東京都を中心に官民が一体となって「首都圏直下地震帰宅困難者等対策協議会」が組織され、その中で「駅前滞留者対策ガイドライン」が策定されるなど一定の前進が見られるほか、国土交通省においても平成26年度予算に「大都市のターミナル駅周辺の地下街の耐震補強に対する補助制度」を計上し、対策費の3分の2を国および自治体が補助することにより今度10年以内を目処に地下街の耐震補強を促進させることとなった事例があった。このような動きがますます加速し、行政が積極的に滞留者の保護に対してより中心的な役割を果たすことが望まれる。

図2:首都圏直下地震帰宅困難者対策協議会「最終報告」概要

図2:首都圏直下地震帰宅困難者対策協議会「最終報告」概要
(出典:首都圏直下地震帰宅困難者対策協議会)

3)社会インフラ施設の防災・減災に向けた地下水利用に関する調査(第三部会)

 本調査では、「防災」、「減災」に向けた地下水(地下施設を利用して貯留・取水された地下水を含む)の利用方策を提案することを目的としている。
 初年度調査結果として、災害時の「危機管理」と「ライフラインの重要性」が再認識され、防災井戸・湧水の高い有用性が認識されていることが明らかとなる一方、防災井戸の配置や利用用途・周知方法、地下水の応急利用に関わる所轄部署の輻輳、自治体と民間の補完関係などに課題があることも明らかになってきた。
 東京23区における地下水利用の実態調査等を踏まえて、ハード面として過年度調査結果である地域内連携貯留施設構想に加えて「大深度地下貯留管構想(大都市カナート構想)」を提案すると共に、ソフト面として「災害に備える事前段階から発災後の時間経過に応じて地域における公助・共助・自助はどうあるべきか」について取りまとめた。
 また最後に、地下水を利用して災害に強い街づくりを進めるために、以下に示すような公助の立場からの公的補助等の仕組みづくりの提言を行った。

  • 自助・共助の活性化
  • 安全な水質・水源の確保
  • 水利用情報の周知
  • 地下河川・地下調節池等空間の平常時有効利用
  • 水循環管理体制の構築
図3:耐震性大深度地下貯留管建設構想のイメージ

図3:耐震性大深度地下貯留管建設構想のイメージ

4)大深度地下道路網における災害時の機能・安全性に関する調査(第四部会)

 首都圏等の成熟・密集した都市環境での安全、安心、快適性の実現の為には、ソフト、ハード両面にわたる都市環境整備(コミュニティー醸成、社会インフラ更新・再構築等)が必要である。
 本稿は地下に整備する道路による地上空間、地下空間の有機的、効率的な連携の適用性を検討するものであり、平成24年度の検討成果を受け、地下道路網の整備の関わる下記項目の検討を行った。

  • 道路の役割と地下化適用性の検討
    基幹社会インフラである道路の多面的な役割を再整理するとともに、その地下空間への整備の適用性の検討を行った。
  • 都市部危険性(ハザード)の調査
    国土における地震、風雨、洪水、火災等の様々なハザードの概要を検討するとともに、東京特別区で公開されているハザード情報群を収集・整理した。併せて総合的な都市危険度を判断することを目的に東西2断面、南北2断面の各種ハザード情報を重合わせる検討を行った。
    図4:種々のハザードの重合せ縦断図の例(東京駅~舎人公園軸) 図4:種々のハザードの重合せ縦断図の例(東京駅~舎人公園軸)
  • ミッシングリンクの調査
    平常時と、災害時の2つの視点にたち、首都圏を中心とした道路網のミッシングリンクについて調査を行った。
  • 地下化道路路線の試検討
    以上 1~3 の検討結果に基づき、将来の地下道路構想のモデルケースとして、1号上野線の荒川以北までの延伸(南北軸)、立川防災拠点から都市部への接続(東西軸)の2ケースにつき試検討を行った。また併せて地下道路内での防災、地下道路に併設される立坑の防災利用の可能性を検討した。

今後の課題

  • 災害の種類/行政所轄/行政単位を超えた、総合的な危険度を判断するためのハザードマップの整備(ハザードビッグデータ整備)
  • 将来の地下道路構想のモデルケースとして試検討した2路線は、平常時ミッシングリンク、非常時ミッシングリンクの両観点から有効性が期待されるものであり、今後の深化した検討が期待される。
  • 外環境から遮断された地下空間となる地下道路の工事用および換気用立坑の、災害拠点などへの有効活用の検討。
  • 地下道路内災害への備え、運転者の立場にたった空間設計。

4. 予想される事業実施効果

 ゼネコン・コンサルタント会社・エンジニアリング会社・メーカー等の幅広い業界からの委員で構成された地下利用推進部会の検討結果は、各業界を横断した英知の結晶である。
 未来のよりより日本を作ってゆくために、災害に対してたくましい地下インフラ施設整備の検討のため資料として、未来の日本を担う全ての方々のための資料として使用されることを切望する。

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地球温暖化対策等に貢献するエンジニアリング調査研究補助事業
CO2地中中和処理の研究

1. 研究期間

平成25年4月~平成26年3月

2. 委員長

長田 昌彦氏 国立大学法人 埼玉大学 地圏科学研究センター 准教授

3. 参加機関

埼玉大学、日本大学、東海大学、応用地質株式会社、株式会社大林組、株式会社ニュージェック

4. 補助事業の概要

(1)事業の目的
 環境汚染に関する関心は、1990年代に気候変動枠組条約、京都議定書の採択などを経てクローズアップされ、化石燃料への依存が高まる日本においては、CO2を削減する新たな技術開発が喫緊の課題となっている。この課題を解決するためのひとつの手法としてCO2の回収貯留CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage)技術があるが、現状では石油増進回収法(Enhanced Oil Recovery: EOR)による石油生産技術をベースに検討され、大規模な排出源が近くにあることを前提とする広大な地上設備を必要としている。
 本調査研究は、地下水利用の及ばない深部の石灰岩層内において、ボーリング孔からマイクロバブル化したCO2を溶解させた溶解水を直接圧入し、石灰岩盤層を中和させることにより、これらのシステムの成立性を検討することを目的とした。
 平成25年度は、我が国における対象岩盤の分布とそのCO2中和処理能力量の検討をはじめ、中和処理速度の閉鎖系室内実験を実施してCO2溶解速度を予測したほか、CO2溶解水の地盤中への移動現象についても既存解析コードによるシミュレーションなどで分析を進め本調査研究の成立性を確認した。

CO2地中中和処理システムのコンセプト

CO2地中中和処理システムのコンセプト

(2)実施内容

1)我が国の炭酸塩岩類の分布と中和処理能力の検討

 地中中和処理の実証試験候補地としては、規模の大きい石灰岩・石灰質砂岩が分布するだけではなく、近傍に比較的大きなCO2排出源がある地点が望ましいことから、11地域を選択し、22地点の堆積盆について、分布する地層の化学組成を文献により調査した。選定した砂岩等の岩体については、分布規模、全体の埋蔵量からCa濃度による炭酸塩鉱物の含有量を推定する手法により、中和処理能力を検討した。

2)CO2中和処理のための流量制御の検討

 対象岩盤の中和化能力は閉鎖系室内実験としてバッチ試験により調べ、岩盤中の溶解速度の予測は開放系の通液試験によって調べた。さらに、小規模模型実験を通して地盤中への移動を観察し、課題について考察した。流量制御にはマイクロバブルの挙動把握が重要であるため、流体中の気泡挙動を解析できるコードを開発し、石灰岩と灰長石が等量含まれる地層への二酸化炭素注入のシミュレーションを実施した。

3)原位置小規模実験計画の策定

 原位置小規模実験サイトについて、文献により炭酸塩鉱物の構成率を調査した。原位置小規模実験は、炭酸塩岩を対象に10m程度の深さにCO2をマイクロバブルで地下水と共に注入し、帯水層を通過する間に中和処理が行われるかを揚水井兼観測井から揚水した地下水の水質調査により調べることとした。実験におけるモニタリング項目は、揚水の水質分析と、土壌および陸上のCO2ガス濃度とする。

CO2マイクロバブル注入における溶解速度の計算例

CO2マイクロバブル注入における溶解速度の計算例

CO2に対する開放系(左)と閉鎖系(右)のカルサイト溶解のフィールドスケッチ

CO2に対する開放系(左)と閉鎖系(右)のカルサイト溶解のフィールドスケッチ

CO2溶解水の撮影状況1 CO2溶解水の撮影状況2

CO2溶解水の撮影状況

5. 予想される事業実施効果

 本調査研究の目指すところは、マイクロバブルによって直接CO2を溶解させた溶解水を炭酸塩によって中和するシステムの構築であり、中和処理できれば垂れ流しでもよく、浅くても深くてもよい。通常、酸性水の処理には、大規模な地上設備が必要であるが、このシステムではそれらを必要とせず、地中で酸性水を中和処理することが可能である。特に、CO2の中小規模排出源近傍で実施することが可能になれば、大規模な地上設備を必要としないことに加え、圧入コスト、輸送コストの削減効果が期待できる。

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安全・安心・減災等の確立に資するエンジニアリングの調査研究補助事業
老朽化トンネル補強技術の研究

1. 研究期間

平成25年4月~平成26年3月

2. 委員長

辻 幸和 氏 公立大学法人 前橋工科大学学長

3. 参加機関

前橋工科大学、東京大学、(株)建設技術研究所、大成建設(株)

4. 補助事業の概要

(1)事業の目的
 都市部の地下に建設されている地下鉄、共同溝トンネルといったトンネルでは、都市再開発等による外荷重変化や偏荷重の発生に伴う覆工コンクリートの変状といった事例が発生しており、都市の再生技術として老朽化したトンネルの耐力を増加させる補強技術の必要性が高まっている。また、東日本大震災を教訓として耐震補強のさらなる高性能化も必要とされている。
 研究対象とする補強方法は、補強が必要な既設円形トンネルの内側に補強リングを組立て、補強リングと既設トンネルの間にセメントミルク充填用のゴムチューブを貼付け、補強リングを反力装置としてセメントミルク充填による圧力を加えて、既設トンネルを内側から外側へ押す力を与えることを原理とする。
 本研究では、この補強技術の成立性を確認することを主眼に、材料選定室内実験によってセメントミルク硬化後の圧力残存状況を確認するとともに、既設トンネル、補強リングや充填材加圧力などをモデル化した構造解析によって既設トンネルに悪影響を与えない加圧力ならびに補強完了後の追加外荷重作用時の補強リングの荷重分担状況を検討するものである。

補強方法概念図

補強方法概念図

補強工事の施工イメージ

補強工事の施工イメージ

(2)実施内容

1)材料選定検討

 セメントミルクの材料である高流動充填固化材、膨張性材料ならびに間詰め材に要求される性能を設定して材料の絞り込みを行ない、配合試験を実施した。

2)充填材加圧注入実験

 シールドセグメント、ゴムチューブ、補強リングを模した実験装置に、材料選定検討で選定したセメントミルクを加圧注入し、実験装置に発生する反力・変位・ひずみを計測し、膨張性材料および高流動充填固化材の性能を確認した。

3)三次元FEM解析

 地表からの深さ約20mで直径5.4mのシールドトンネルの三次元FEM解析を実施し、補強効果があること、および補強後に上載荷重が増加した場合の検討を実施し、本工法の効果を確認した。

充填材加圧注入実験状況

充填材加圧注入実験状況

三次元FEM解析モデルの一例

三次元FEM解析モデルの一例

三次元FEM解析結果の例

三次元FEM解析結果の例

5. 予想される事業実施効果

 本調査研究の補強方法の対象とするトンネルの大きさは直径2m程度の下水道トンネルから、直径10m程度の道路トンネルまで幅広く対応可能であり、補強リングの最適設計や補強に使用する機械設備などのコンパクト化と施工の迅速化によって、経済的に老朽化したトンネルを再生することができることから、市場規模の拡大に併せてインフラ施設再生事業として発展性が期待できる。

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